【短編集】

●やきいもほくほく●

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元婚約者がよりを戻そうと押しかけて来ましたが……わたくし、もう結婚してますけど

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嘲笑うようにこちらを見る二人に、カサンドラはその場から立ち去る事しか出来なかった。

ここでカサンドラがいくら騒ぎ立てたって侯爵家と伯爵家相手では勝ち目がない。
訴えたところで、簡単に揉み消されてしまうだろう。

カサンドラは家族の顔を思い浮かべた。
今、カサンドラがヘイリーやエイヴリーを引っ叩いて暴れたとしても、家族に迷惑を掛けるだけだ。

悔しくて悲しくて頭がおかしくなりそうだった。

あれだけ「愛している」と言っていた癖に、手のひらを返された。
エイヴリーとの愛は一瞬で偽物になったのだ。





数日後、カサンドラはエイヴリーから一方的に婚約破棄された。




カサンドラは子爵家、一方エイヴリーは伯爵家。
やりたい放題のエイヴリーを止める方法など、カサンドラは知らなかった。

カサンドラの家族は抗議しようと言ったが、カサンドラは静かに首を振った。

そして、エイヴリーは侯爵家の次女であるヘイリーとすぐに婚約をした。

社交界では捨てられた子爵令嬢カサンドラと公の場で愛を囁き合うヘイリーとエイヴリーの話でもちきりだった。

婚約破棄されたカサンドラは暫く表に出る事が出来ずに部屋に閉じこもっていた。

そんなカサンドラを家族は心配していた。

身勝手な婚約破棄といえど、これから結婚の幅が狭まり、家族にも心配を掛けてしまうと思うと気が重かった。


カサンドラとエイヴリーの壮大な恋は一瞬にして終わりを迎えた。
まるで炎が水で消されてしまうようだ。


そんな時、悲しみに泣き暮れるカサンドラに光が差し込んだ。


メレゼ子爵邸に一人の男性が訪れてきた。


それがベルファスト国王の次男であるブライアンだった。

第二王子であるブライアンと子爵令嬢であるカサンドラは、昔からの顔馴染みであった。

メレゼ子爵は色んな花を育てていて、城の色んな場所に飾る花を月に二度、新しく替えていたのだ。

父の仕事について行き、カサンドラも何度も何度も城に行っていた。
そして父の仕事が終わるまで、歳の近いブライアンとよく遊んでいたのだ。


当時、ブライアンと庭を駆け回っていたカサンドラ。
身分関係なくカサンドラに接してくれるブライアンは良い友人だと思っていた。

そんな時、ブライアンは隣国へ一年間留学する事となった。

そしてブライアンが留学から帰ってくる少し前に、カサンドラとエイヴリーは婚約した。

留学する前は、月に一度はお茶をする仲であったカサンドラとブライアン。

しかしブライアンが帰ってきてからはエイヴリーと婚約していたのもあり、ブライアンとのお茶の予定を断っていたのだ。


そして婚約破棄……。


ブライアンは何度も「カサンドラと会って話がしたい」と手紙をくれた。

カサンドラを心配してくれている気持ちは嬉しかったが、カサンドラはボロボロで瞼も腫れていて、とてもブライアンと会える状態ではなかった。

その為、何度も断りの手紙を書いていた。


――コンコンコンッ



そんなある日、部屋に響いたノックの音に鼻を啜りながら返事をする。

部屋で泣いていたカサンドラの前に、颯爽と現れたブライアン。
背後には両親と侍女が嬉しそうに笑っていた。

呆然としすぎて動けないでいるカサンドラの涙を親指で拭ったブライアンは、悲しそうに眉を顰めた。


「こんなに目を腫らして……」

「……ブライ、アン?」

「君にそんな顔をさせる程に……あの男が好きだったの?」

「っ、いいえ!腹が立ちすぎて、悔しくて泣いているのよッ」

「………そうか」

「今は、世界で一番嫌いな人だわ…っ」


カサンドラがそう言うと、ブライアンはカサンドラの頬の涙の跡にキスを落とす。


「!!!」

「ねぇ……カサンドラ、僕と結婚してくれないかな?」

「え………?」


カサンドラは目を見開いた。
始めは冗談を言っているのかと思っていたが、ブライアンは真剣にカサンドラを見つめている。
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