【短編集】

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
17 / 84
ヤンデレ令嬢、大好きだった婚約者とサヨナラします!

しおりを挟む


そしてベアトリスは熱が下がってから初めてマーヴィンと会うことになった。

ベアトリスは今日、決着を付けるつもりで公爵家へ向かっていた。
何度もマーヴィンと話し合いをするつもりはない。
お互いの同意が得られれば、それで良い。

ベアトリスは不機嫌そうなマーヴィンに嫌々エスコートされながら席に着いた。

『マーヴィン様、今日はわたくしの為にありがとうございます』
『マーヴィン様、今日もとても素敵ですわ』
『マーヴィン様に会える日をとても楽しみにしていました!』

ベアトリスはマーヴィンと会えば、腕を絡めて擦り寄りながら愛を伝えるのだが、今回は何もせずにベアトリスは席に着いたのだ。

いつものようにベアトリスがマーヴィンを褒め称える言葉が無いことに違和感を感じているのか、警戒心を滲ませながらベアトリスを睨みつけている。

大体、今日みたいに公爵家で顔を合わせる日は、ベアトリスが一方的にマーヴィンに話しかけていた。
結婚式のドレスの色や誰を招待しようかなどと、2人の明るい未来の事をずっと‥。
それをマーヴィンがウンザリしながら聞いているというのがお決まりのパターンだった。

セレクト公爵家の立派すぎる中庭。
ベアトリスが気に入ったからと用意された椅子やテーブル。

(これもセレクト公爵がベアトリスの機嫌を損ねない為に用意したものなのよね)

セレクト公爵はベアトリスを大切に扱っている。
何故ならベアトリスは金の成る木だからだ。

セレクト公爵家は古くからある家だが、事業に失敗したのとセレクト公爵の女遊びのせいで資金が底を尽きそうになっている。
マーヴィンはそんな父親と無関心な母親にウンザリしながらも現実から目を背ける為に、自らも女遊びで傷を慰めているのだ。

(‥‥可哀想な人、なんて言うと思ったら大間違いよ)

ベアトリスがセレクト公爵に嫁ぐ事で、多額の支度金が約束されている。

ベアトリスはマーヴィンが何をしても結婚する為に黙っているしかなかった。
マーヴィンはその意図を理解した上で、マーヴィンを愛し続けるベアトリスの気持ちを利用して好き放題している。

ベアトリスを思いきり拒否して嫌っているくせに、何もかも得ようとしている。


(‥‥欲張りな男、こっちだって容赦はないわ)


「この間は、お見舞いに来て下さりありがとうございました」

「‥‥」

「お兄様が無理を申し上げたようで申し訳ございません」

「‥っ!?」


第一声から、まともに話し出したベアトリスを唖然としながら見ているマーヴィン。


「今回は、ある確認をしに参りましたの」

「なんだ突然‥‥気持ち悪い」


これだけマーヴィンに嫌われて暴言を吐かれていたにも関わらず、マーヴィンを好きでいたベアトリスを尊敬してしまう。
普通ならば愛する人にここまで言われてしまえば耐えられないだろう。
それだけマーヴィンからの愛が欲しかったのだろうが、それではベアトリスは幸せにはなれない。

マーヴィンに「婚約破棄してくれ」と言われるたびに、この世の終わりかの如く泣き叫んでいたベアトリス。
ベアトリスが嫌がるとマーヴィンは決まってこう言うのだ。
「だったら俺に指図をするな」と。
ベアトリスはマーヴィンに言われて泣く泣く我慢するしかなかった。

今までマーヴィンに何をされても、ベアトリスは結婚する為にはと許していた。
だからマーヴィンもベアトリスに容赦がなかった。


(けれど、そんな日ももう終わりよ‥!)


ベアトリスは紅茶を一口飲んでから静かに口を開いた。


「マーヴィン様はわたくしを"嫌い"だと仰っていましたでしょう?」

「‥‥あぁ」

「その気持ちに間違いはないですわよね?」

「‥‥はぁ?勿論だ!聞くまでもないだろう?」

「‥‥」

「そもそも、お前がいつも婚約破棄したくない、俺と離れたくないと煩く‥‥!」

「では、わたくしとの婚約を継続したいですか?」

「お前など死ぬほど嫌いだ‥今すぐ婚約破棄したい」


言質は取った。

ベアトリスはニッコリと満面の笑みを浮かべた。





「なら、お望み通り今すぐに婚約破棄致しましょう?」




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

真実の愛に祝福を

あんど もあ
ファンタジー
王太子が公爵令嬢と婚約破棄をした。その後、真実の愛の相手の男爵令嬢とめでたく婚約できたのだが、その先は……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...