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一章 役立たず王女、島流しにされる
①④
しおりを挟む彼女たちを信頼しようと決めて身を任せていたメイジーは、子どもに手を引かれながら歩いていく。
森を抜けていくと、ゴツゴツとした岩場に繋がっている。
背後には葉っぱに乗った食べ物が並んでいた。
見たことがない食べ物ばかりだが、空腹の今では食べたくて仕方ない。
グルグルと激しく鳴りまくるお腹を押さえながら足を進めていく。
(もしかして、今から昼食を食べたりするのかしら……)
メイジーの前には大きな葉っぱ。そこの上に座るように促されて、ご飯が食べたかったため素直に従う。
(やっと食事が……!)
メイジーが喜びを噛み締めながら正座して待機していた。
次々と周りに置かれていく食べ物らしきもの。
島民たちは背後に下がっていき、次にはまさかの言葉を聞くことになる。
「「「「「「「ダ・ガブリエーレ、ダ・ガブリエーレッ」」」」」」」
「…………え?」
ガブリエーレコールが聞こえると、目の前の岩場からガブリエーレ本人が顔を出す。
メイジーは訳もわからずに彼を見上げていた。
ガブリエーレは不機嫌そうにしている。
『やはりこうなったか』
そう言われて、メイジー固まっていた。
島民たちは頭を下げながら風のような速さで去っていく。
(周りに食べ物、真ん中にわたし。目の前に神様と崇められているガブリエーレ。これってまるで……)
メイジーの髪からハラリハラリとカラフルな花が落ちていくではないか。
ガブリエーレが正座するメイジーの前にしゃがみ込んで、髪に飾ってある赤い花を一つ取る。
『生け贄だとよ』
「…………ですよね」
やはりメイジーはガブリエーレに捧げる生け贄だったらしい。
料理にされるわけではないが、死ぬのは変わらない。
メイジーが落ち込みつつ項垂れていると、ガブリエーレのため息が聞こえた。
『はぁ…………めんどくさ』
メイジーはガブリエーレの声にゆっくりと顔を上げる。
「……ごめんなさい」
そのまま地面に額を擦り付けるようにして頭を下げる。
あれだけ偉そうに『役に立つ』と、言っていたのにこの様である。
言い訳すらできずにメイジーは意気消沈していた。
『ふっ……』
何か言われたのかと思ってメイジーが顔を上げると、ガブリエーレは手で唇を押さえている。
『……ははっ』
ガブリエーレは何故か笑っているではないか。
彼の柔らかい表情にメイジーは驚いていた。
そのまま彼から目が離せないでいると、咳払いしながら元の表情に戻る。
二人の間には気不味い沈黙が流れていた。
「…………その」
『なんだ?』
ガブリエーレと目が合っていたメイジー。
「ここにあるもの少し分けてもらってもいいですか?」
『……あ?』
両隣にある山のように積み上げられた食料。
今にもよだれが口端から滴ってしまいそうだった。
それに空腹で限界だった。
メイジーはギリギリの理性で食べ物に齧り付きたいのを耐えていたのだ。
(もう我慢できない……!)
血走ったメイジーの目で食べ物を見つめるメイジー。
鼻息荒い様子を見て限界を察したのだろう。
ガブリエーレは再びため息を吐いた。
『……好きにしろ』
「ありがとう! いただきますっ」
メイジーはすぐに横にあった丸く固めた塊を手に取る。
そして口元に運んで塊を食べた。
ほんのりと磯の香り。ざらりとした食感に薄い魚の味が口内に広がった。
それを一口、また一口と食べていくうちに自然と涙が流れていく。
「……おいひぃ」
『…………』
鼻水をすすりながらメイジーは塊を噛んで飲み込んだ。
今まで当たり前のようにご飯を食べていた。
けれどこうして極限の空腹まで追い込まれて初めて『当たり前のこと』のありがたみを思い知る。
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