凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第32話 砂海へ

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 砂海側へは街の北門から出るのが一番近いとレストランで教えてもらったので、北門に向かったんだ。
 北門には門番が立っていて通行人に対し目を光らせている。
 朝晩は往来も多いのかもしれないけど、今の時間、北門の傍にいるのは俺とアーニーだけだった。素通りしてもいいのだけど、初めての街だし声をかけておいた方が印象が良くなるよな?
 右手をあげて会釈すると、門番から話かけてきた。声色に厳しいものはなく、気さくな感じで。
「徒歩で出るのか?」
「砂海がどんなものか近くで見たいと思って」
「そうか、街の近くでも砂鮫やキャタピラーが出るから気をつけろよ」
「アントリオンや砂竜にも注意するよ」
 キャタピラーという言葉に背筋が寒くなり、先ほどのレストランで食べた奴の姿が頭によぎる。
 キャラピラーはあいつだよ、あいつ。あのイモムシだよ! 発見してしまったら、アーニーが捕まえてしまうじゃないか。絶対に出会いたくない。
 そいつを振り払うように別のモンスターの名前を出したんだけど、門番がひどく大きな声を出す。
「アントリオン……砂海の悪魔なんかに出会ったら生きて帰れねえぞ!」
「あ、うん、街の近くには出ないよね」
「出たら大ごとだぜ。下手すりゃ街の一部が飲み込まれるかもしれねえ」
「は、はは……」
 例としてあげたモンスターの名前が悪かったのね。変な笑いで返すことしかできなかったよ。
 気まずくなった俺と門番の間にアーニーが割って入ってくる。
「門番さん、キャタピラーはどの辺にいるの?」
「お嬢さん、キャタピラはそれなりに危ねえぞ。探索者に頼むか、漁師に頼んだ方がいいぜ」
 いやいや、待て、アーニー。いもむしのことはいいから!
 ダメダメ、って目線を送っているのに彼女は何を勘違いしたのか言葉を続ける。
「わたしたち、漁師なので下見したいなあって」
「おう、そうだったのか、あの丘が見えるか? そいつを目印に東へ進め」
「てんちょお、行きましょう!」
「いや、待て待て、今は船もないだろ」
 走り出そうとする彼女の肩をグイっと掴む。
 砂海は泳いで進むことは困難だ。いもむしに目がくらみ過ぎだってば。
 実のところ、船の代わりになるペットは保持している。しかし、ここでペットを出して進もうなんて提案を俺がするわけないんだぜ。
「砂海に沈まねえように注意しろよー」
「ありがとうー」
 どうどうとアーニーを押さえながら、門番に手を振り北門を後にする。
 
 ◇◇◇
 
「てんちょお、どこからが砂海なのか分からないですね」
「足が沈み始めたら砂海の入口と見るしかないよな」
 海や湖だと水があるかないかで区別はつくのだけど、砂海の場合は砂だから分かり辛い。
 今俺たちが立っている場所は、一面の砂なのだが、砂海の中ではないんだ。
 細かい粒子である砂は風で簡単に流される。大地に砂が覆いかぶさると見た目は砂海と変わらなくなるだろ。
 んじゃ、砂海の砂がかぶさっただけの大地と砂海は何が違うんだって疑問を抱かないか?
 砂海の砂が積み重なったら砂海なんじゃない? って考えたのだけど、あくまでゲーム内の話という前提となるが、砂海の範囲って変わらないんだよね。
 砂が砂海になる条件は場所なんじゃないかってのが俺の見解だ。
 砂海から出た砂はただの砂漠の砂と同じになる。逆に砂海に入った砂は砂海の砂になるのだ。
「てんちょお、ここから足が沈みます!」
「アーニー、足は抜いた方がいい。砂海は海と違って、入口から深い」
「そうでした!」
「砂海の入口まで来たわけだけど、どの辺をゲートの登録場所にしようかな」
 唐突に話を切り替えてもアーニーは特に嫌な顔をせず、うーんと顎に指先をあて考えてくれている。
「どこでも人がきそうな気がしますよね」
「だよなあ。砂海にも航路があると思うけど、俺が知るわけもなく。アーニーももちろん知らないよな?」
「はいー。砂海に来るのはてんちょうがまだいらっしゃった時以来です」
「いいかもう、ここで」
 北門からは結構離れているし、街の城壁も米粒ほどのサイズまで遠くなっているから、街から俺たちの姿が見られることはないだろ。
 砂海を航海する一段にたまたま遭遇することもあるかもしれないけど、これ以上場所を選定するのも面倒だもの。
 確かにゲートを使った時に移動できなくなる可能性がある。ま、その時はその時だ。屋内じゃないから、モンスターがゲート登録場所でふんがーとしていても引っかかるし、気にし過ぎるのも良くないべさ。
「てんちょお、街に戻ります?」
「いや、北門をくぐってからゲートでホームに戻ろうか」
「砂上船を取りにですか!?」
「いやいや、砂上船は持ってないよ。用意するなら街で買うなりしなきゃだよ」
 たしかヨットのような砂上船があったはず。それなら、俺とアーニーの二人だけでも運転可能だ。
 それ以外となると小船サイズの砂上船でも俺とアーニーじゃ航行することは難しいと思う。とはいえ、ヨットを使うくらいならペットを使うけどね。
 
 ホームに戻ってから夕暮れまでまだ時間があったので、アーニーの家経由でハミルトンのいる探索者ギルドに向かったんだ。
 世界中でいろいろな業務を請け負う探索者ギルドの職員である彼なら、砂海と砂上船の事情のことも多少は知っているかなって思って。
 結果、お手軽に砂上船に乗ることができる道が二つもあることが分かった。
 一つは探索者ギルドの護衛の仕事を受けること。砂海には商船や定期交通便も多数航行している。砂海にもモンスターが生息しているから、隊商の護衛をやるのと変わらない仕事ってわけさ。
 もう一つは漁船に乗ること。砂上船を出すだけ、または漁師に欠員が出た時に漁師の募集をしているのだそうだ。参加の仕方も募集次第で、漁師の欠員補充として働くパターンやお金を払って船に乗せてもらい釣果は全て自分のものにできるパターンなどなど。
 理想はお金を払って漁船に乗せてもらうパターンかなあ。
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