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雨上がりの街②
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昼下がりの光が、ビルの窓に反射して揺れていた
ケンタは、ベンチの上でため息をついた。
その隣では、しいながパン屋の袋を両手で抱えている
「ねぇ、これ“あんぱん”っていうんだよね?」
「……まぁ、そうスけど。なんでそんなに感動してるんスか?」
「だって、甘いのにしょっぱいんだもん! 世界って不思議~♪」
彼女の笑顔を見ていると、ケンタの胸の奥のモヤが、少しずつ晴れていく気がした
けれどその瞬間、彼の目の奥がチカッと光を放つ
ケンタは無意識のうちに“視た”のだ
ケンタの超能力、本来は物を透視したり、暗闇を見通すその能力
人に向けて使ったのは初めてであったが
その光景は透き通るガラスの中のよう
椎名の姿が、まるで存在そのものが霞んでいるように見えた
「……見えねぇ、なんで……」
「え?」
しいなが小首をかしげる
そして、穏やかに笑った
「見えないことって、悪いことじゃないよ」
ケンタはその言葉の意味を、まだ知らなかった。
それが、“この出会いの終わり”を暗示していることも――
「なぁ……しいな、そういえばアンタってどこからきたんスか?アンパンとか他も色々知らないって……世間知らずにしてはおかしくないッスか?」
「え~どうでもいいじゃんそんなこと♪それより私もっともっ~と知りたいことあるの!」
しいなはケンタの疑問に一切答える素振りがない様子だった
そしてしいなはクルクルとその場で回って目を輝かせる
「あのねあのね!猫さんや犬さんはどこで会えるかな?鳥さんってあんなに小さいのになんで飛べるのかな?あー!そういえばゆーえんちっていうのもあるんでしょ?かんらんしゃとか乗ってみたいな~♪えへへ♪それからそれから……」
「ちょ、ちょっと落ち着くッス!そんないっぺんに言われても答えられないッスよ!」
少女は無邪気だった
ケンタはそんなしいなの様子を見ながら心のどこかで彼女に惹かれていく、そんな想いを感じ取っていた
純粋にはしゃぐしいなの姿や身振り、自分への対応
それは今まで出会ってきた人たちとは絶対的に違う存在であった
少女がどこからきて何者なのか
そんな疑問はいつのまにかどこかへ消え去ってしまっていた
「……でね!相手をバットで殴ったり蹴り飛ばすすぽーつ?みたいのがあるらしいんだけど、それも見てみたいな♪」
「……俺が知る限りそんなスポーツは存在しないッス」
気づけば日が落ちビルの間からは夕日が差し込む時刻になっていた
「あ、……なんだか眩しいね、これ、お日様ってこんなにあったかくて…こんなに変わっちゃうだね」
「……あぁ眩しいよ、ほんとに」
2人はしばらく夕日を眺めていた
いつもと変わらぬ夕暮れ時、街行く人は当たり前の光景に足を止めない
しかしケンタとしいな、2人だけは特別な光景のようにただずっと眺めていた
日が沈みきった時、太陽が居なくなるのを待っていたかのようにポツポツと雨が降り出してきた
「ひゃあ!冷たい!!」
「うわぁ…また降り出してきたよ…しいなこっちッス!」
2人は近くの雑貨ビルの入り口に行き、雨粒ががかからない所で雨宿りをした
「うぅ……寒い……」
しいなは雨に濡れた為かガクガクと身体が震えていた
「ほら、これ着るッス」
ケンタは着ていたパーカー脱ぎサッとしいなに被せた
その時ケンタの手をギュッとしいなが握った
「えへへ♪ケンタ君の手あっかいね~♪」
心臓が、一瞬止まった気がした
「…って!うわ!冷たっ!!しいなの手が冷たすぎるんスよ!」
そのまましいなは両手でケンタの手を握る
「ほんと暖かいよ~えへへ♪」
ケンタはそんな様子の少女に照れながらも見つめていた
(……やっぱり何も見えねぇ…人は透視できねぇのかな?)
