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ふしぎの国の悪役令嬢はざまぁされたって構わない!〜超塩対応だった婚約者が溺愛してくるなんて聞いていませんけど!〜
①⑤
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(前は超塩対応だったのに……!いきなりどうしちゃったのかしら。ハッ、わたくしやっぱり嫌われているのかしら)
思い込みから一気に尻込みしてしまい、エマから借りたナイフホルダーの中に忍ばせているプレゼントは渡せそうにない。
(そもそも受け取ってくれるのかしら……迷惑って言われたら立ち直れないわ!エマァアァッ、助けてぇ)
なんとなく気まずくなり、ソワソワして当たり障りない話題を出した。
「久しぶりのパーティーだから緊張してしまいます。それに……」
マスクウェルがカッコよすぎるから隣に並んだら気絶してしまうかもしれない、とは言えずにファビオラへ口を閉じる。
今日はイメージ回復を目指しているのに絶対にマスクウェルの前で失敗したくないという焦りからか指が震えていた。
「緊張する必要はない。僕が隣にいるのだから」
そう言ってファビオラに視線を送る頼もしいマスクウェルに心臓を撃ち抜かれたファビオラは意識を持っていかれる寸前だった。
白目にならなかった自分を褒めてあげたい。
何故こんなにも彼は尊いのか……思考停止中である。
表向きの顔でいたかと思いきや、途端に裏向きの顔で攻めてる。
油断も隙もないとはこのことである。
なんとか堪えたファビオラはマスクウェルに笑顔を返した。
(あっぶねえぇぇぇ……!もう少しで魂持っていかれるところだったわ)
なんとなくではあるが、また以前のように突き放されるのだと思っていた。
それなのに甘い雰囲気に戸惑っている。
マスクウェルも半年の間に何か心境の変化があったのだろうか。
こうしてファビオラに笑顔を向けてくれるのだが、それでも倒れずにすむのはエマとの訓練があったからだ。
(ここの空気が美味しいわ……マスクウェル殿下、かっこいい)
二人で当たり障りのない話題で談笑していた。
会場に着いてマスクウェルのエスコートで馬車から降りる。
会場に向かって歩いていく最中、妙に視線を感じていた。
(さすがマスクウェル殿下だわ。あまりの美しさに注目が集まっているのね!)
実際はファビオラの洗練された美しさに見惚れている人達が大勢いたのだが本人は気づくことはない。
(なんでかしら……わたくしに何かおかしいところが!?エマは大丈夫だって言っていたけど)
ファビオラが不安になっていると、マスクウェルがそっと顔を覗き込む。
「ファビオラ、大丈夫?」
フォビオラは暫く目を見開いて固まった後に、コクコクと首を動かした。
マスクウェルがさりげなくファビオラの名前を呼んで心配してくれる。
それだけでも天にも昇る心地だ。
社交界ではファビオラとマスクウェルの不仲説が流れていたが、それを一瞬で払拭していったとも知らずにファビオラはマスクウェルとパーティーを楽しんでいた。
(まるで本物の婚約者同士みたい……)
ふと、ファビオラの頭の中にあることが過ぎる。
(マスクウェル殿下とこうして過ごせるのも、あと少しだけなのね……学園に行けばアリス様と結ばれるのよね)
そう思うと胸が締めつけられるように悲しくなった。
わかっていたはずの結末なのに、受け入れていたはずなのに、嫌だと思ってしまう自分がいた。
しかしファビオラはその考えを振り払うようにすぐに首を横に振った。
(わたくしは愛に生きる女……ファビオラ・ブラックよ!悪役令嬢として、マスクウェル殿下の幸せを願って、去り際まで美しくいなきゃ)
気合いを入れながらファビオラは笑顔を作る。
しかしファビオラを襲う不安は暫く払拭できなかった。
マスクウェルとダンスを踊りながらも、この手を離したくないと思ってしまう。
幸せと不安が隣り合わせの中、曲が終わる。
(いつか……別れる運命ならば、こんなに好きにならなければよかった)
久しぶりに感情が昂ったからかファビオラは泣きそうになるのを堪えていた。
「ファビオラ……?」
ファビオラの瞳から一筋の涙が溢れていったのを見てマスクウェルが大きく目を見開いている。
ファビオラは急いで涙を拭って表情を取り繕う。
自分で決めたことなのに、こんな風に名前を呼ばれて触れていると勘違いしてしまいそうになる。
「ご、ごめんなさい。嬉しすぎて……わたくしったら」
「…………。向こうで休もう」
「いいえ、大丈夫ですわ!」
ファビオラがそう思っていても涙が止まらない。
ここで失態を犯してはならないと、なんとか涙を堪えようと俯いていた。
「───ビオラッ!」
そんな時、聞き覚えのある声が聞こえて顔を上げた。
トレイヴォンがファビオラを包み込むようにして抱きしめた。
「レイ……!」
「大丈夫か!?」
「えぇ、ごめんなさい。でも大丈─っ」
「大丈夫な訳あるか。向こうで休むぞ?」
「……っ、でもマスクウェル殿下の前で!」
ファビオラはトレイヴォンに抱え上げられた。
トレイヴォンの行動に会場からは黄色い悲鳴が上がり、頬を赤く染めている。
マスクウェルはその場に立ち尽くしていた。
騒めく会場でトレイヴォンとファビオラを讃える声が耳に届いた。
「ファビオラ様……なんて美しいのかしら」
