【短編集】

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
16 / 84
ヤンデレ令嬢、大好きだった婚約者とサヨナラします!

しおりを挟む


「お父様、大切なお話があります」



ベアトリスとブランドのただならぬ雰囲気を感じとったシセーラ侯爵は、直様話し合いの場を設けた。
ベアトリスの母であるヨルテも合流して、家族会議は始まったのだ。


「マーヴィン様と婚約破棄したいのです」


ベアトリスがそう言うと、シセーラ侯爵は目を見開いて、ベアトリスの目の前で手を振りながら正気かどうかを確認していた。
ヨルテに至っては石像のように固まって動かなくなってしまった。
ブランドも先程から何度もベアトリスの額に手を当てて熱を測っている。

確かにあれだけマーヴィン至上主義だったベアトリスが、いきなりマーヴィンを拒否したら正気を疑うのも無理はない。

急すぎる心変わりに驚くのは当然である。

そして毎日毎日、マーヴィン様マーヴィン様と病気のように言っていたベアトリスが、急に「婚約破棄したい」と言い出すのはおかしい、という結論に至ったのだ。


「一体、何があったの?」

「気の迷いじゃないのか‥?」


シセーラ侯爵の言葉に何度も頷くヨルテ。
しかしベアトリスは、それをキッパリと否定した。


「いいえ、違います」

「‥‥ベアトリス」


マーヴィンへの重過ぎる恋心が無くなったベアトリスにとって、マーヴィンは枷であり邪魔者なのである。

そしてベアトリスはゆっくりと口を開いた。

もう"婚約破棄"に怯えて、マーヴィンの愚行を隠す必要は無い。
少しでも納得してもらう為に、両親に全て曝け出してしまえばいい。

マーヴィンはベアトリスが居ながらも、周囲に隠れて不貞行為を繰り返している事。
マーヴィンに好きになってもらいたい、振り向かせたいと思うが故に行った行為が間違っていた事。
そしてマーヴィンと結婚したとしても絶対に幸せになれないと気付いてしまった事。

高熱を出した後によく考えて、目を覚ます事が出来たのだと懸命に訴えた。

そしてベアトリスの今後の未来を含めて話し合った結果、どうにか「婚約破棄したい」という気持ちを理解してもらえたのだ。
ベアトリスは両親に感謝した。
家同士の利益の為にする結婚‥貴族の娘達の我儘や意思が尊重される場合は殆ど無いからだ。


「分かった。ベアトリスを信じよう」

「貴女が幸せになる為だもの!どんな形でも応援するわ」

「‥‥っ、我儘ばかり言って申し訳ありません」


ベアトリスはシセーラ侯爵とヨルテに頭を下げた。
必死にマーヴィンと婚約を結んでくれた両親を裏切るような形になってしまったからだ。

けれど、このまま王女ハンナの攻略が進んでいけば手遅れになってしまうかもしれない。
ベアトリスが逃げようとしても断罪から逃れられない事だけは避けたかった。

(先手必勝‥!!まだまだチャンスはあるわ)


「いいのよ、ベアトリス。私達も‥噂は聞いた事があったから少し不安だったの」

「でもまさか噂が本当だったなんてな‥‥セレクト公爵は何をしているんだ」

「‥‥セレクト公爵も沢山愛人を囲っていて、お金もその女性達に消えていると聞いた事があるわ」

「親子揃ってか‥‥なるほどな」

「昔は良い方だったのに残念だわ」


そう‥マーヴィンの父であるセレクト公爵も女遊びが激しい人なのである。
公爵夫人に公爵家を任せて、娼婦に使用人、訳ありの貴族の娘など、女の噂が絶えない。
そして公爵家の金を使い込み、事業にも失敗した為に今のような状況になっているようだ。


「私達はベアトリスの幸せを心から願っている」

「ありがとうございます!お父様、お母様‥!」


そう言ったベアトリスを優しく抱きしめてくれた父と母の横で、涙を流しているブランドは乱暴に涙を拭い鼻水を啜ると、ベアトリスの手を取る。


「証拠を集めるのは俺に任せてくれ!!!」

「お兄様‥?」

「アイツに恨みを返す時が、ついに来たんだッ!ベアトリス」

「は、はい‥!」


恵まれた両親とちょっぴり過激な兄に感謝しつつ、ベアトリスは頷いた。
両親の協力も得る事が出来たベアトリスは直ぐに婚約破棄へと動き出したのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

真実の愛に祝福を

あんど もあ
ファンタジー
王太子が公爵令嬢と婚約破棄をした。その後、真実の愛の相手の男爵令嬢とめでたく婚約できたのだが、その先は……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...