「………」
「………」
しばらくの間沈黙が続いた
その沈黙を破ったのがしいなの一言だった
「……私ね、研究所にいたの」
「え?」
雨は次第に強くなる
その雨の音に紛れ、近くから無線への声が聞こえる
「対象-NO47"しいな"を発見、保護します」
2人の周りに気がつくと多くの車が停まり始める
そんな状況に気がつくことなく、少女は話を続ける
「ケンタ君……私を自由にして」
彼女の表情は今まで見た笑顔ではなく、険しく、真っ直ぐにケンタを見つめていた
ケンタは、ベンチの上でため息をついた。
その隣では、しいながパン屋の袋を両手で抱えている
「ねぇ、これ“あんぱん”っていうんだよね?」
「……まぁ、そうスけど。なんでそんなに感動してるんスか?」
「だって、甘いのにしょっぱいんだもん! 世界って不思議~♪」
彼女の笑顔を見ていると、ケンタの胸の奥のモヤが、少しずつ晴れていく気がした
けれどその瞬間、彼の目の奥がチカッと光を放つ
ケンタは無意識のうちに“視た”のだ
ケンタの超能力、本来は物を透視したり、暗闇を見通すその能力
人に向けて使ったのは初めてであったが
その光景は透き通るガラスの中のよう
椎名の姿が、まるで存在そのものが霞んでいるように見えた
「……見えねぇ、なんで……」
「え?」
しいなが小首をかしげる
そして、穏やかに笑った
「見えないことって、悪いことじゃないよ」
ケンタはその言葉の意味を、まだ知らなかった。
それが、“この出会いの終わり”を暗示していることも――
「なぁ……しいな、そういえばアンタってどこからきたんスか?アンパンとか他も色々知らないって……世間知らずにしてはおかしくないッスか?」
「え~どうでもいいじゃんそんなこと♪それより私もっともっ~と知りたいことあるの!」
しいなはケンタの疑問に一切答える素振りがない様子だった
そしてしいなはクルクルとその場で回って目を輝かせる
「あのねあのね!猫さんや犬さんはどこで会えるかな?鳥さんってあんなに小さいのになんで飛べるのかな?あー!そういえばゆーえんちっていうのもあるんでしょ?かんらんしゃとか乗ってみたいな~♪えへへ♪それからそれから……」
「ちょ、ちょっと落ち着くッス!そんないっぺんに言われても答えられないッスよ!」
少女は無邪気だった
ケンタはそんなしいなの様子を見ながら心のどこかで彼女に惹かれていく、そんな想いを感じ取っていた
純粋にはしゃぐしいなの姿や身振り、自分への対応
それは今まで出会ってきた人たちとは絶対的に違う存在であった
少女がどこからきて何者なのか
そんな疑問はいつのまにかどこかへ消え去ってしまっていた
「……でね!相手をバットで殴ったり蹴り飛ばすすぽーつ?みたいのがあるらしいんだけど、それも見てみたいな♪」
「……俺が知る限りそんなスポーツは存在しないッス」
気づけば日が落ちビルの間からは夕日が差し込む時刻になっていた
「あ、……なんだか眩しいね、これ、お日様ってこんなにあったかくて…こんなに変わっちゃうだね」
「……あぁ眩しいよ、ほんとに」
2人はしばらく夕日を眺めていた
いつもと変わらぬ夕暮れ時、街行く人は当たり前の光景に足を止めない
しかしケンタとしいな、2人だけは特別な光景のようにただずっと眺めていた
日が沈みきった時、太陽が居なくなるのを待っていたかのようにポツポツと雨が降り出してきた
「ひゃあ!冷たい!!」
「うわぁ…また降り出してきたよ…しいなこっちッス!」
2人は近くの雑貨ビルの入り口に行き、雨粒ががかからない所で雨宿りをした
「うぅ……寒い……」
しいなは雨に濡れた為かガクガクと身体が震えていた
「ほら、これ着るッス」
ケンタは着ていたパーカー脱ぎサッとしいなに被せた
その時ケンタの手をギュッとしいなが握った
「えへへ♪ケンタ君の手あっかいね~♪」
心臓が、一瞬止まった気がした
「…って!うわ!冷たっ!!しいなの手が冷たすぎるんスよ!」
そのまましいなは両手でケンタの手を握る
「ほんと暖かいよ~えへへ♪」
ケンタはそんな様子の少女に照れながらも見つめていた
(……やっぱり何も見えねぇ…人は透視できねぇのかな?)
「………」
「………」
しばらくの間沈黙が続いた
その沈黙を破ったのがしいなの一言だった
「……私ね、研究所にいたの」
「え?」
雨は次第に強くなる
その雨の音に紛れ、近くから無線への声が聞こえる
「対象-NO47"しいな"を発見、保護します」
2人の周りに気がつくと多くの車が停まり始める
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「ケンタ君……私を自由にして」
彼女の表情は今まで見た笑顔ではなく、険しく、真っ直ぐにケンタを見つめていた
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