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二章 サバイバル生活
②⑨
しおりを挟む(形も疎らだしケシ真珠に近いけど……これをもし丸くできたら? 雫型のものだったらすぐにアクセサリーに加工できるんじゃないかしら)
つい癖で販売することまで考えてしまったが、この貝の真珠をうまく加工することができたら、ある程度の売り物になるのではないのか。
(色のバリエーション、艶、大きさも十分……問題は形。どのくらいの頻度でこれが出来上がるのかしら)
シールカイズ王国には鉱山から獲れる原石ばかりで真珠はなかった。
(もしかして他の国ではポピュラーなアクセサリーとして使われるのかしら。使われてなかったら……これは商売のチャンスでは? うまくいけばぼろ儲けよ!)
今はシールカイズ王国の宝石が主流だが、それをこの真珠にできたのなら最大級の復讐にならないだろうか。
(お父様は長くは持たない。今は国が揺らいでいるから、真珠を売り込んでいけば……フフッ)
今は宰相、ディディエ、王妃、ジャシンスが国政の中心となっているはずだ。
宰相はそれなりに優秀だった。
ディディエがどのくらいの力量を持っているかにもよるが、問題はジャシンスと王妃をどこまでコントロールできるのかだ。
彼女を女王に指定しなかった理由。
普通ならば正妃と長子であるジャシンスが女王となるはずだ。
(だけど指名されたのは第二王女のわたし……)
メイジーならば反論もしないしわがままを言うことはない。
お飾りの女王にはもってこいだった。
こう考えるのが今のところ一番だろう。
あの二人が無茶ばかり言えばシールカイズ王国はどうなっていくのか簡単にわかるような気がした。
(シールカイズ王国の次に宝石で有名なのはスリーダイト帝国……!)
スリーダイト帝国の宝石は価値が高過ぎて滅多に出回らない。
魔法の力が込められたものがあり、それは様々な効果をもたらしている。
メイジーも手にしたことはないが、見てみたいとずっと思っていた。
(追い出される前に資料で読んだことがあるわ。その宝石を手にすると巨万の富を得るとか、幸運が訪れるとか……)
かなり貴重なものらしく、宝飾産業が盛んなシールカイズ王国でも滅多に出回ることはなかった。
そして普通の宝石をスリーダイト帝国の魔石だと言って高く売りつける詐欺が横行したことで、一般には出回らなくなったと聞いたことがある。
しかしその一方でその願いの込められた宝石を作り出す者がいくなったとも言われていた。
大国のスリーダイト帝国は他にも魔法によって、様々なことができるため宝石を輸出できなくなったところで大したダメージはないのかもしれない。
彼らに真珠を気に入ってもらえたら、メイジーはスリーダイト帝国で暮らしていけるのではないだろうか。
(……つまりわたくしが手を組むべきはスリーダイト帝国ね!)
次の目標が定まったメイジーの行動は早かった。
波が高くなる前に切り上げてからドーとデーと共にムーのお見舞いへ。
ミミやダダナは傷だらけのメイジーを涙ながらに抱きしめた。
そして腫れた鼻の手当てをしてもらってからムーの元へ。
ムーは元気そうにご飯を食べている。
むしろ傷だらけのメイジーの方がひどく見えてしまう。
あそこで波に飲まれると岩や貝に擦られて血まみれになるそうだ。
大体、子どもの頃には波に流されてしまい、ダダナも背中にその時の傷があると言っていた。
彼らはメイジーにお礼をしたいと言ったが、ムーにもらった真珠のような塊で十分だと答える。
それでも気が収まらないミミにあることを頼む。
「ミミ、わたしに網の作り方を教えて! やりたいことができたの」
『網……? わかった』
ミミは不思議そうにしつつも快く受け入れてくれた。
メイジーがツタで網作りに苦戦している最中も、ムーを体を張って助けたメイジーには自然と称賛の声が集まっていた。
メイジーはこの件をきっかけに島民たちから本当の意味で受け入れられた気がした。
ダダナもメイジーに協力してくれるように網の材料のツタを仲間たちと大量に取ってきてくれた。
(始めるわよ! 丸く美しい真珠を作る実験を……!)
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