義妹からの嫌がらせで悪役令嬢に仕立て上げられそうになった挙句、旦那からモラハラ受けたのでブチギレます。~姫鬼神の夫婦改善&王国再建記~

しろいるか

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義妹との対決

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 翌朝、早速大幅な減税――というか無駄な税制の撤廃――を発布した。
 もちろん国民は大歓喜である。
 手放しで喜んでもらえて、私としても嬉しい限りだった。

 その和やかな雰囲気の中、私と旦那は次々と国家で管理している義妹のわがままで購入した物品の洗い出し、及び搬出を実行する。これも手の空いた役人と輸送業者にお願いだ。

 父上へは早馬で手紙を送っているので、返事は早ければ明日にでも届くだろう。
 ならばすぐに送れるように準備を整えておきたい。
 鑑定人も呼んで確かめてもらったところ、私の予想していた金額よりもはるかに大きい金額が算出された。っていやマジか。もちろん当時に比べて価値が上昇しているものもあったが……。
 よーし、俄然売る気になってきた。

「ちょ、ちょっと、どういうことなの、これ!」

 私と旦那で陣頭指揮を執っていると、騒ぎを聞きつけたらしい義妹が早速乗り込んできた。ああ、ケバケバしい。

「何してるの! これは私のものでしょう!」

 憤慨しながら私に詰め寄ってくる。
 財務大臣は旦那なのだから、突っかかるなら旦那だと思うんだけど。でもちょうどいい。いくらベッドの上で熱い説得をしてマトモになった旦那とはいえ、義妹には弱い。

 ここは女らしく。女同士で決着をつけるべき。

 私は冷たい目線をあえて送った。
 今までとは違う反応のはずで、義妹も不審になりながらも身構える。

「旦那様の財務大臣としてのお仕事ですが、何か」
「お仕事じゃないわよ! これは、どうするつもり! 勝手に持ち出して!」
「セレブ御用達のオークションにかけるためですが」
「はぁ!?」
「言い換えます。王国の財政状況は極めて逼迫しています。その穴埋めのために、国家資産を吐き出すことにしたのです」

 毅然として言い放つ。背筋を伸ばして、堂々と。

「な、何いってるの、国家資産!? 私の私物よ!」
「いえ、国家で管理しているものなので国家資産です」

 わめく義妹に、私はぴしゃりと言い返した。

「購入したのも国家予算からであり、管理も国家でしていました。この点からして、国家資産とするもの、というのは正当な理由ですけれど」
「ふざけないで! 私が買ってもらったんだから、私のものよ!」
「ですが、ご自身では管理されておりませんし、飽きた、という理由で国家に管理を押し付けたのはあなたです。所有権もその際に放棄していらっしゃいますが」

 もう遠慮はしない。
 言外の宣戦布告に、義妹も気づいたらしい。表情が一変した。
 ここからは舌先三寸、口の強いほうが勝つ!

「だったら今すぐ私の所有権を主張するわ! いつかまた必要になるかもしれないし、愛でる時がくるかもしれないもの!」
「いいえ、お断りします」
「はあああ!?」
「こちらは国家資産であり、国家管理になりました。従って、所有権も国家のものです。故に、そちらからの所有権の主張は不当であり無効です。もし正当な理由があるとおっしゃるなら、書面で受け付けますが」

 顔を赤くさせて激昂する義妹とは対照的に、私は冷静だ。
 ここで感情に任せてはいけないのである。

 特に私の場合。

 そうなったら血を見るしかない。物理的に。
 さすがにまだ早い。

「ふ、ふ、ふざけてんじゃないわよっ!」
「いいえ、真面目です。繰り返しますが、今、この王国の予算は非常に逼迫しています。何とか立て直さなければならないのです。そのための当面の資金とすべく、この国家資産は売り払います。これは、財務大臣である第一王子の決定です」

 書面上は、旦那の判断であり、公的書類である。
 立場でいえば、義妹よりも旦那の方が上であり、不服を申し立てるのであれば戦争も覚悟しなければならないくらい重いものだ。

 さすがに義妹――ベスも知っているのか、ぐ、と押し黙る。

 よっしゃちゃーんすっ!
 その変に持ってる中途半端な知識が仇になったな!

「それでは作業に戻りますので」
「戻る必要はないわ! 何と言おうと、これは私のものなんだからっ! そもそもなんで国家予算が逼迫してるのよ? 今までやってこれてたのに! あんたが大幅な減税をしたからじゃないの! なんであんたが国民にいい顔するためだけに私が犠牲にならなきゃいけないのよっ!」

 いやお前それだーいぶヤバい発言だからな?
 私の笑顔がちょっと強張る。
 でも我慢我慢。ここは正論でぶちのめすのみ。

「いいえ、違います。税制に関しては、元通りにしただけですわ」
「元通りって……」
「国家として十分にやっていけるだけの税制は維持しておりますから、ご安心を。余剰に回収しようとしている税制、および非効率な税制を撤廃しただけです。確かな国家経営をしていくためには、国民は生産的で心が豊かでならなければなりませんから。彼らが地盤なのですよ」

 私が何も知らないと思ったら、大間違いである。
 という主張だったが、ちゃんと伝わったようだ。ベスは旗色が悪いことを悟ったらしく、ぎゅう、と下唇をかんで地団駄した。
 
「よそものが、タダで済むと思わないことね……お父様にいいつけてやるんだからっ!」

 はい来ましたお父様頼り。
 そんなもんとっくに予想済みだし、手は打ってある。ちゃんと。

「ご自由にどうぞ。私たちは国のために働いておりますから」


 堂々と言い返してやると、ベスは露骨に顔を苛立たさせた。

「絶対に渡さないんだからね! ここにあるもの全部、私のものなんだから! あんたみたいな下賤の女には、ここにある価値なんて分からないくせにっ!」

 そう吼えて、ベスは近くの棚を叩く。あ? それ私にケンカ売ってるのか。売ってるんだな。
 す、と姿勢を前かがみに移した瞬間、がた、と音がした。
 見やると、棚の上に置いていた純金製のそこそこ大きい壺が落ちてくる!

「きゃあっ!」
「(壺が)危ないっ!」

 私は慌てて地面を蹴って跳びあがり、純金製の壺をキャッチ! む、そこそこ重い。ってことはっ!
 すかさず私は勢いを殺して壺にダメージが残らない程度に減速させつつ、ベスに壺を落とす!

 ごずんっ!

 おお、いい音。
 
「きゃあっ、(壺よ)大丈夫ですか?」
「…………ぬごおっ」

 奇妙な声を上げるベスは無視して、私は一応壺を確認する。うん、大丈夫。さすが私。
 壺をもとの位置に戻すと、激痛で座り込んでいたベスが起き上がる。

「きょ、今日のところ、はっ、勘弁、して、あげるわっ」

 どうやら助けてもらったと思ったらしい。
 助けたのは壺なんだけど。
 まぁいいか。どのみち何か仕掛けてくるのは間違いないし。返り討ちにする準備をしておかないと。
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