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「君が楽しいなら、それでいいよ」
しおりを挟む「楽しい?」
「君が楽しいなら、それでいいよ」
「そうじゃなくて!あんたは楽しかったのかって聞いてるの!」
「僕?僕は……」
言葉の続きは出てこない。胸に手を当てて必死に自分の内の何かを探しているようだった。
口ごもる彼は苦しそうだ。水中で溺れる魚のように、空で飛び方を忘れた鳥のように、それでも彼はもがいている。
そんな顔をさせたかった訳じゃない。
楽しかったなら楽しい、楽しくないなら楽しくないって言ってほしかった。あなたの心の声が聞きたいと思った私のエゴだから。
「私はすっごく楽しい!あんたと一緒なら、ただ道を歩いてるだけでも、空を眺めてるだけでも、ひとりの時より何倍も何十倍も楽しいよ!」
彼は分からないというように首を傾げる。
それでもいい。今は、それでもいい。
「私もあんたが楽しいって思ってくれたらもっともっと楽しくなるよ!だから楽しいことたくさんしよう!一緒に!」
「一緒に……」
「これで終わりじゃないよ!楽しいことはまだまだいっぱいあるんだから早く!」
彼の手を掴んで走り出す。大きくて温かい、けれどとても幼い手。
どこまでも引っ張っていくからどうか離さないで。
今は素直に握り返してくれるその手に祈るようにぎゅっと力を込めた。
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