なんでもできるスキル〈ゲームマスター〉を手に入れたけど速攻飽きたので、ヒロインを「俺の考えた最強の主人公」に仕立て上げます

八白 嘘

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026 / その戦斧、あまりに重く(1/2)

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 翌朝、俺とフェリテは連れ立ってダンジョンを訪れていた。
 見送りのアーネも一緒だ。

「よーし、久し振りのダンジョン攻略だ! 腕が鳴るね!」

「今まで何回くらい潜ったんだ?」

「……実を言うと、そんなには。三回くらい」

 本当に駆け出しも駆け出しだった。
 だが、GM目線で言えば俺好みではある。
 俺は成長物語が好きなのだ。

「では、ダンジョンに潜る際の諸注意は必要ありませんね」

「うん、大丈夫」

「忘れ物はありませんか?」

「たぶん!」

「怪我をしたら、治癒薬が尽きる前に帰ってくるんですよ」

「わかってるよー……」

 お母さんか。

「リュータ、魔法の鍵はまだありますか?」

「ああ、大丈夫」

「気を付けてくださいね。リュータのログを読むに、かつてこの街が賑わっていたころのダンジョンより遥かに難度が高いようですから」

「まあな……」

 いきなり数百体の大コウモリに襲われるようなダンジョンだ。
 これで難度が低いと言われても、困る。

「だ、大丈夫かな……」

 フェリテが不安げにこちらを見上げる。

「なるべく守るけど、頼りきりにならないようにな。フェリテ自身が成長しなきゃ意味がないだろ」

「……うん、そうだね。その通りだ」

 俺とフェリテは、あくまで一時的にパーティを組んでいるだけだ。
 昨日のセッションで友人にはなれたと思うが、このまま運命を共にするとは限らない。
 冒険者は、自らの価値を証明し続けることでしか、生きていくことができないのだから。

「じゃ、行ってくるよ」

「行ってきます!」

「ええ、ご無事で」

 フェリテと肩を並べながら、ダンジョンの入口へと向かい──

「──わっ」

 岩と岩とのあいだの砂地に足を取られたフェリテが、転ぶまいとばかりにわたわたと両手をバタつかせた。

「あぶ!」

 慌ててフェリテを支える。
 が、

「え、ちょ、重──」

 フェリテ自身と言うより、背中に背負った戦斧の重みが、ずしりと俺の腰に響いた。

 ──ぐぎ。

「ご」

「のわッ!」

 フェリテに押し倒される形で、背中から地面に倒れ込む。

「わ、その、……ごめん!」

「──…………」

 役得だ、などと言ってはいられない。
 腰から絶望の音が聞こえた気がする。

「大丈夫……?」

 フェリテが立ち上がり、俺に右手を差し出した。
 震える手で、その手を握る。

「ゆ、ゆっくり引っ張ってくれ……」

「うん……」

「私も手伝います」

 駆け寄ってきたアーネが、俺の左手を取る。

「ゆっくり、ゆっくり……」

 上半身が三十センチほど浮いたところで、

 ──ビキッ!

「ウッ」

 大学生のころ一度だけ経験したギックリ腰そのものの痛みが、全身を走り抜けた。

「リュータ、痛みますか?」

「こ、腰が……」

「ああ……」

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 俺を再び寝かせたあと、フェリテが慌てて肩提げ鞄を漁る。

「こ、これ飲んで! 治癒薬!」

 小瓶の蓋をキュポンと開き、俺の口に突っ込む。

「うブッ」

 甘ったるくて苦すっぱい。
 おまけに、やたらとドロドロしていて、ちっとも喉の奥に流れていかない。

「私が治癒呪ちゆじゅを使ってもよかったのですが……」

 アーネが小さく呟き、言葉を継ぐ。

「ともあれ、頑張って飲んでください。不味くとも」

 こくこくと頷き、なんとか飲み下す。
 しばらくすると、腰部に熱が集まっていく感覚があった。

「あ、──ッづ!」

 痛みすら伴う高熱が、激しく患部を焼き焦がす。
 のたうち回りたくなるほどの痛苦。
 それが十秒ほど続いたあと、唐突にピタリと治まった。

「?」

 上体を起こす。
 痛みは嘘のように消えていた。

「……治った?」

 すごいな、治癒薬。
 知識では知っていたけれど、実際に体験すると感動すら覚える。

「よかったー……!」

「ええ、本当に……」

 二人が、ほっと安堵の息を吐く。

「ほんと、ごめん! ごめんなさい! あたしのドジで……」

「いや、今のは俺の腰も軟弱だった気が──」

「フェリテ」

 俺の言葉を遮り、アーネがフェリテを睨む。

「ひゃい」

「気を付けて」

「はひ……」

 ああ、フェリテが小柄なアーネより小さく見える。
 俺は、万が一に備えて恐る恐る立ち上がり、そっと背中の砂を払った。
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