「トレイヴォン様は男らしくて素敵ね」
「二人はご友人なのでしょう?わたくし、ファビオラ様がトレイヴォン様の婚約者なら諦められたのに」
「あの二人はお似合いよね」
思い込みから一気に尻込みしてしまい、エマから借りたナイフホルダーの中に忍ばせているプレゼントは渡せそうにない。
(そもそも受け取ってくれるのかしら……迷惑って言われたら立ち直れないわ!エマァアァッ、助けてぇ)
なんとなく気まずくなり、ソワソワして当たり障りない話題を出した。
「久しぶりのパーティーだから緊張してしまいます。それに……」
マスクウェルがカッコよすぎるから隣に並んだら気絶してしまうかもしれない、とは言えずにファビオラへ口を閉じる。
今日はイメージ回復を目指しているのに絶対にマスクウェルの前で失敗したくないという焦りからか指が震えていた。
「緊張する必要はない。僕が隣にいるのだから」
そう言ってファビオラに視線を送る頼もしいマスクウェルに心臓を撃ち抜かれたファビオラは意識を持っていかれる寸前だった。
白目にならなかった自分を褒めてあげたい。
何故こんなにも彼は尊いのか……思考停止中である。
表向きの顔でいたかと思いきや、途端に裏向きの顔で攻めてる。
油断も隙もないとはこのことである。
なんとか堪えたファビオラはマスクウェルに笑顔を返した。
(あっぶねえぇぇぇ……!もう少しで魂持っていかれるところだったわ)
なんとなくではあるが、また以前のように突き放されるのだと思っていた。
それなのに甘い雰囲気に戸惑っている。
マスクウェルも半年の間に何か心境の変化があったのだろうか。
こうしてファビオラに笑顔を向けてくれるのだが、それでも倒れずにすむのはエマとの訓練があったからだ。
(ここの空気が美味しいわ……マスクウェル殿下、かっこいい)
二人で当たり障りのない話題で談笑していた。
会場に着いてマスクウェルのエスコートで馬車から降りる。
会場に向かって歩いていく最中、妙に視線を感じていた。
(さすがマスクウェル殿下だわ。あまりの美しさに注目が集まっているのね!)
実際はファビオラの洗練された美しさに見惚れている人達が大勢いたのだが本人は気づくことはない。
(なんでかしら……わたくしに何かおかしいところが!?エマは大丈夫だって言っていたけど)
ファビオラが不安になっていると、マスクウェルがそっと顔を覗き込む。
「ファビオラ、大丈夫?」
フォビオラは暫く目を見開いて固まった後に、コクコクと首を動かした。
マスクウェルがさりげなくファビオラの名前を呼んで心配してくれる。
それだけでも天にも昇る心地だ。
社交界ではファビオラとマスクウェルの不仲説が流れていたが、それを一瞬で払拭していったとも知らずにファビオラはマスクウェルとパーティーを楽しんでいた。
(まるで本物の婚約者同士みたい……)
ふと、ファビオラの頭の中にあることが過ぎる。
(マスクウェル殿下とこうして過ごせるのも、あと少しだけなのね……学園に行けばアリス様と結ばれるのよね)
そう思うと胸が締めつけられるように悲しくなった。
わかっていたはずの結末なのに、受け入れていたはずなのに、嫌だと思ってしまう自分がいた。
しかしファビオラはその考えを振り払うようにすぐに首を横に振った。
(わたくしは愛に生きる女……ファビオラ・ブラックよ!悪役令嬢として、マスクウェル殿下の幸せを願って、去り際まで美しくいなきゃ)
気合いを入れながらファビオラは笑顔を作る。
しかしファビオラを襲う不安は暫く払拭できなかった。
マスクウェルとダンスを踊りながらも、この手を離したくないと思ってしまう。
幸せと不安が隣り合わせの中、曲が終わる。
(いつか……別れる運命ならば、こんなに好きにならなければよかった)
久しぶりに感情が昂ったからかファビオラは泣きそうになるのを堪えていた。
「ファビオラ……?」
ファビオラの瞳から一筋の涙が溢れていったのを見てマスクウェルが大きく目を見開いている。
ファビオラは急いで涙を拭って表情を取り繕う。
自分で決めたことなのに、こんな風に名前を呼ばれて触れていると勘違いしてしまいそうになる。
「ご、ごめんなさい。嬉しすぎて……わたくしったら」
「…………。向こうで休もう」
「いいえ、大丈夫ですわ!」
ファビオラがそう思っていても涙が止まらない。
ここで失態を犯してはならないと、なんとか涙を堪えようと俯いていた。
「───ビオラッ!」
そんな時、聞き覚えのある声が聞こえて顔を上げた。
トレイヴォンがファビオラを包み込むようにして抱きしめた。
「レイ……!」
「大丈夫か!?」
「えぇ、ごめんなさい。でも大丈─っ」
「大丈夫な訳あるか。向こうで休むぞ?」
「……っ、でもマスクウェル殿下の前で!」
ファビオラはトレイヴォンに抱え上げられた。
トレイヴォンの行動に会場からは黄色い悲鳴が上がり、頬を赤く染めている。
マスクウェルはその場に立ち尽くしていた。
騒めく会場でトレイヴォンとファビオラを讃える声が耳に届いた。
「ファビオラ様……なんて美しいのかしら」
「トレイヴォン様は男らしくて素敵ね」
「二人はご友人なのでしょう?わたくし、ファビオラ様がトレイヴォン様の婚約者なら諦められたのに」
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