義母たちの策略で悪役令嬢にされたばかりか、家ごと乗っ取られて奴隷にされた私、神様に拾われました。

恩返し

　オフィリア様。
　時期辺境伯と名高い家のご令嬢。子爵である私の家の上司みたいなもので、よくお世話になっていた。自分の身分をはなにかけない人で、とても親しみやすかったのよね。

　でも、そんなご令嬢が、どうしてここに？

　疑問を浮かべていると、オフィリア様は小さく微笑んだ。

「もうすぐ、元に戻りますよ。屋敷は建て直さないといけませんが」
「あの、それってどういうことですか？」

　ロドリオが聞くと、オフィリア様は小さく頷いた。

「あなた方が不当に処刑された、という事実を聞いて、私たちも調査をしたんです。もっと早く情報が入ってきていれば、処刑そのものも中断させられたんですけど……いえ、たらればですね。すみません」

　オフィリア様はうなだれて言う。珍しいことだ。
　それだけ悲しんでくれたという証拠でもあって、私は胸が痛んだ。

「結論から申し上げると、ウスティーノ子爵家は取り潰しになります」
「取り潰し!?」
「こちらが手を下すまでもなく、貴族礼儀や作法にうといだけでなく、屋敷の管理も失敗。あげく、疫病まで発生させて自滅してしまいましたから」

　困った表情で、オフィリア様は教えてくれた。
　いや、とんでもないことになってるじゃないの！　疫病だなんて！

「屋敷はすでに封鎖しましたし、感染者も封じ込めました。ですので、領民たちに影響はありません。今は我々が行政を代理で担っていますし。感染した子爵家の面々は、気力と体力があったとしても……助かりません。今頃、治ったという幻覚を見ながら死に直面していっているでしょう。情けをかける必要はありません」

　まさに、自業自得なのだから。
　心は痛まない。
　騙しに騙してきた連中の末路なのだ。

「そういうことですので、復活した以上、子爵家としての役割も果たしていただきたいのです。さすがに行政を代理で担っている状態は、長く持ちませんから」
「あ、はいっ。かしこまりました」
「処刑されたのは単なるデマであるという告知を伯爵から出していただくよう手配済みです。新しい屋敷を建てる候補地もいくつか選定しましたので、あとは気に入った場所を選んでください。業者にもすぐ手配かけますから」
「何から何まで……こんなによくしていただいて」
「これは恩返しですから」

　オフィリア様は穏やかな表情で言う。

「私たち伯爵家も、あなたたちにはお世話になったし助けられました。その信頼関係があったからこそ、今回も手を出したまでですから。なので、どうぞ気になさらずに」
「ありがとうございます……っ！」

　みんながその厚意に涙した。
　嬉しい。
　報われた気がした。

「それと……セレスさん。おめでとう」
「えっ」
「その、ごめんなさい。ちょっとだけ聞いていたの。神様と婚約なさるそうね。あなたの人生に、幸せがありますように」
「オフィリア様……」
「披露宴とかあるのかしら。是非呼んで欲しいわ」
「はいっ。ありがとうございます」

　私は涙ながらにお礼をした。

　私は、幸せものだ。

　神様に助けられて、一度は失ったものがみんな戻ってきて、こうして、オフィリア様にも助けられて、祝福されて。
　これから苦難があっても、乗り越えられると思う。

　私は、幸せだ。