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プロローグ
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しおりを挟む生垣の前を通る人達は中が気になるようで、いえ、この場合ロットとレティが気になる、といったところでしょう。
庭を覗きながらゆっくりと歩いて行く。
何人か前を見ていなくて柱や人同士でぶつかっているのを見かけました。
「ぉ、いたいた!
よぉ、ノルム!
それと双子ちゃん。」
庭の生垣越しに声を掛けてきた彼は自称勇者…いえ、自称ではありませんね。
彼のギフトは勇者。
なので正真正銘、勇者なのです。
…ですがちょっと…いえ、かなり残念な勇者なのです。
彼が現れた瞬間、和やかだった空気が剣呑とした空気に変わる。
「何しに来やがったんですかっ」
生垣を軽く跳び越え庭へ入って来た彼にそう聞きながら攻撃を繰り出すロット。
「うをっと…
今日も手厳しいね…」
何度か連発される攻撃を身軽に避けながらこちらに寄って来る。
これは彼が来ると起こる恒例行事のようなものです。
あぁ…
つい先日、剪定されたばかりの生垣が見るも無惨な姿に……。
穴ボコだらけの生垣…
アートにも見えなくはないですが、せっかく整えていただいたのに庭師の方に申し訳ないですね…。
「ロット、今日はこの辺で止めておきませんか?」
「兄さまがそう仰るなら。」
これ以上やってしまうと生垣があまりにも可哀想な結末を迎えそうなのでロットを止める。
僕の言葉にコロッと表情や言葉を変え、攻撃を止める。
これでこれ以上庭は酷くならないでしょう。
「今日はシルキーちゃんはいないのか…」
「姉さんに用ですか?」
そんな僕達を他所にキョロキョロと庭を見回し姉さんを探している彼は兄さんの友人で、姉さんに惚れているようです。
彼の行動で一目瞭然ですが、彼自身姉さんを「好きだ」とか「愛している」だとか公言されています。
周知の事実ですね。
「んにゃ、ノルム「邪魔なので早く帰ってくださいます?
レティは兄さまとのお茶を楽しんでいるのに、正直不愉快ですわっ」」
僕の名前が出た瞬間遮るようにレティが冷たく言い放つ。
よく僕がクエストなどに強制連行されていくため、ロットとレティは彼の事を嫌っているようです。
「あははっレティちゃんは今日も冷たいねぇー
たまには優しく、とかないの?」
レティの態度を面白そうに笑う彼。
「レティはあなたに振り撒く愛想は持ち合わせておりませんわ。」
ふんっと顔を背けながら言うレティ。
そんな姿も絵になりますね。
「それより僕に用とは…?」
「ぁあ、そうそう。
明日クエストに行くからよろしく!」
「………。」
よろしく、とは何でしょう?
いつも通り僕には拒否権はないのでしょうか?
「お断り「させません。」。」
言葉を遮られてしまいました…
やはり今回も強制連行のようですね…
勇者様御一行とクエスト…
やはり今日は外に出るべきではなかった…。
案の定、厄介事に巻き込まれたようです…。
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