なんでもできるスキル〈ゲームマスター〉を手に入れたけど速攻飽きたので、ヒロインを「俺の考えた最強の主人公」に仕立て上げます

八白 嘘

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070 / 大コウモリとの決着

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 フェリテの作戦は至極単純だ。
 俺以外の六名が数百メートル先を歩き、大コウモリを釣る。
 大コウモリが単体あるいは数体で現れた場合はそのまま叩き、群れで現れたら俺に合図を送り引き返す。
 合図と共に前進する俺と合流したところで、極大火炎呪を用いて群れを消し飛ばす。
 あとは、第五層を虱潰しに探し、見つけ次第残った魔物を殲滅していくだけだ。
 この作戦が上手く行けば、きっと、フェリテの成功体験へと繋がるだろう。
 成功体験が重なれば、自信がつく。
 それは、フェリテが主人公として成長するのに必要なことだ。

「……GMと言うより親みたいだな」

 思わず、そう独り言つ。
 完全に保護者目線になっていた。
 しかし──

「寂しい……」

 数百メートル先で、人工精霊の明かりがほのかに揺れている。
 あの下では、フェリテとグラナダ探窟隊の面々が、楽しげに談笑しながら歩いているのだろう。
 大コウモリたちに位置を知らせるため、なるべく音を出して歩いたほうがいいとナナセから提案があったのだ。
 フェリテとパーティを組んでからは感じていなかった孤独感が、俺の心を塗り潰していく。

「……ほんの半月前まで、ここを一人で探索してたのか」

 もう、一人には戻れない。
 フェリテという存在にどれほど励まされていたか、嫌と言うほど思い知らされた。
 そのまま、二時間ほど歩いた頃のことだ。

「──リュ……タ、お──がいッ!」

 フェリテの声が洞窟内に反響し、異音となって耳に届いた。
 なんとか聞き取れた内容は、事前に打ち合わせた通りのものだ。
 フェリテの狙いは正しかったらしい。

「ッ!」

 無言で駆け出す。
 大コウモリたちが俺の存在に気付けば、寸前で逃げの手を打たれる可能性があるからだ。
 時折聞こえる轟音は、ルクレツィアの水撃呪だろう。
 足場の悪い洞窟内を一分ほども走っていると、やがて、逆走してくる六人の姿が見えてきた。

「リュータ!」

「ああ!」

 俺の存在に気付いてか、無数の大コウモリが慌てて引き返す。
 だが、もう遅い。
 フェリテとハイタッチを交わしたあと、六人を背にかばうように立ち、脳内に命令文コマンドを走らせた。
 効率無視の最大出力。
 最後尾の大コウモリにも届くよう、効果範囲は未設定undefined
 自然に減衰するまで、どこまでも広がり続けるはずだ。
 詠唱を破棄しているため、呪文を口にする必要はない。
 だが、魔力を放つためには、何らかのきっかけがあったほうが都合がいい。
 衝動のままに、俺は咆哮した。

「しつッこいんだよ、お前らアアァッ!」

 その瞬間、
 魔力が、
 世界を変革した。

 目の前の空間、そのすべてが、炎熱へと置き換わる。
 主通路が青白い光に満たされ、大コウモリたちの姿が掻き消える。
 以前とは比較にならないほどの熱量が暴れ狂い、視界の限りの岩肌が融解していくのが見えた。
 火と呼ぶにはあまりに凄絶な白炎が掻き消え、残ったのは、溶岩と化し自ら光熱を放つ岩石ばかりだった。

「──…………」
「──……」
「──………………」

 六者六様、それぞれが、溶岩の海と化した洞窟を驚愕の表情で見つめている。

「あ──……」

 不味い。
 魔力がほとんど空だ。
 体力が魔力へと自動的に変換され、見る間に憔悴していく。
 体から力が抜けていき、俺はその場に膝をついた。

「──リュータ!」

 フェリテが俺を支える。

「ぜ、全力で、やり過ぎた……」

「今、生命薬飲ませるから!」

 フェリテが背負い袋を下ろし、以前宝箱から入手した生命薬を取り出す。
 小瓶の蓋を開き、その中身を俺の口へと優しく注ぎ込んだ。

「まずいかもしれないけど……」

 黒と紫、金色の、マーブル模様の液体が、喉を通り抜けていく。
 意外なことに不味くはなかった。
 ほんのりフルーティで、ヨーグルトのような酸味もあり、むしろ美味の範疇に入るくらいだ。
 生命薬が喉を通り過ぎた瞬間、空っぽだったはずの魔力がみるみるうちに満たされていくののを感じた。
 目減りしていた体力も同様だ。
 足場の悪い洞窟を二百メートルほども走破した疲れが、気付けば消えてなくなっていた。
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