凄腕の探索者? いいえ、ただの釣り人です~ゲームに似た異世界に転移したが、ただの素材集めキャラなのでのらりくらりと過ごそうと思います~

うみ

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第51話 とっとと逃げよう

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 納品を済ませた俺たちは水中神殿内のダンジョンを探検している。
 アーニーと後で行こうって約束していたからね。他にも後から行こう、って言っている場所があった気もするけど、覚えているものからやろうかなって。
「くああ」
「何もいなかった?」
 高い場所の索敵を頼んでいたペットのヒクイドリが戻り、俺の肩にとまる。アーニーの俯瞰マップと併用すればモンスターから奇襲を受けることはまずない。
「くあ」
「さんきゅう」
 水中神殿内のダンジョンは自然にできた洞窟のようになっていて、とにかく広いんだよな。徒歩で探索していることもあり、もう三日目になるんだぞ。
 湖の底から繋がるダンジョンとは思えない地形で、なんと100メートルほど落下する見事な滝まである。
 俺たちがいるのは滝の下で、上から奇襲してくるモンスターはいないかヒクイドリに見てもらってきたというわけなのだ。
「アーニーはどう?」
「敵影はないです!」
 おっし。んじゃ、進もうか。
 滝からの水しぶきをあびながら、えっちらおっちらと進んでいく。途中でアーニーが立ち止まり、ふと疑問を口にした。
「てんちょお、滝の裏に何かあったりしないんでしょうか?」
「あー、あるよ」
「行ってみましょうよ!」
「いや、滝の裏は竜神『ウリドラ』ってモンスターと戦えるのだけど、ネームドの一種でな」
 滝の裏に大岩があって、そこでとある呪文を唱えると、大岩が動く。大岩の裏に道が隠されていて、奥へ進むと神殿のような空間があるんだよ。
 そこの主が竜神「ウリドラ」だ。ウリドラはリヴァイアサンというモンスターの一種で、固有名を持つ。
 リヴァイアサンは大海竜と呼ばれる海にいるウミヘビとドラゴンを足して割ったようなモンスターだ。以前捕獲したサーペンロードの上位種がリヴァイアサンになる。リヴァイアサンであれば、釣りスキルと魔法、いくつかのアイテム、そしてペットの力を借りれば何とか撃退可能だ。
 しかしだな、固有名を持つ通称「ネームド」は強さの次元が違う。ペペぺならアイテムを駆使して、逃げることがせいぜいかな……。
「てんちょおでも危ないんですか?」
「無理無理、無理だよ。相性的にシュークリームならペットと共に行けばソロでもいける」
 俺の手持ちキャラだとチーズポテトとシュークリームは戦闘系になる。チーズポテトは戦士系スキルに振っていて、シュークリームは魔法系スキルを強化している。ウリドラ相手だったら、ペットを盾にしつつちくちく削っていくのが楽だ。チーズポテトでも勝てなくはないのだけど、HPの管理が面倒で、かつ現実世界となると怪我の痛みもありそうだから、まともに戦えそうにない。
 軽い気持ちでシュークリームの名前を出したのがまずかったようで、アーニーがキラキラと目を輝かせ、俺の肩を背伸びして揺すってくる。
「シュークリームさんとお会いできるんですか!?」
「あ、いや、どうだろ」
 ペペぺの中身が俺であることと同様にシュークリームの中身も俺だろ。シュークリームがいたとしても中身が空っぽになっちゃうんじゃ?
 俺が最後に使っていたキャラクターがペペぺだったからペペぺの姿でこの世界に転移したんじゃないかと思っている。
 となると、シュークリームやチーズポテトはこの世界に存在していない、と考えるのが自然じゃないのかなあ。
 アーニーのきらっきらの顔を見ていたら心苦しいが、シュークリームをこの世界に出現させる手段については全く想像がつかない。
「てんちょおも来てくれたんです。いずれシュークリームさんやチーズポテトさんにも会えるかも、ですよね!」
「そ、そうね」
「滝の裏には触れなければ、怖いモンスターが出てくることもないんですよね?」
「うん、封印されているから大丈夫だ」
 幸い、大岩は呪文を唱えないとビクともしないから、中からウリドラが出てくる可能性はないのだ。この世界でも同じであることは確実だろ。
 だって、数百年経過しても大岩からウリドラが出てきたことはないのだから。
 ゴゴゴゴゴ。
 その時、地面が揺れる。
「うお、地震か」
「きゃ」
 ゲームでは地震なんて起きたことなかったから、すんげえビックリした。
 体感で震度3か4くらいかな。
「ま、まあ、地震が起きることもあるか」
「はいー、街でも何度か揺れたことがありますよ」
 だよなあ、と笑い合っていたら――。
 バシャアアアアアアン!
 な、なんだ? 大きな岩が落ちて、物凄い水しぶきが飛んできたぞ。びしょ濡れになるくらいに。
「あー、アーニー、今落ちてきた大岩って」
「てんちょお、滝の裏から落ちてきてました……えっと、たぶん」
 滝の裏の大岩が落ちてきた。地震によって地盤が緩んだのかどうかしらんが、道を封印している大岩が外れたってことは、中からウリドラが出てきてもおかしくないのだ!
「だよなあ。ゲートだ、ゲート急げええ」
「はいいいい」
 アーニーじゃなくて自分でゲートを出せばよかったのだけど、 あり得ないことが起こったことで気が動転しており。
 数百年無事だったからといって、今日も無事とは限らない。形あるものはいつか、っていうのは理解できるけど、今じゃなくていいじゃないかよ!
「てんちょお、ゲート出ましたー」
「とっとと逃げよう」
「くああ」
 俺が動くと肩に乗ったヒクイドリが不機嫌そうに鳴く。急に動いたからビックリしたのかもしれない。
 そんなことより、撤収、撤収。
 
 ◇◇◇
 
 ホームへ逃げ出したものの、果たしてこのままでいいのかもやもやしている。
「てんちょお、浮かない顔でどうしたんですか?」
「ウリドラのことを考えてた」
 アーニーが淹れてくれた紅茶を飲み、ふうと息をつく。
「ウリドラってどんなモンスターなんですか?」
「リヴァイアサンと見た目は変わらないよ。だけど、飛行もできるんだよな」
「飛ぶんですか!」
「うん……」
 リヴァイアサンだから、水中ももちろん移動できる。加えて空も飛べるのだ。
 人里に出現したら探索者や騎士団がかけつけるまで大災害ってことにもなりかねない。
 かと言って俺にどうこうできる実力がないんだよねえ。
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