【短編集】

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
77 / 84
やさぐれ聖女は国から出て幸せを謳歌する〜あんな国、潰れちまえばいいと思っていたら、超イケメン騎士と毒舌巨乳聖女に溺愛されていました〜

しおりを挟む
「ジェイデン殿下は何も分かっていないのです!レーナ様がどれだけこの国にとって……っ!おい、レーナ様を引き留めろっ」

「俺はエイブリーと結婚するっ!」

「いけません!」


そんな言葉を聞き流しながらレーナが背を向けて扉まで歩いていくと、周囲にいた騎士達が宰相の命令でレーナの足を止めようと立ちはだかるが、レーナは手を前に出して、自分を覆う膜を作って、そのまま歩いていく。
それだけで騎士達は弾き飛ばされていくので、聖女の力はなかなかに便利である。

そして先程からジェイデンが結婚したいと愛を叫んでいるエイブリーというのはこの国の伯爵令嬢で『聖女』として共に働いている少女である。
いつもニコニコと可愛らしい小動物のような可愛らしい見た目と思わず目がいってしまう豊満な胸。
喋り方もまったりとして癒し系な彼女をジェイデンはとても気に入っているようで、よく引き合いに出されていた。

ともあれ今はレーナと呼ばれているが元の名前は岡 玲奈(おか れいな)二十五歳である。
取引先に向かう途中で突如現れた不思議な魔法陣に一瞬にして吸い込まれるようにして呼び出……拉致られた。
社会の荒波にもまれて、やさぐれた普通の会社員である。
理不尽な残業は当たり前、それに加えて鬼上司に仕事を押し付けられる環境最悪なブラック企業で働いていたのだが……。


「ようこそ、キディルート王国へ。歓迎します!聖女様」


見たことのない異国の服を着ている複数人の男達に囲まれながら呆然としていた。
そして自分が国を救う聖女として召喚されたことを告げられてレーナに差し出される手。
「あら、いい男」と思ったのは一瞬だけだ。

ジェイデンはレーナを見て顔を歪めた後に「こんな子供が聖女な訳がない」と、暴言が飛んできたのであった。
確かに今ならばその言葉の理由がわかる。
この国の聖女は皆、貴族の令嬢から選ばれていることも多く若くて美しい。
それが基準で選ばれているのかと思うくらいだが、実際は『聖女』という称号が欲しい令嬢ばかりで、平民出身や貴族の中でも身分が低い聖女達が働いていて手柄を横取りしているのである。

(この国の聖女システムは……腐ってやがる)

レーナは直感的にそう思った。
しかしこの時はそんなに嫌なら別のやつを召喚すればいいじゃんと心の中で毒吐きながら考えていた。

脱げたヒールを拾い上げたレーナはキョロキョロと辺りを見回す。
どうやらカバンは魔法陣には吸い込まれなかったようだ。

(遅延と言い訳するしか。いや、病人を助けたと言った方が……)

頭の中はどう言い訳するかでいっぱいだった。
どうでもいいから遅刻だけは避けたいと、レーナは声を上げる。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

真実の愛に祝福を

あんど もあ
ファンタジー
王太子が公爵令嬢と婚約破棄をした。その後、真実の愛の相手の男爵令嬢とめでたく婚約できたのだが、その先は……。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

売られたケンカは高く買いましょう《完結》

アーエル
恋愛
オーラシア・ルーブンバッハ。 それが今の私の名前です。 半年後には結婚して、オーラシア・リッツンとなる予定……はありません。 ケンカを売ってきたあなたがたには徹底的に仕返しさせていただくだけです。 他社でも公開中 結構グロいであろう内容があります。 ご注意ください。 ☆構成 本章:9話 (うん、性格と口が悪い。けど理由あり) 番外編1:4話 (まあまあ残酷。一部救いあり) 番外編2:5話 (めっちゃ残酷。めっちゃ胸くそ悪い。作者救う気一切なし)

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...