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第18話 釣りスキルの威力を見せてやる
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「てんちょお、どこで釣りをします?」
「一番は残橋エリアなのだけど……うーん」
目を付けた賞は重量とサイズを狙う大物部門だ。となるとより水深があるところまで投げ込める残橋、続いて岩場なのだが、考えることはみんな一緒である。
釣り糸をただ垂らすだけで釣りができる、かつ、遠投する人にとってもよい残橋が大人気なんだよな。最終的に参加者は職員の予想を超える300名近くが集まっている。するとだな、一番人気の残橋には多くの人が集まるだろ。結果、残橋にずらっと釣り人が並ぶことになるんだわ、これが。
残橋はエリアとしては至適であるが、釣り人同士のトラブルであったり、足音やらで魚が逃げちゃったりしそうで、どうすべきか悩ましい。
「他は砂浜と岩場かあ」
「砂浜は人が少なそうですね」
「砂浜は一人で場所を取るから、岩場より窮屈かも」
「そんなものですかー」
砂浜は投げ釣りのみとなるので、前後ろにスペースが必要だ。
「岩場の端っこの方にしようか」
「はいー」
岩場は足元がぐらぐらしたりするところもあり、足場の安定感がまるでない。砂浜のように助走をつけて投げ込みをすることも難しそうだ。
場所によっては岩場でも助走をつけることができるかもしれないけど、俺が陣取ったところは足元がなかなかに最悪だった。足元を確かめずに歩かないと転びそうなほどに。
「ま、場所の不利より人がいない方がありがたい」
取り出したるは派手なオレンジ色の釣り竿だ。特に何かしらの魔法的な効果はない。
釣り竿は趣味で色違いを沢山持っているが、全てノーマル品なのだよ。釣り竿でモンスターと戦うことなんてないから、強化する意味がないだろ。
中には武器「釣り竿」でどこまでモンスターを倒すことができるか、なんてやっている猛者もいるが、それは特殊な例である。
さて、話を戻すと、岩場エリアの中でも端っこ、足元もおぼつかない場所だけに、周囲50メートルほどに人の姿はない。
ここなら人を気にせず思う存分釣り竿を振り回すことができるってもんだ。
「釣りスキルでの釣りは、通常の釣りとは違う動作もすることができるんだぜ」
「きゃー、さすがてんちょお!」
ぱちぱちとアーニーに手を叩かれて恥ずかしくなってしまった……。
気を取り直し、釣り竿を構え頭上でグルングルン回す。それに合わせて餌や錘のついた糸も風車のように回る。無茶苦茶な動作であるが、釣りスキル的には問題ない。餌や錘といった仕掛けも外れたりすることもないだ。
「よっと」
シュルルと糸が伸び、100メートルくらい先に着水する。
この距離じゃウキが見えないが、そこも釣りスキルがあるから問題ない。何か獲物がかかったらビビビっとくるようになっている。
ゲームなら更にウィンドウメッセージも出るのだけど、現実世界となった今は出ないかもしれない。ウィンドウメッセージが出なくても感覚だけで分かるから支障はないぜ。ゲーム内でもう何千回と釣り竿を振るっているからさ。
「てんちょお、次はどうするんですか?」
「どうもこうも、釣れるまで待つ……お」
指先に得物がかかった知らせとなる電流が走ったようなピリピリとした感触がくる。
まだ釣り竿を引き上げてはいけない。この感覚は魚が餌を突っついているだけで、まだ食ってはいないのだから。
そして、肘にもピリピリした感触が来た! 今だあ。
ザバアア。
本物の釣りでは御法度の一気の引き上げを行う。糸のリールを巻かずとも糸が勝手に動く。俺は釣り竿を引っ張り上げる動作をするだけで全てオートなのだ。
釣れたのは白と黄色の縞模様をしたまるいフォルムの魚だった。
「カゴカキダイか、この世界でも魚は地球でいるようなのもいるみたいだな」
ちょっとだけ安心したぞ。といってもゲームでいた魚以外の魚種はいないかもしれない。
「てんちょお、カゴカキダイっていうのですが、このしましまさん」
