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一章
①⑥ シャーリーside1
しおりを挟む出会った時からディアンヌ・メリーティーが嫌いだった。
シャーリーは比較的裕福な生活をしていた。
自分が幸せだと思い込んでいたけれど、貴族が集まる王立学園へ入学して、その考えが間違っていると気付く。
公爵家と男爵家は、天と地ほどの差があるのだと見せつけられた気がした。
こちらを馬鹿にするような令嬢たちの視線が気に入らない。
しかし、どうすることもできない現実に歯痒い思いを抱えていた。
シャーリーは学園ではいつも自分と同じ男爵家や子爵家の令嬢たちと共にいた。
しかし隣のメリーティー男爵家の長女、ディアンヌはとても穏やかで優しい令嬢だ。
彼女は密かに令息たちからの人気を集めていた。
それに同性の令嬢たちからも好かれていた。
高位貴族とも親しげに接するディアンヌに、シャーリーは影ながら真っ黒な気持ちを抱えていた。
なんとか邪魔をして令息たちをディアンヌから引き離してチャンスを奪ってきたのだ。
(どうしてこんな地味で何の取り柄もない子が、みんなに愛されるのよ。どう見てもわたくしの方が美しいし、可愛いのに……っ!)
少しクセのあるストロベリーブラウンの髪に小動物のようにクリっとした薄ピンクの瞳。
いつも笑顔で人を疑うということを知らない。
馬鹿みたいに素直でお人好し。
シャーリーに嫌味を言われても利用されても、笑って許してしまう。
そんなディアンヌと自分は、全然違う存在なのだと言い聞かせていた。
同じ男爵家出身だからと仲良くしていたが、心の中では彼女のことが大嫌いだった。
しかしシャーリーが最終学年になった時、チャンスが巡ってきた。
カシス男爵領にある鉱山から真っ赤な鉱石が採掘できた。
加工してアクセサリーにしたところ、王都で流行り出したのだ。
父の事業が大成功したことで大金が手に入る。
カシス男爵家は成り上がることに成功した。
なんと一気に伯爵家まで上り詰めることができたのだ。
シャーリーの周りには宝石欲しさに令嬢たちが群がってくる。
上から見下ろす景色は最高だった。
もちろんディアンヌたちとも距離を置いた。
自分があの程度のレベルだと思われたくなかったからだ。
(もうアンタたちなんて用済みなのよ……っ!)
ゴミはゴミ同士、目立たない端の方で仲良くしていればいい。
そう思いながら卒業パーティーでは、見せつけるように豪華なドレスとカシス伯爵領の鉱山で採れたアクセサリーをこれでもかと身につけていた。
今まで友達ごっこをしていたディアンヌたちは地味すぎて会場では見つけられなかった。
帰り際で別れることが、悲しいのか泣きながら抱き合う姿を見て、シャーリーはあまりにも馬鹿馬鹿しくて吹き出すように笑ってしまう。
そしてシャーリーはジェルマン・ラバードという最高の婚約者ができた。
侯爵家の三男ではあるが、とにかく顔がいい。
それだけしか取り柄はないが、隣にいるだけで十分だった。
学園で令嬢たちの中で一番人気の彼をシャーリーは射止めることができたのだ。
シャーリーは最高の気分だった。
しかし上には上がいる。
元男爵令嬢ということもあるが、侯爵家や公爵家の令嬢にはどうしても劣ってしまう。
それがシャーリーには許せない。
父に頼んで豪華なドレスをオーダーして、自分を高めていた。
だが、誰もシャーリーを讃えてはくれない。
群がってくるのはシャーリーと同じ伯爵家かそれ以下の令嬢たちばかり。
(それじゃ意味ないのよ。わたくしはもっと上にいけるはずよ……!)
そして一年も経たないうちにメリーティー男爵領の噂を聞いた。
男爵を叙勲したきっかけとなる地味な特産物、水害で木がダメになってしまったらしい。
(ああ、可哀想に……! あんなしょぼいフルーツなんて、何の価値もないのよ)
その時、シャーリーはとてもいいことを思いつく。
それはメリーティー男爵家を完全に潰せるものだ。
これでディアンヌが二度と社交界に出ることはなくなると思った。
社交界でディアンヌの姿を見ることはないが、名前を聞くだけで不快だ。
(フルーツを全部狩り尽くして、二度と立ち直れないようにしてしまいましょう!)
シャーリーは父に盗賊を雇うように進言して、メリーティー男爵家のフルーツをすべて盗むように指示を出す。
『メリーティー男爵領が手に入る機会よ』と、言うとすぐその気になった。
もう少しでメリーティー男爵領が手に入りそうだと思っていると、ディアンヌから直接シャーリー宛てに手紙が来たのだ。
弟たちのために結婚相手を探して援助してもらいたい。
ドレスを貸して欲しいというものだった。
しぶとく貴族社会で生き残ろうとするディアンヌの行動が腹立しくて仕方ない。
(あんな子が結婚なんてできるわけないじゃない……さっさと落ちぶれなさいよっ!)
そう思ってはいてもディアンヌのあの性格なら、誰かに見初められることもあるかもしれない。
彼女が自分より幸せになり、笑っている姿を想像してしまった。
そうなったらシャーリーのプライドが許さない。
「フフッ……痛い目見せてあげるわ!」
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