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四章 最強の皇帝
⑤⑥
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メイジーはエレナに叱られつつ軽装に着替えた。
どうやら昨日の朝から今日の朝まで丸一日、ぐっすりと眠っていたらしい。
(睡眠はしっかりとっていると思うけど……新しい環境で疲れが出たのかしら)
長い髪を結えていると、再び扉がノックする音。
エレナが扉を開くと、そこにはベルーガと彼の後ろには食事をワゴンで運んでいる侍女の姿があった。
「本日は私がメイジー様にお供させていただきます」
「よ、よろしくお願いします」
貼り付けたような笑みを浮かべるベルーガが紳士的で冷静そうだ。
だが、何を考えているのかわからないので、その辺りが直情的な弟二人とはまったく違う。
(まだベルーガさんのことはよくわからないのよね)
おかわりの料理をエレナに怒られない程度に急いでかき込んだメイジーは立ち上がる。
そしてベルーガに連れられて、青い絨毯がひかれている長い廊下を歩いていく。
「今日、ガブリエーレ様は?」
「高官との面談、帝国貴族たちとの会合など予定が詰まっています。お顔を見せなかった間、皆は皇帝陛下を待ち侘びていたのですから」
「そうですか」
メイジーはガブリエーレが島で暮らしといた間、帝国をあけていてよく許されたなと考えていると、いつの間にか部屋の前に到着する。
ベルーガが扉を開けて部屋の中に入る前、気になる発言をする。
「ここは皇帝陛下しか立ち入れない部屋でした。ですが……あなたは特別な存在なのですね」
「……!」
ベルーガが笑っているはずなのに怒っているように見えた。
彼の言葉には明らかに棘がある。
ガブリエーレの周りにいる人たちにとって、メイジーは間違いなく面白くない存在だろう。
崇拝するガブリエーレが、突然現れた魔法すら使えないメイジーを特別扱いをするのだから当然だろう。
だがメイジーにはその理由がなんとなくわかっていた。
直接、彼にも言われた通りだが、ただの暇つぶしではないだろうか。
(この気まぐれはいつまで続くのかしら……)
メイジーはそう思いつつも、ベルーガと一緒に扉をくぐる。
すると目の前にいるムーとぶつかりそうになってしまった。
「ムー! どうしてここに?」
『メイジー、メイジー! 会いたかった』
ムーは嬉しそうにメイジーに抱きついているが、その少し離れた場所にいるドーやデーは手に持っていた貝をポロリと落としてしまった。
そして頭を地に擦り付けて平伏そうとする二人を止めてから、その理由を問いかける。
なんと三人にはメイジーたちがいきなり現れたように見えたらしい。
(つまり……神様のように降臨したように見えたのね)
後ろを振り返ってみると、ベルーガがにこやかに立っているだけで何もない。
メイジーが不思議に思っていると、ベルーガがその疑問に答えてくれた。
「この島からは何も見えませんよ。皇帝陛下は周囲への影響をキチンと考えているのです」
「……なるほど」
メイジーが納得していると、ムーに手を引かれる。
どうやら見せたいものがあるようだ。
『メイジー、こっち!』
ムーと手を繋ぎながら二人の元へ向かうと、そこには貝がたくさんあることに気がつく。
「これは……?」
『メイジー、これ好き』
『貝、色、たくさん』
『集めた。貝、いっぱい』
「三人ともありがとう……っ!」
メイジーのために集めてくれたのだろうか。
感動で涙が溢れそうになるも、今にも網を食い破りそうな貝の勢い身を引いてしまう。
何故なら彼らに噛まれた古傷が痛むからだ。
咄嗟に鼻を押さえると貝はバクバクと口を開いていているではないか。
ゴクリと唾を飲み込みながら、貝を持って皆に挨拶に行こうとすると……。
『神の遣い? メイジーと一緒』
ムーは背後にいるベルーガを見上げながらそう言った。
どうやら昨日の朝から今日の朝まで丸一日、ぐっすりと眠っていたらしい。
(睡眠はしっかりとっていると思うけど……新しい環境で疲れが出たのかしら)
長い髪を結えていると、再び扉がノックする音。
エレナが扉を開くと、そこにはベルーガと彼の後ろには食事をワゴンで運んでいる侍女の姿があった。
「本日は私がメイジー様にお供させていただきます」
「よ、よろしくお願いします」
貼り付けたような笑みを浮かべるベルーガが紳士的で冷静そうだ。
だが、何を考えているのかわからないので、その辺りが直情的な弟二人とはまったく違う。
(まだベルーガさんのことはよくわからないのよね)
おかわりの料理をエレナに怒られない程度に急いでかき込んだメイジーは立ち上がる。
そしてベルーガに連れられて、青い絨毯がひかれている長い廊下を歩いていく。
「今日、ガブリエーレ様は?」
「高官との面談、帝国貴族たちとの会合など予定が詰まっています。お顔を見せなかった間、皆は皇帝陛下を待ち侘びていたのですから」
「そうですか」
メイジーはガブリエーレが島で暮らしといた間、帝国をあけていてよく許されたなと考えていると、いつの間にか部屋の前に到着する。
ベルーガが扉を開けて部屋の中に入る前、気になる発言をする。
「ここは皇帝陛下しか立ち入れない部屋でした。ですが……あなたは特別な存在なのですね」
「……!」
ベルーガが笑っているはずなのに怒っているように見えた。
彼の言葉には明らかに棘がある。
ガブリエーレの周りにいる人たちにとって、メイジーは間違いなく面白くない存在だろう。
崇拝するガブリエーレが、突然現れた魔法すら使えないメイジーを特別扱いをするのだから当然だろう。
だがメイジーにはその理由がなんとなくわかっていた。
直接、彼にも言われた通りだが、ただの暇つぶしではないだろうか。
(この気まぐれはいつまで続くのかしら……)
メイジーはそう思いつつも、ベルーガと一緒に扉をくぐる。
すると目の前にいるムーとぶつかりそうになってしまった。
「ムー! どうしてここに?」
『メイジー、メイジー! 会いたかった』
ムーは嬉しそうにメイジーに抱きついているが、その少し離れた場所にいるドーやデーは手に持っていた貝をポロリと落としてしまった。
そして頭を地に擦り付けて平伏そうとする二人を止めてから、その理由を問いかける。
なんと三人にはメイジーたちがいきなり現れたように見えたらしい。
(つまり……神様のように降臨したように見えたのね)
後ろを振り返ってみると、ベルーガがにこやかに立っているだけで何もない。
メイジーが不思議に思っていると、ベルーガがその疑問に答えてくれた。
「この島からは何も見えませんよ。皇帝陛下は周囲への影響をキチンと考えているのです」
「……なるほど」
メイジーが納得していると、ムーに手を引かれる。
どうやら見せたいものがあるようだ。
『メイジー、こっち!』
ムーと手を繋ぎながら二人の元へ向かうと、そこには貝がたくさんあることに気がつく。
「これは……?」
『メイジー、これ好き』
『貝、色、たくさん』
『集めた。貝、いっぱい』
「三人ともありがとう……っ!」
メイジーのために集めてくれたのだろうか。
感動で涙が溢れそうになるも、今にも網を食い破りそうな貝の勢い身を引いてしまう。
何故なら彼らに噛まれた古傷が痛むからだ。
咄嗟に鼻を押さえると貝はバクバクと口を開いていているではないか。
ゴクリと唾を飲み込みながら、貝を持って皆に挨拶に行こうとすると……。
『神の遣い? メイジーと一緒』
ムーは背後にいるベルーガを見上げながらそう言った。
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