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四章 最強の皇帝
⑤⑤
しおりを挟む逞しい腕に抱かれながらメイジーは翻弄されていた。
優しいのか厳しいのかわからない彼にメイジーの心は揺さぶられている。
それに流れで帝国で暮らすことになっているが、どうして島に滞在してはダメなのかメイジーは意味がわからないままだ。
何から何まで説明がまったくないため、道を繋ぐと言った意味もここにきてやっと理解したくらいだ。
そのまま扉を潜って、再び帝国へと移動することになる。
しかしメイジーは扉を通り抜けた瞬間にクラリとした眩暈を覚えた。
(なんだかフラフラするわ)
立っていられなかったため、こうして抱えていてくれてよかったと思うくらいだ。
ズキズキと痛む頭。
何かを吸い取られたような初めての感覚に戸惑っていた。
(久しぶりに島に戻れたのに……どうして?)
メイジーが頭を押さえているとガブリエーレは心配するように声を掛ける。
『……大丈夫か?』
「平気……頭が痛いだけですから」
『今日は部屋で休め』
メイジーはガブリエーレの提案に頷いた。
するとガブリエーレが後ろに控えていたベルーガに耳打ちして、何かを話し始めてしまった。
ベルーガとマオは侍女を呼びに行ったそうだ。
(やっぱり……なんかおかしい)
メイジーはなんとか意識を保っていたが、次第に抗えないほどの眠気が襲う。
『メイジー、眠れ』
「何か知って、いるなら……ちゃんと、説明して……」
まるでガブリエーレはメイジーがこうなることを予見していたようにも思える。
ガブリエーレはただメイジーを見つめているだけだ。
先ほど見た海のように瞳だけは輝いている。
(綺麗……)
そこから何も聞こえなくなったがガブリエーレの唇が綺麗に弧を描いて「やはりな」と声が聞こえた。
* * *
メイジーが目を覚ますとベッドの上で眠っていた。
カーテンからは光が漏れているが長い間眠っていたのか、すぐに目が覚めたのかはわからない。
(……喉が渇いたし、お腹が空いたわ)
メイジーがそう思いつつベッドの上でゴロゴロしていると、眠る前に何があったのかを思い出す。
(そうだわ。あの扉から島にいけるのよ……! こうしちゃいられないわ)
メイジーはクローゼットの中を覗きながら動きやすい服を探していた。
(ドレスで行ったからのぼせちゃったのかしら。今度は最初から動きやすい服でいけば問題ないはずよ!)
そんな時だった。
扉をノックする音が聞こえて、メイジーはハッとする。
もしエレナだった場合、叱られるのは目に見えたからだ。
慌ててクローゼットを閉めたメイジーはスライディングするようにベッドにダイブするのと同時に扉が開く。
「メイジー様、何をやっておられるのですか?」
「う、海で泳ぐ練習よ……!」
メイジーは腕を動かして足をパタパタと動かした。
ワゴンを引いてきたエレナは訝しんでいたがメイジーの前へ。
ワゴンには消化のよさそうなスープとフルーツ、パンが置かれていた。
メイジーはお腹が空いていたためペロリと完食する。
「おかわりください!」
「まぁ……シェフが喜びますわ」
ここ数日、あまり食事をしていなかったメイジーの食欲にエレナは驚いている。
「体力をつけておかないと、海に流されてしまうもの!」
「まさかすぐに島に行かれるおつもりですか?」
「えぇ、もちろん!」
エレナはその言葉を聞いて、他の侍女にワゴンを運びに料理を取りに向かわせる。
そしてクローゼットの方へと歩いて行くではないか。
メイジーは咄嗟にエレナを止めるように手を伸ばすが……。
「話は皇帝陛下から聞いております。動きやすい軽装に着替えましょうか」
エレナがクローゼットを開けると、メイジーが荒らした後が残っている。
彼女は部屋に入ってきた時のメイジーの行動を逆算して何が起こったのか理解したのだろう。
メイジーが誤魔化すように口笛を吹いていた。
「──具合が悪い時にはちゃんと大人しくしていてくださいませっ!」
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