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一章 役立たず王女、島流しにされる
⑥
しおりを挟むそうして三日経った──。
メイジーはなんとか海の上で過ごした。
今まで天気に恵まれてきたが嵐でもきたら一発アウト。
小さな船は簡単に壊れてしまうだろう。
早くどこかに辿り着きたいと、メイジーははやる気持ちを抑えていた。
いつまで経っても辿り着けない陸地。
もうすぐ溜めていた雨水も尽きてしまうため、尚更焦ってしまうのかもしれない。
(陸地はどこ……!? どこなのよっ!)
地図もないので、もしかしたらグルグルとその場を回っているだけなのかもしれない。
今は星の方向へとオールを持っていたが、漕いでいたら手を止める。
(もしかしたらずっとこのままなんじゃ……)
急に不安な気持ちが込み上げてくる。
メイジーは下唇を噛み締めて、滲み出る涙を拭う。
弱気になる心を叱咤するようにして顔を上げた。
そして大丈夫だと言い聞かせながら、ひたすら前に進むようにオールを漕ぎ続けていたのだった。
* * *
眩しい朝日に目元を擦る。
(え……? もしかして眠ってしまっていたの……?)
がむしゃらに船を漕いでいたが、そのまま疲れて眠ってしまっていたようだ。
ドキドキと鳴る心臓を抑える。
このまま波に揺られて船が転覆していたかと思うとゾッとしてしまう。
(よかった……でもどこに流れてしまったのかしら)
太陽の位置を確認しようとした時だった。
目の前にある岩場に目を見開いた。
一瞬、岩にぶつかってしまったのかと思ったが少し違う。
視線をゆっくりと下に向けると、そこには確かに船がある。
オールは海に落としてしまったようで見当たらない。
周りに何かないか探してみてもどこまでも聳え立つ岩と海に挟まれて、どんな状況なのかさっぱりだ。
「これ、ただの岩……?」
メイジーはこれをチャンスだと考えた。
この上にある岩場を登っていけば、辺りを見渡せて島や陸地が見つかるのではないかと思ったからだ。
ロープなどもないため、小さな船を繋ぎ止めておくことはできないが一か八か、試してみてもいいではないか。
それにそろそろ地に足をつけて歩きたいと思っていた。
狭い船ではそれも叶わない。
崖のような岩場をひたすら登っていく。
折角、手にした唯一の希望を離したくなかった。
もしまた何もなかったら……そう考えそうになるのを必死に抑えていた。
(その時はその時だわ……! この上に何かあればっ)
その思いだけを胸に手と足を動かしていく。
ガラガラと横で土が崩れて落ちていった。
下を見ても地獄、上に行っても地獄かもしれないと思うとどうにかなってしまいそうだ。
(もうちょっと……! もう少しで頂上に手が届くっ!)
岩の上に手が届いてホッとする。
ただ根性とやる気だけだけで上がっていく。
「ぐぅ……っ!」
そして頂上に到達した時だった。
見えたのは木々に覆われた陸地と……。
……人だった。
「は…………?」
『誰だ、お前』
頭に直接響く声に違和感を感じて額を押さえた。
目の前の男性の唇は一切、動いていない。
それにこんなに太陽の光がこんなにあたっているのにまったく日焼けをしていない白い肌に違和感を覚えた。
首にかかるほど伸びた襟足と髪色は月のような銀色だった。
長いまつ毛は髪色と同じで神秘的だ。
瞳は海のように光に反射してキラキラと輝いて見える。
少し驚いた表情、まるで作りもののようだった。
鼻筋が通っており、切れ長の大きな瞳は猫のよう。
形のいい唇とシャープな顎は男性を中性的に見える。
スラリと伸びた首には不思議な模様が描かれている。
蜘蛛の巣のように広がっていて喉を覆っていた。
白い布を巻いているような服が尚更、神々しさを引き立たせていた。
『おい、聞いているのか?』
視線は上へと移すとやはり唇が開いている様子はない。
この男性が誰で何者かよりも、人と会えた安心感に涙が込み上げてくる。
「……ぐすっ」
『なんだお前……』
「うっ……うぇっ……!」
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