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一章 役立たず王女、島流しにされる
④
しおりを挟むこれ以上、踏み躙られるのはごめんだった。
スマートフォンを手に取り、警察に電話をかける。
「もしもし、警察ですか? 不審者が店に……っ」
「誰が不審者ですって!? ふざけんじゃないわよ!」
逆上した姉が杏珠の腕を掴む。
今までの恨みを込めて引っ叩くと、姉の旦那だという男性も加わり激しい掴み合いになってしまう。
そして……。
──ゴチンッ
重たい音と共に後頭部に鋭い痛みが走る。
視界がボヤけてガラスが割れる音と悲鳴が聞こえた。
「うっ……!」
「ちょっと……! どうすんのよっ」
「お前のせいだろう!?」
「私は何もしていないわ! コイツが勝手に転んだだけでしょう!?」
言い争う声が次第に遠のいていく。
目の前ではショーケースに入っていた宝石が転がっている。
(折角、苦労してここまで頑張ってきたのに……またすべて奪われてしまうの?)
悔しさから手のひらを握り込む。
しかし体がスッと冷えていき、視界が真っ黒に染まった。
……と、いうところで記憶が途切れている。
警察が来てくれていたら、あの人たちは逮捕されただろうか。
(悔しい……! 悔しすぎるっ……!)
涙が溢れ出して止まらなくなった。
あのまま死んでしまったのだろうか。
夢半ばで、またアイツらに邪魔をされてしまった。
そんなところもメイジーの境遇に似ているのだろうか。
どういった意図でメイジーに転生したのかはまったくわからないが、もう物語から抜け出した後だ。
物語通りならメイジーはこのまま船の上で干からびて死んでしまうのかもしれない。
(海の上だなんて、もう何もできないじゃない)
邪魔になった前髪を乱暴に掻き上げてから小舟に大の字になって寝転がる。
「はぁ…………もう疲れた」
メイジーは大きなため息を吐いた。
ジリジリと焼け付く太陽が憎らしい。
どうして自分だけがこんな目に遭うのか悔しくて仕方ない。
どこにぶつけていいかわからない苛立ちに下唇を噛んだ。
涙が静かに流れ続ける。
(もうこのまま静かに終わりを迎えたい……お母さん、わたしも天国に行くからね)
そのままどのくらい時間が経ったのだろうか。
(お腹空いた、喉も乾いたし肌が痛い。体も痛いんですけど……)
感傷的になっていたものの、空腹感や喉の渇きに現実に引き戻される。
涙もすっかり乾いてしまった。
物語のメイジーは死んだかどうかもわからないが、このまま何もしないで死を待つのは嫌だ。
(何もしないでいるのは簡単だけど、まだわたしは……まだ生きているんだ)
再び上半身を起こしてから、分厚いスカートを手に取る。
「う゛おりゃああぁぁ……っ!」
そして恨みを込めながら力任せにスカートを引き千切った。
ビリビリと音を立てて布は裂けていく。
勢いがよすぎたのかバランスを崩して後ろに尻もちをついてしまうが、ドレスがクッションとなったようだ。
大きな揺れに船から投げ出されてしまうかと思い、心臓がドキドキと音を立てる。
「あぶな……!」
立ちながら危険だと、座りながらドレスを引き裂いていく。
船の端には先ほどまでドレスだったものが積み上がっていた。
(この際、はしたないだなんて言っていられないもの……!)
ここは海の上だ。誰も見ていない。
まずは何か使えるものを探さなければと辺りを見ます。
(せめてオールが……棒があればいいんだけど。この際、何でもいいわ。漕いでもなにもないかもしれないけど、どうにかしないと)
見渡す限り何もない海の上。
もちろん食べ物も飲み物もない。
絶望的なこの状況でこの小さな船だけが命綱である。
(海水はたくさんあるのに……)
喉の渇きに耐えかねて、手で海水をすくって口元へ。
一口、啜ってみるものの塩っぱさに顔をしかめる。
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