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一章 役立たず王女、島流しにされる
⑧
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メイジーが目を開くと、そこにはどこまでも広がる青い空……ではなく森があった。
ガバリと体を起こして周囲を確認すると、何故か大きな葉の上に寝かされている。
周りは土だ。それを取り囲むのは最後に目にした原始的な恰好をした人たちだ。
あまりの勢いにゴクリと唾を飲み込んだ。
「ポポ、ポーパロー?」
「はい……?」
聞いたことのない言葉にメイジーは首を捻る。
その後も互いを見つつ、何かを言いながら話し合っているではないか。
(この人たち……さっき気絶する前に岩の周りを取り囲んでいた人よね?)
岩場からいつ移動したのか、ここはどこなのか聞きたいことは山のようにあるが言葉が通じないようだ。
岩場にいた男性とはまったく違う雰囲気で敵意はないが、メイジーは歓迎している様子はない。
服装は布や葉を巻いていて、森と同化するような恰好だ。
髪は黒から茶色だが、瞳の色は緑が多い。
肌は日に焼けていてメイジーよりずっと色が濃かった。
「……あ、あの」
「ベッポ、ポローパーロ」
「ポローパーロ、ポローパーロ!」
ポローパーロと言いながら指差している先に見えるのは、大きな火にかけられた鍋とお湯。
その中身は何も入っておらず、水が煮たっている。
メイジーの隣にあるのは、立派な木の棒と蔦で作ったような荒縄。
まるで食材のように葉の上に乗せられているメイジー。
(もしかして……わたしを食べようとしていない?)
まさかそんなはずはないと思いつつ、グツグツと煮え立つ鍋とメイジーを交互に視線を送る人たち。
メイジーは逃げ道を模索するが、前も後ろも人でぎっしりと埋められている。
中にはよだれが垂れている人もいるではないか。
「わ、わたしは美味しくないですから……!」
「ポローパーロ、ポローパーロ!」
「イーエー、ポローパーロ」
石が木の先についた鈍器のような武器がメイジーの前へ。
明らかにメイジーを叩き潰すつもりではないだろうか。
メイジーは息を吸って大きく声を上げた。
「ノーッ! ポローパーロ! ノーノー! ダメダーメッ」
手を前に出して首を横に振りながらアピールした。
なんとか抵抗しようとするが、じりじりとこちらに近づいてくる人々。
振り上げられた石の武器。頭を守るように腕を前に出した時だった。
『……やめろ』
大きな男性の声が頭の中に響いた瞬間、周りの人たちの動きが止まった。
まるで時が止まったように誰も何も言葉を発しない。
『コイツは食いものじゃない……それにまだ聞きたいことがある』
男性がそう言った瞬間、周囲にいた人たちが膝を折り地面に額がつきそうな勢いで頭を下げた。
その異様な様子を見ていてメイジーは目を見開いた。
『ダ・ガブリエーレ、ダ・ガブリエーレ……!』
『ダ・ガブリエーレ……!』
男性が歩き出すと、自然と道が開けていく。
(ダ・ガブリエーレ……? この男性の名前かしら)
他の言葉の意味かもしれないと考えたものの、やはりこの男性のことを呼んでいるようだ。
こうして深々と頭を下げているガブリエーレと呼ばれた男性は慣れた様子でメイジーの方に歩いてくる。
そして、この光景を見てメイジーは思っていた。
(ダ・ガブリエーレって人……神として崇拝されてない?)
たしかに神々しい容姿をしているし、彼一人だけ異質な美しさだ。
周囲の人たちら両手を上げて深々と頭を下げていることを繰り返している。
「ダ・ガブリエーレ……?」
『ガブリエーレだ。俺の名を気安く呼ぶな』
「……!」
やはりこの男性の名前で間違いないようだ。
(ガブリエーレ……どこかで聞いたことあるような)
そう思ったが、今は彼のことについて思い出している場合ではない。
ガブリエーレは眉を寄せながらこちらを睨みつけている。
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