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8章
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しおりを挟む俺の話にククスも奴を怪しいと思ったのだろう。
何やらブツブツと呟いている。
おおかた誰を奴の見張りにつけるか悩んでいるのだろう。
「ククス君、適任者がいるじゃないですか。」
「適任者?」
「いるんでしょう?
隠れてないで出てきたらどうです?」
「さすがだね~
完璧に気配を消してたはずなんだけどなぁ~」
「ゲッ…お前、いつこっちに帰って来んだよ?」
誰も居なかった場所から人がいきなりぬっと現れる。
いきなり現れた黒い影に警戒する騎士の2人。
ヤツはゼロ。
俺の所謂ストーカー的なやつだ。
そんなゼロにククスは心底嫌そうな声をあげる。
またか…といった表情だな。
「一昨日です。」
「ごめ~と~!
そんなに前から気付いてたの~?」
俺が答えるとニヤニヤと笑みを浮かべるゼロ。
気付かないはずがないだろう?
こんなにもねっとりと絡みつく視線で見つめられたら気付きたくなくたって気付くさ。
気付いていてなぜ指摘しなかったかって?
しても無駄だからだよ。
ゼロに付きまとわれて早数年…俺は諦めるということを知ったよ…
「上に報告には行ったのかよ?」
「ん~?
報告~?
まぁ~、部下が行ってるんじゃな~い?」
「適当だな…」
「キミには言われたくないよ。」
「オレは報告はちゃんとしてる。」
「ふ~ん…ま、ど~でもい~や。
僕が興味があるのはギル君…今はエル君だっけ?
キミだけだからね~」
一切嬉しくないな…
ククスもゼロも子供の喧嘩みたいだな…
そんなことより俺は仕事の話を進めたいんだが…
「レディを待たせていんるです、早く仕事の話をしませんか?」
「ぁあ…大事な大事なあの子ね…
で?
キミは僕に何をお願いしたいんだい?」
「お願い?
これはお願いではなく仕事です。
命令ですよ。」
「ん~それもい~ねぇ~」
へんたっ…
ゴホンっ…年上だけど変わってるよな、この人。
俺の言葉に目を輝かせるゼロにククスはドン引きだ。
「あなたに動向を探ってほしい人物がいます。」
「さっきの~?」
「えぇ。」
「う~ん…気分がノらないな~」
「仕事だ。やれ。」
「キミに言われてもやる気が萎むだけだよ」
「ゼロ」
うだうだするゼロにククスが思わず突っ込む。
ククスの言葉にスッと表情を消すゼロ。
我儘言うな。
あまりにも聞き分けがないゼロを睨むとだんだんゼロの口元が緩んでいき満面の笑みを浮かべる。
うん、やっぱりへんたっ…変わってるよな…
「エル様のお~せのままに。」
そう言って左胸に右手をあて深く頭を下げた後スーっと消えていく。
認識阻害の魔法でもかけているのか、それともヤツ特有のものか…まぁそれはどうでもいい。
ゼロは普段はああだが仕事は出来る。
そこは期待してもいいだろう。
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