全て平凡な僕。え?僕が主人公ですか?お断りします。

46ねこ

文字の大きさ
3 / 12
プロローグ

 3

しおりを挟む



「で?
 ノルムは今日はどうする予定なの?」

「書庫の本でも読もうかと…」

「あら?
 それが今日の予定?」

「えぇ。
 読みたい本がありまして…」


 今日は外に出たくない気分なのです。
 何かに巻き込まれそうな、そんな嫌な気がするので…。


「じゃあ今日は買い物に付き合ってくれない?」

「いえ、御断りします。」

「ノルム、姉さんを1人で買い物に行かせる気?」

「姉さんなら取り巻きの1人や2人、いますよね?
 それに僕、姉さんより弱いので荷物持ちにも護衛にもなりませんよ?」


 これは事実です。
 僕はこの家の誰よりも弱い。
 もちろん妹や弟よりも、です。
 執事やメイドと同等…もしくはそれ以下かもしれません。


「そんなこと期待してないわっ!
 私はノルムと買い物に行きたいのっ!」

「はぁ…
 でもやはり僕は家で大人しく本を読んでいます。」

「そんなっ…
 ノルムは姉さんを見捨てるのね…」


 泣き真似をして同情を誘おうとする姉さん。
 一般の方には通用しても僕には通用しません。


「姉さん、泣き真似はやめてください。」

「ちっ…
 ノルムったら冷たいんだから…」

「また今度、お付き合いしますよ。
 なので今日は姉さんが折れてください。」

「わかったわ…
 今度は絶対だからね!」


 舌打ちが聞こえましたが聞こえなかったことにしましょう。
 平穏な日常のためにはそれが一番です。
 今日は諦めてもらうために別条件を出し姉さんの気を逸らす。
 別の日は犠牲になりますが、仕方ありません。
 背に腹は変えられません。
 取り敢えず今日はダメなのです。

 姉さんは念を押しながら出かける準備をするために部屋から出て行く。
 姉さんが出て行ったことで再びこの部屋に静寂が広がる。
 やっと静かになりましたね。
 僕はサイドテーブルに置いてあった読みかけの本を広げ紅茶を傾けつつ読み始める。
 本や物語に飲み込まれていくこの瞬間、この時間、一番落ち着く気がします。
 僕には本気で集中すると周りが見えなくなってしまう、という悪い癖がありますが、こればっかりは止められません。
 好きなものに没頭するこの幸福感、わかっていただけますでしょうか?









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...