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二章 サバイバル生活
②①
しおりを挟む「友人なら、前はちゃんといたわ!」
『……前? なら今はいないんだな』
「ぐっ……!」
揚げ足をとられたメイジーは唇を噛んだ。
ガブリエーレはメイジーの前世の記憶があることを知らない。
それに『前』と言ったことで、今友人がいないことがバレてしまった。
『まぁ……これだけ気が強ければ恋人もいないだろう』
「余計なお世話よ、それに婚約者ならいたわ! 一瞬だけだけど……」
『一瞬? それは婚約者といえるのか?』
「それにあなただっていないんでしょう!?」
『生まれてから女に困ったことはない。友人とやらは知らないがな』
「…………」
メイジーは当たり前のように言ったガブリエーレを見て思っていた。
これは見栄でも自慢でもなく真実なのだろう。
この端正な顔立ちと布の隙間から見える逞しい肉体。
ただならぬオーラと自信満々で偉そうな態度。
黙っていても女性の方から寄ってくるはずだ。
メイジーはこれ以上、彼に勝てないと悟る。
黙って食べ物を持って立ち上がり、皆のところに向かうために背を向けた。
『おい……まだ話は終わっていないぞ?』
「みんながお腹を空かせて待ってるの。いつまでもあなたの相手をしている場合じゃないわ」
最初はメイジーに毛ほども興味がなかったガブリエーレだったが、最近になって色々と聞いてくるようになった。
二週間経って彼に何らかの変化があったのだろうか。
(……事情を言ったとしても、何も変わらないもの)
とりあえずはガブリエーレの役に立っていると判断されているため、今は暴言も許容されているということか。
(なんか遊ばれているというか、本当に暇つぶしにされている気がするわ)
ため息を吐いたメイジーが岩場を去ろうとした時だった。
『メイジー』
「……!」
初めて名前を呼ばれて驚いたメイジーは彼を見る。
いつもは『お前』と呼ばれることが多いからだ。
『茶、忘れるなよ』
「~~っ! わかってるわよ!」
お茶の催促のために名前を呼ばれたのだと思うと、やはり腹立たしい。
轟々と燃える怒りを抑えながら、慎重に岩場を降りていく。
岩場の下を降りていくとメイジーを待っていた女性たちと共に、残りの食事を運んでいった。
『……おもしれぇ』
メイジーを見ながら唇を歪めているガブリエーレに気がつくことなく、苛立ちを発散するようにドシドシと歩いていく。
賑やかな食事を終えて、メイジーはガブリエーレの元にお茶を運んだ。もちろん無言で。
その後、ガブリエーレがいる岩場の隣。
下の浜辺で遊ぶ子どもたちの姿を見つけた。
(ここは危ないから近づかない方がいいって、ミミたちが言っていなかったかしら……)
ミミはメイジーが世話になっている島の長の奥さんの名前だ。
島民たちの名前は二文字を繋げた名前が多い。
まれに島の長たちなど島で重要な役割りを持つ人たちは三文字の名前を持つが、それは島の長ダダナ、相談役のロロボなど二文字に後付けしたような名前だ。
たまに同じ名前の人がいると混乱するし、メイジーにはわからない発音もあるが概ね問題ない。
島の長ダダナとミミの子どもは三人。
活発な男の子が二人と、女の子が一人いる。
十歳の男の子がドー、八歳の男の子がデー、六歳の女の子がメーだ。
十六歳で成人するまで、名前は一文字しか与えられない。
成人すると二文字になる。独特な文化だが覚えやすくて助かっていた。
彼らは海に手を突っ込んで何かを獲って遊んでいるようだ。
「ドー、デー、ムー。あなたたち危ないわよ……!」
『メイジー、見つかった』
『見つかった。母、言わないで』
『お願い、内緒』
「言わないわ。けれどこの時間は波が高くなるし、ここの浜辺は岩ばかりで滑りやすいでしょう?」
彼らは平べったい貝を山のように持っている。
それに立っているほどがやっとなほどの高い波に押されてバランスが取れずにメイジーは足元がおぼつかない。
だが島育ちである子どもたちは何事もないように立っているではないか。
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