【短編集】

●やきいもほくほく●

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転生したら皇女様でした〜推しがピンチなので婚約破棄してから国に持って帰ります〜

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一度汗ばんでないか手のひらを握って開いてを繰り返した後、今まで話から置き去りにされていたデクランに向けて、そっと手を伸ばす。


「大丈夫ですか……?」

「「「「「!?」」」」」


まさか此処でデクランを気に掛けるとは思っていなかったのだろう。
話しかけてくる奴等のせいで、デクランにずっと土が付いていたことが許せなかったのだ。


「あ、あの……」

「さぁ、わたくしの手に掴まって」

「いけません……!リリアーナ殿下の綺麗な手が汚れてしまいます」



ーーードキューーン

この状況で、此方の手が汚れてしまう事を心配するデクランに心臓が撃ち抜かれた。
ゆるゆると首を横に振りながら戸惑う姿に、唇を噛んでニヤケそうになるのを抑えていた。

その間にもデクランは自分で立ち上がってしまう。

(折角、デクランに触れるチャンスが……)


「ごめんなさい……今、僕の手は汚れているので。気を悪くされましたか?」

「……………」

「その、折角の気遣いを……申し訳ございません」


貴族の令息とは思えない控えめで慎ましい態度と此方を気遣う言動。
相手の顔色……というよりはリリアーナの動かない表情から何を思っているかを察する観察眼。

(ーー素晴らしいのよ!デクランはッ)

しかしリリアーナが折角手を伸ばしたのにも関わらずに断ったデクランに腹を立てた侍女達は「信じられない」と怒っている。
恐らく、リリアーナの手が汚れでもしたら、もっと怒るのだろう……騒ぐ侍女達に片手を上げて黙るように制す。

それだけで侍女達はピタリと動きを止める。
リリアーナが幼い頃から側にいる侍女達は良くも悪くも過保護である。

そんな侍女達は、普段から何も言わないリリアーナの為にと必死で動くのだが、それが良い方向になる時もあれば、悪い方へと流れる事もある。

(問題は山積みね……)

しかし、今は侍女達の躾は後だ。

バサリと扇子を広げてからニヤける口元を隠す。
恐らく眼鏡を探して焦っているであろうデクランに、先程、足元に転がってきた眼鏡を渡す。


「あの、ありがとうございます!リリアーナ殿下」


ペコリと頭を下げるデクランが可愛すぎて溢れる想いが抑えきれなくなる。


「デクラン様……」

「……?」

「わたくしと………一緒に皇国へと行きましょう?」

「………え!?」


その言葉に、さすがに周囲の人達も戸惑いを隠せない。


「つ、つまりナシール殿下と婚約破棄して、デクランと……?」

「わたくしはデクラン様に聞いているのです。部外者はお黙りになって下さいませ」

「……っ、申し訳ありません」

「ああ、好きにしろ……!チェリーのストーカーが居なくなって清々する」

「………殿下ッ!!」

「それに邪魔者も消えたしな!今日は最高の日だ」

「ですねぇ」


タイミングよく侍女が戻ってくるのを見て、笑みを深めた。

侍女から書類を受け取る。
学園に万が一にと預けられた書類。

今頃、早馬が出されて国王達の元にも伝わるのだろうが、その時にはもう完全に手遅れだろう。


「今、この瞬間から……貴方とわたくしの婚約は破棄されました。それから、この国の食糧支援も打ち切りですわ」

「……!!」


パチンと扇を畳んで淡々と言い放つ。
ペタリと膝を突き絶望する人々を見て、流石のナシールもその言葉を聞いて焦りを滲ませる。

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