【短編集】

●やきいもほくほく●

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転生したら皇女様でした〜推しがピンチなので婚約破棄してから国に持って帰ります〜

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ナシールの行動が馬鹿すぎて面白いから……であった。

生まれた時から皇帝に溺愛されてモテモテの人生を歩んできたリリアーナの感覚は到底理解できないが、余程ナシールが刺激的だったのだろう。

だからこうしてナシールとチェリーとの関係にも口を出さずに、一歩引いて観察しているのである。

リリアーナは刺激的な生活を送って満足していたが、最近はナシールにも飽き始めていた。
そろそろ国に帰ろうかとお父様に頼もうかしら……なんて考えていた頃に、こうして"リリアーナ"として意識が覚醒したのである。

(リリアーナ、なんて恐ろしい子……!)

リリアーナが前に立っても、ナシールとチェリーはお構いなしである。


「邪魔だ、リリアーナ。あっちに行っていろ……!」

「………」

「いくらチェリーが可憐で素晴らしいからといって、これ以上は許さんぞ」


ーーーパシッ


「うっ……!」


ナシールはあろう事かデクランに手を上げた。
カランカランと音を立てて眼鏡が足元に転がって、リリアーナの足に当たる。

その様子を見て、目を見開いた。
手から羽根の扇子がぽろりと落ちる。


「お嬢様……ッ!」

「リリアーナ殿下……!殿下に手を出すなどベルベット皇国を敵に回すのと同じですわ!」


侍女達が声を上げる。
それには騎士団長の息子のトレ、宰相の息子ダンテが慌ててリリアーナの前で腰を折る。

チェリーに恋をしてからは腑抜けてはいるが、基本的にはナシールよりはマシではある。
これがどれだけやばい状況か流石に理解しているのだろう。
いつもは感情を動かさないリリアーナがこれだけのアクションを起こしたのだ。


「もっ、申し訳ありません、リリアーナ殿下」

「謝る事はない!詫びなら眼鏡を打つけたデクランにさせればいい」

「殿下……!」

「チェリーに仇為すゴミだ。煮るなり焼くなり好きにするがいい……!」

「そ、そんな……ッ」


プチン……そんな音と共に何かが切れる音がした。

そっと足元にある眼鏡と毒々しい色の扇子を拾い上げてからバサリと広げる。
侍女達も心配そうに此方を見ている中、一歩また一歩と足を進める。

ナシールの前で足を止める。
そしてにっこりと微笑んだ。


「………許せませんわ」

「だから、そいつは好きにしていいと言っているだろう!?なぁ、チェリー」

「わたしもそう思いますぅ」


不愉快な声を出したチェリーをギロリと睨みつけると、彼女はビクリと肩を揺らした。
リリアーナの中ではどうでも良すぎて視界にも入ったこともない女である。


「ナシール様、わたし怖い……っ」 

「おいッ!チェリーを怖がらせるなッ」


その言葉にパチンと扇子を閉じる。

そして思いきり手を振り上げた。


ーーパシッ


頬を思いきり叩くと、その衝撃でナシールは尻餅をついて倒れ込む。
そして頬を押さえながらワナワナと震えていた。


「なっ……貴様」

「その煩い口を閉じて下さる……?」

「こ、こんな事ッ……許さない、絶対に許さない」

「リリアーナ様っ、ひどいですぅ!ナシール様に手を上げ……ーーッ!?」


瞳に涙を浮かべながらナシールに駆け寄るチェリーをギロリと睨みつける。
その視線には殺意をたっぷりと詰め込んだ。
そしてチェリーに向けて地を這うような声で言った。


「もう一度だけ言うわ……わたくしは、その煩い口を閉じろと言ったのよ」

「……ッ」

「この無礼者ッ!チェリーを怖がらせるなとあれ程言っただろうが……っ」


この状況下でもギャーギャーと喚くナシールに、周囲の視線は冷ややかを通り越して怒りが滲んでいる。


「婚約者になったからと言って偉そうに……むぐッ!?」


ダンテが慌ててナシールの口を塞ぐ。
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