【短編集】

●やきいもほくほく●

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転生したら皇女様でした〜推しがピンチなので婚約破棄してから国に持って帰ります〜

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「………ぁ」


パッと光の速さで流れる映像に衝撃を受けた。
今、はっきりと思い出せるのは前世の記憶だ。

状況を確認するも、やはり此処は現実。

そして視線の先……。

人生の全てを掛けて愛していた推しが目の前で責められている姿を見て、持っていたカップがミシリと音を立てて割れた。


「ッ、リリアーナ殿下、大丈夫ですか!?」

「お怪我はございませんか!?リリアーナ殿下?」

「………」


心配そうに此方を見る侍女を横目に、大丈夫だと意味を込めてスッと手を上げる。


「……チェリーに付き纏っていたのはお前だな!」

「えっ、ち、違いますけど…ッ」

「チェリーから相談を受けている!お前のその気色悪い髪を見間違う筈がないだろう!?」

「で、でも……僕はっ、落としたハンカチを」

「言い訳はいらないッ!チェリーが怖がっているじゃないか!!いい加減にしろ」

「わっ……!」


ドシッと尻餅をついた推しを見て、血走った目を見開いた。

覆いかぶさった前髪、グラデーションになっている不思議な髪色。
黒縁の冴えない眼鏡と、マッチ棒のような細い体。

そんな推しを責め立てるのは三人の赤、黄、青の信号機のような髪色をした顔が無駄にいい男達。
そんな男達に囲まれて、桃色の髪の少女は瞳を潤ませて怯えるように服を掴んでいる。


「あ、あの……わたし怖いです」

「あぁ、愛しいチェリー……直ぐにコイツを排除してやるからな」

「大丈夫だ、俺達が守ってやる!」

「安心して下さい!僕に任せて」


上からこの国の王太子ナシール、騎士団長の息子のトレ、宰相の息子ダンテ。
身分の高い奴等を誑かしまくるチェリー・プラナイト。

チェリーは今、過激な嫌がらせを受けている。
その理由は、これだけの身分が高く将来有望な令息達を籠絡しているからに他ならない。

そんなチェリーは令息達のファンが兎に角多く、不気味なラブレターや過剰なアピールが多くあるそうだ。
しかしそれはペタペタと無意味なボディータッチを繰り返すチェリー自身が蒔いた種なのである。

それを「助けて」「怖い」と言うだけで、言う事を聞く奴らがいるのだから、さぞ人生は楽しい事だろう。
実際、元平民でありながら学園で大層いい身分を築き上げている。

そのチェリーに付き纏っている犯人にされそうになっているのが、デクラン・シェルジェである。

だがしかし、デクランはチェリーが落としたハンカチを拾い上げて届けようとした時に、そのドジさ故にちょっと躓いてしまい、そのまま前に倒れ込んだ。

そして「パンツを見たのではないか」という自意識過剰女のせいで、恋に浮かれた馬鹿な男達に一斉に責められている可哀想な男の子なのである。

デクランはこの地味な見た目とオドオドした喋り方がとても可愛い、最強で最高な推しなのである。
そして眼鏡を取った時の顔が世界で一番イケメンだ。

大切な事なのでもう一度言おうと思う。
世界で一番のイケメンだ。

異論は認めない。

そして記憶が戻った瞬間に瞬時に理解した。

(…………私は今、推しを守る為にこの世界にやってきたに違いない)

あわあわとしながら首を横に振るデクランは可愛いので、もう少し見ていたい気持ちもあるが、彼が悲しんでいるというのなら黙っている訳にはいかない。

スッ……と立ち上がり静かにデクランの元へと向かう。
足を進める度に周囲は静まり返る。
バサリと黒と紫の羽の扇を広げて一歩一歩と足を進めていく。


「何の騒ぎですの……?」

「……ッ」

「リリアーナ殿下っ……これは」

「なんだ、リリアーナ!お前は関係ないだろう!?」
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