【短編集】

●やきいもほくほく●

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ヤンデレ令嬢、大好きだった婚約者とサヨナラします!

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確かに理由もなくマーヴィンと婚約破棄をしてしまえば、ベアトリスはこの先、嫁ぎ先が無くなり選択肢が狭まってしまう可能性もあるだろう。

今までベアトリスに尽くしてくれた両親には申し訳ない気持ちで一杯ではあるが、マーヴィンとハンナにナイフを向けて牢屋に入り、シセーラ侯爵家の名に泥を塗ると共に、ベアトリスが処刑されるよりはずっとずっとマシだろう。

けれどそれは婚約破棄をする際に何も理由がなかった場合だ。
しかしベアトリスには婚約破棄するだけの理由がある。

(不貞行為、万歳ッ‥!)

この時ばかりはマーヴィンのチャラチャラとした女遊びが激しい性格に感謝するばかりである。
マーヴィンを愛する気持ちが無くなりさえすれば、ベアトリスが我慢する必要は一切ないのだ。

マーヴィンは「嫌なら婚約破棄すればいい」とベアトリスに言った。
だったら今のベアトリスの答えは「嫌だから婚約破棄して欲しい」である。

ベアトリスと別れた後、どれだけ他の女性と関係を作って遊んでも構わない。
"他の人のものにならないで欲しい"なんて全く思っていない。

ベアトリスの言葉を鵜呑みにして、調子に乗っている今が最大のチャンス。

ベアトリスと婚約破棄してシセーラ侯爵家に手を離されてしまえば、セレクト公爵家は一時的にでも金銭面が苦しくなることは間違いなしだ。

「金目的」の婚約に、マーヴィンを狙っている御令嬢達はどんな反応を示すのか。

しかも、今のマーヴィンと王女との関係は半分進んでいるかいないか。
ベアトリスの高熱はマーヴィン攻略にも出てきたイベントである。

結局マーヴィンはブランドの呼び掛けに応じたのではなく、ハンナに諭されるような形でベアトリスの元にやってきたのを思い出して、更に腹が立ったのだ。

ベアトリスが熱に浮かされている時に、マーヴィンが吐いた言葉にムカムカとした気持ちが蘇る。


『世界で一番お前が嫌いだ』
(私も世界で一番嫌いな人になったわ)

『例えお前と結婚したとしても、俺は一生お前を愛さない』
(愛してもらわなくて結構よ!私は貴方が居ない人生を歩むつもりです)

『このまま目が覚めなければいいのに‥』
(目が覚めて本当に良かった‥‥これからマーヴィンは自分がベアトリスにしてきた行いを存分に後悔することになるのよ)


マーヴィンがベアトリスを選んだ理由はセレクト公爵に言われたからだろう。
恐らくセレクト公爵が一番羽振りが良くて、身分も申し分ないシセーラ侯爵家を選んだに違いない。

マーヴィンは始めからベアトリスの愛に応える気は無かったのではないだろうか。
ベアトリスと婚約して大切にするつもりなんてなかったのだとしたら‥‥ベアトリスは自分達を満たす為の駒でしかないのだ。

(‥‥そんなの悲しすぎるわ)

例えこれで"ベアトリス"に何があったとしても、生き残り、幸せを掴む為に努力してみせる。

(健康な身体があれば、どんな困難だって乗り越えられる!!何だって出来るわ‥!)


「マーヴィン様と結婚したら、わたくしは幸せになれません!!」

「だ、だが‥」

「今のままでは破滅してしまいます!!」

「くっ‥!しかし」

「ブランドお兄様、お願いします‥」

「ベアトリスには幸せになって欲しいんだ‥っ!」

「‥‥‥お願い、お兄様」







「―――分かった、ベアトリス!俺に任せろ」


ベアトリスの願いが届いたのか、風のように走り出したブランド。
振り落とされないようにベアトリスはブランドの首元に思いきりしがみ付く。

(こんなに愛されて育ったベアトリスは幸せね)

ブランドの愛は重過ぎるが、今のベアトリスにとっては心地よいものだった。
こんなに頼もしい味方が側に居てくれる。
それだけで強くなれる気がした。

なんとなくベアトリスの異常な愛情表現の理由が分かったところで、ベアトリスの父であるシセーラ侯爵が見つかったのだった。

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