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プロローグ
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しおりを挟むあと数ページというところまで読み進めひと息つこうと視線を上げるとこちらを見つめる瞳が4つ。
またやってしまっていたようです。
「兄さま、レティは読書に飽きてしまいましたわっ」
「兄さま、ロットも読書には飽きてしまいました。」
正しくは読書をしている僕を観察するのに飽きた、というところでしょう。
実際、僕の両足に2人分の頭の重さはありましたが本を読んでいた形跡は一切ありません。
僕の太腿を枕に両腕を乗せ手の甲に顎を乗せて見上げてくる2人。
「兄さま、お庭でお茶はいかがかしら?」
「兄さま、いかがですか?」
「今日は良い天気ですわ。
兄さまのために美味しいお菓子を用意していただきましたの!
是非お庭でいただきましょう!」
「いただきましょう!」
今日はレティ主導のようです。
ロットはレティの言葉を繰り返す。
今日は家から出るつもりはなかったのですが、庭ならまぁ…
それにこの2人から逃げるのは一苦労です。
ここは諦めるべきでしょう。
「はぁ…わかりました。
では庭へ移動しましょう。」
「「兄さま、ありがとうございますっ」」
2人はぱっと明るい笑顔を見せ、立ち上がった僕を挟み込むように両腕に腕を絡ませ僕を引っ張るように庭へ誘導する。
僕はされるがまま2人に引き連れられてついて行く。
とても楽しそうです。
「今日は前に兄さまが美味しいって仰ってたお茶菓子を用意していただきましたわっ」
「兄さまが兄さんと姉さんのお誘いを断ったと聞いていたので今日はお付き合いいただけるかと期待してましたっ!」
嬉々として話す2人。
ややこしいですが兄さんはシオン兄さん、姉さんはシルキー姉さん、兄さまは僕です。
僕とシオン兄さんは逆だと思うのですが、兄妹全員がシオン兄さんのことを兄さんと呼ぶので訂正しても無駄だと小さい頃に諦めました。
庭につき僕を挟むように椅子に腰掛ける。
「ありがとうございます。」
「「ありがとうございますっ」」
メイドさんが手際良くお茶やお茶菓子を並べ、僕がお礼を言うとレティとロットも真似をする。
メイドさんは小さく微笑み軽く頭を下げて下がっていく。
彼女からすれば微笑ましい光景なのでしょう。
「ではいただきましょうか。」
「「はい、兄さま。
いただきまーす!」」
2人して手を合わせ動きも声も息ぴったり、さすが双子ですね。
手に取るお菓子も一緒、口に含むタイミングも一緒。
美味しそうに微笑む瞬間まで一緒とは…
いつ見ても面白い光景です。
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