「そそ」
「うーん、賞のリストにはないですね」
「おお、書き写してくれていたの?」
ですです、と笑顔でコクコク頷くアーニー。こいつ、シゴデキだ。ダメな俺をもっともっと支えてくれよ、ふふん。
と謎の上から目線でいると、二匹目が釣れた。
バシャーーン。海面に物凄い水しぶきが。釣りスキルの効果なのか、重さはまるで感じないが得物はかなり大きい。
姿を現したのは巨大な二枚貝だった。全長は目測で凡そ1.5メートルもある。
ドシイイン。
落ちた勢いで貝が割れるかと思ったが、ビクともしなかった。
「これは……オオシャコガイだな。魚じゃないけど、対象になるんだろうか」
「重さだけなら優勝確実ですよね!」
ウミヘビはおっけーだっけ? なら貝はどうなのかなあ。貝は貝殻がくっそ重たいから重量だけならアーニーの言う通りトップになれる可能性が極めて高い。
釣りで海底で口を開けたり閉じたりしているオオシャコガイを釣り上げることができるってのは常識外れだけど、釣りスキルがあれば釣れちゃうんだよなあ。
ゲームだからと割り切っていたが、現実世界になると異常さが際立つ。ま、俺としては楽できてよい。
この分だと宝石サンゴとか、釣りスキルで集まる素材も集めることができそうだぜ。
「さあ、どんどん行くぞ、お、また釣れた」
「さすがてんちょおです!」
俺の腕じゃあなく、熟練度マックスの釣りスキルがあってのこと。分かっていてもアーニーに褒められて悪い気はしない。
お次は鮮やかなオレンジ色の体色をした変わった形の魚だった。ヒレの付け根からカニの足のような突起が三本伸びているのが特徴だ。
サイズは40センチと少し、くらいだな。
「ホウボウか。これは賞と関係なく嬉しい」
「あ、これ、てんちょおがたまに捌いてくださったへんてこなお魚ですよね」
「とっても美味しいんだよな、ホウボウって」
「はいー」
今すぐ捌いて食べたいくらいだけど、まだ釣り大会ははじまったばかり。休むにしてもまだまだ先だ。
気合を入れる俺であったが、遠くから釣り大会参加者へ呼びかける声が聞こえてくる。
何やら騒然としているようだけど、どうしたんだろう?
「一番は残橋エリアなのだけど……うーん」
目を付けた賞は重量とサイズを狙う大物部門だ。となるとより水深があるところまで投げ込める残橋、続いて岩場なのだが、考えることはみんな一緒である。
釣り糸をただ垂らすだけで釣りができる、かつ、遠投する人にとってもよい残橋が大人気なんだよな。最終的に参加者は職員の予想を超える300名近くが集まっている。するとだな、一番人気の残橋には多くの人が集まるだろ。結果、残橋にずらっと釣り人が並ぶことになるんだわ、これが。
残橋はエリアとしては至適であるが、釣り人同士のトラブルであったり、足音やらで魚が逃げちゃったりしそうで、どうすべきか悩ましい。
「他は砂浜と岩場かあ」
「砂浜は人が少なそうですね」
「砂浜は一人で場所を取るから、岩場より窮屈かも」
「そんなものですかー」
砂浜は投げ釣りのみとなるので、前後ろにスペースが必要だ。
「岩場の端っこの方にしようか」
「はいー」
岩場は足元がぐらぐらしたりするところもあり、足場の安定感がまるでない。砂浜のように助走をつけて投げ込みをすることも難しそうだ。
場所によっては岩場でも助走をつけることができるかもしれないけど、俺が陣取ったところは足元がなかなかに最悪だった。足元を確かめずに歩かないと転びそうなほどに。
「ま、場所の不利より人がいない方がありがたい」
取り出したるは派手なオレンジ色の釣り竿だ。特に何かしらの魔法的な効果はない。
釣り竿は趣味で色違いを沢山持っているが、全てノーマル品なのだよ。釣り竿でモンスターと戦うことなんてないから、強化する意味がないだろ。
中には武器「釣り竿」でどこまでモンスターを倒すことができるか、なんてやっている猛者もいるが、それは特殊な例である。
さて、話を戻すと、岩場エリアの中でも端っこ、足元もおぼつかない場所だけに、周囲50メートルほどに人の姿はない。
ここなら人を気にせず思う存分釣り竿を振り回すことができるってもんだ。
