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番外編(その後のお話)
新しい道を②(クーシャ)
しおりを挟む街中でパンを作っている店で問題が起きているのだという。
小型から中型の火の精霊が何故かその店に集まってしまい、騒ぎになっているのだそうだ。
その原因を調査して解決せよ、とのことだった。
クーシャは目的の場所に着いて辺りを見回した。
一見すると普通の店のように見える。
扉をノックして中に入ると、ふんわりと美味しそうな匂いが広がっていた。
「……精霊調査団から派遣されました、クーシャです」
「よく来てくださいました……!!」
綺麗に並べられたパンが置いてある奥から出てきたのは栗毛の女性だった。
女性はクーシャの顔を見て安心したように息を吐き出した。
けれど髪の毛がボサボサで涙目の様子を見ると、精霊に何かされた後なのだろうか。
そして厨房の奥からは黒い煙とパンが焼け焦げた匂いがした。
栗毛の女性はクーシャの背後を見て目を輝かせた。
「美人な狐さんですね!とても綺麗……」
「……は?」
「あの、クーシャ様の精霊ですよね?」
「……」
「……?」
「…………ッ!?」
「???」
驚いて言葉を失ってしまった。
契約してから初めて、ルマンが女性の前で姿を見せたのだ。
そんなルマンは、じっと女性を見つめたまま動かない。
その後、周囲に隠れていた小さな精霊を邪魔だと言わんばかりに睨みつけると、小型の精霊達はサッと姿を消した。
「あれ?小さな子達が消えちゃいましたね」
「……小型の精霊が、見えるんですか?」
「えぇ……幼い頃、病気で。その病気が良くなってから見えるようになったんですよ」
「……!」
「クーシャ様は私を助けて下さった方に似ていますね!貴族のお嬢様で一度しか会ったことがないんですけど、金色の髪がとても綺麗な方で……その方がいらっしゃらなかったら私は助かってなかったと、父が言ってたんですよ」
「……そうなんですね」
「あ……すみません!申し遅れました!私はモニカといいます」
モニカは少し寂しそうに笑った。
小型の精霊が見えているようだが、リーベではないようだ。
火の精霊に愛されているようにも見えるが、それにしては様子がおかしい。
それにモニカに聞かなければいけないことがあった。
「失礼を承知でお聞きしますがモニカさんは、男性ですか?」
「……え?」
女嫌いのルマンが姿を見せるということは、もしかしたら、もしかしなくてもルマンのようにモニカは……。
そう思ったクーシャは目を凝らしてモニカを見ていた。
どう見ても女性らしい体型であり、男性にしてはかなり小柄で華奢だ。
けれど万が一ということもあるので有り得ないと思いながらも疑っていた。
「あの……クーシャ様」
「はい」
「私は一応……女です」
「ですよね」
「えっと、もしかして男に見えました……?」
「いいえ、全然見えませんでした」
「???」
モニカは困惑したような表情を浮かべた後、クーシャの言葉を聞いて更に首を傾げている。
そんなモニカにクーシャの精霊、ルマンは女嫌いで普段は女性の前では姿を見せないのだと説明した。
「そんな精霊もいるんですね」
「はい、女性に失礼な事を……申し訳ございません」
「ふふ、構いませんよ」
柔らかい笑顔を浮かべたモニカは、ルマンの前に座り込む。
「あの、お名前は……」
「ルマンです」
「ルマンさん……素敵なお名前ですね!モニカです!よろしくお願いします」
ルマンは迷わずに、モニカに擦り寄った。
そしてモニカも嬉しそうにルマンを撫でている。
(あのルマンが女性に触れた…………?)
そんな姿をみて、クーシャはあんぐりと口を開けたまま動けなくなってしまった。
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