「釣りスキルでの釣りは、通常の釣りとは違う動作もすることができるんだぜ」
「きゃー、さすがてんちょお!」
ぱちぱちとアーニーに手を叩かれて恥ずかしくなってしまった……。
気を取り直し、釣り竿を構え頭上でグルングルン回す。それに合わせて餌や錘のついた糸も風車のように回る。無茶苦茶な動作であるが、釣りスキル的には問題ない。餌や錘といった仕掛けも外れたりすることもないだ。
「よっと」
シュルルと糸が伸び、100メートルくらい先に着水する。
この距離じゃウキが見えないが、そこも釣りスキルがあるから問題ない。何か獲物がかかったらビビビっとくるようになっている。
ゲームなら更にウィンドウメッセージも出るのだけど、現実世界となった今は出ないかもしれない。ウィンドウメッセージが出なくても感覚だけで分かるから支障はないぜ。ゲーム内でもう何千回と釣り竿を振るっているからさ。
「てんちょお、次はどうするんですか?」
「どうもこうも、釣れるまで待つ……お」
指先に得物がかかった知らせとなる電流が走ったようなピリピリとした感触がくる。
まだ釣り竿を引き上げてはいけない。この感覚は魚が餌を突っついているだけで、まだ食ってはいないのだから。
そして、肘にもピリピリした感触が来た! 今だあ。
ザバアア。
本物の釣りでは御法度の一気の引き上げを行う。糸のリールを巻かずとも糸が勝手に動く。俺は釣り竿を引っ張り上げる動作をするだけで全てオートなのだ。
釣れたのは白と黄色の縞模様をしたまるいフォルムの魚だった。
「カゴカキダイか、この世界でも魚は地球でいるようなのもいるみたいだな」
ちょっとだけ安心したぞ。といってもゲームでいた魚以外の魚種はいないかもしれない。
「てんちょお、カゴカキダイっていうのですが、このしましまさん」
「そそ」
「うーん、賞のリストにはないですね」
「おお、書き写してくれていたの?」
ですです、と笑顔でコクコク頷くアーニー。こいつ、シゴデキだ。ダメな俺をもっともっと支えてくれよ、ふふん。
と謎の上から目線でいると、二匹目が釣れた。
バシャーーン。海面に物凄い水しぶきが。釣りスキルの効果なのか、重さはまるで感じないが得物はかなり大きい。
姿を現したのは巨大な二枚貝だった。全長は目測で凡そ1.5メートルもある。
ドシイイン。
落ちた勢いで貝が割れるかと思ったが、ビクともしなかった。
「これは……オオシャコガイだな。魚じゃないけど、対象になるんだろうか」
「重さだけなら優勝確実ですよね!」
ウミヘビはおっけーだっけ? なら貝はどうなのかなあ。貝は貝殻がくっそ重たいから重量だけならアーニーの言う通りトップになれる可能性が極めて高い。
釣りで海底で口を開けたり閉じたりしているオオシャコガイを釣り上げることができるってのは常識外れだけど、釣りスキルがあれば釣れちゃうんだよなあ。
ゲームだからと割り切っていたが、現実世界になると異常さが際立つ。ま、俺としては楽できてよい。
この分だと宝石サンゴとか、釣りスキルで集まる素材も集めることができそうだぜ。
「さあ、どんどん行くぞ、お、また釣れた」
「さすがてんちょおです!」
俺の腕じゃあなく、熟練度マックスの釣りスキルがあってのこと。分かっていてもアーニーに褒められて悪い気はしない。
お次は鮮やかなオレンジ色の体色をした変わった形の魚だった。ヒレの付け根からカニの足のような突起が三本伸びているのが特徴だ。
サイズは40センチと少し、くらいだな。
「ホウボウか。これは賞と関係なく嬉しい」
「あ、これ、てんちょおがたまに捌いてくださったへんてこなお魚ですよね」
「とっても美味しいんだよな、ホウボウって」
「はいー」
今すぐ捌いて食べたいくらいだけど、まだ釣り大会ははじまったばかり。休むにしてもまだまだ先だ。
気合を入れる俺であったが、遠くから釣り大会参加者へ呼びかける声が聞こえてくる。
何やら騒然としているようだけど、どうしたんだろう?
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