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074 / 長髪と禿頭(1/4)
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フェリテ、ルクレツィアと共に、竜とパイプ亭の玄関扉をくぐる。
広々としたホールの一角に冒険者たちがたむろしていた。
この一週間で、数組のパーティが訪れた。
街の復興へ向けて着実に動き始めているのだ。
「さて、アーネは──」
ホールを見回すと、両腕の上にまで器用に皿を乗せたアーネが、どこかのテーブルへと向かうところだった。
「……忙しそうだな」
「お昼どきだもんね。お客さんも増えたし、すこし大変そう」
「皿を返すのは後にしようか」
カウンターに置いておけばいいのだが、やはり直接礼を言いたい。
俺は、アーネの手が空くのを待つことにした。
「では、わたくしは部屋に戻らせていただきますわね。後ほど自分でも言うつもりですが、ルクレツィアが感謝していたとお伝えいただければ」
「うん、わかったー」
「失礼いたします」
ルクレツィアが会釈し、二階へ通ずる階段を上がっていく。
俺たちは、その背中を見送ると、いつもの席へと腰掛けた。
「……アーネ、大丈夫かな。今はまだなんとかなってるけど、これから冒険者が増え続けたら、確実に手が回らなくなるだろ」
そもそも、アーネは神官で、あのダンジョンの管理者なのだ。
ウェイトレスを兼任している現状がおかしいとも言える。
「来週から、昔従業員だった人たちが、交代で入ってくれるみたいだよ。マスターが頼み込んだら、喜んでヘルプに来てくれることになったんだって」
「ああ、それはいいな」
このままではアーネが過労死してしまうところだ。
経験者は語る。
オーバーワークは、つらい。
「……でも、逆に言えば、来週までは手が空かないってことだよな。今日やる予定だったセッション、どうしようか」
セッションはリアル優先だ。
俺が言うのもなんだが、無理をしてまでやるものではない。
「でも、アーネ、絶対やるって言うよ。楽しみにしてたもん」
「うーん……」
無理のない進行をするためには、どうすればいいだろうか。
「一度に進める予定だったものを分割して、短時間で──」
そんなことを考えていたとき、切羽詰まったようなアーネの声がホールにこだました。
「──リュータ! こ、こちらへ!」
思わず立ち上がり、声の方向へと顔を向ける。
見覚えのある冒険者に、アーネが腕を掴まれていた。
「ッ!」
アーネの元へと駆け寄る。
そして、アーネの腕を掴んだ禿頭の大男を睨みつけた。
「離せよ」
「……あァん?」
見れば、真っ昼間から顔が赤い。
随分と酒が入っているようだった。
「離せ、と言ってる」
テーブルについたまま枝豆を貪っていた長髪の男性が、嘲るように口を開いた。
「……お前、クドウだったっけ。吟遊詩人の」
「ああ」
昨夜、俺を勧誘した六人パーティのうちの二人だ。
リーダーは礼儀正しく思えたのだが、パーティメンバーがこれでは、加入しなくて正解である。
「──ッたく、手間ァ掛けさせやがってよ。こちとら吟遊詩人がいなきゃダンジョンにも潜れやしねェんだ。おい、こいつがうちに入るって言うまで、神官の腕離すんじゃねェぞ」
「おーう」
大男が、アーネの腕を乱暴にひねる。
「いた……!」
──ぶち。
脳内で、何かが切れた音がした。
広々としたホールの一角に冒険者たちがたむろしていた。
この一週間で、数組のパーティが訪れた。
街の復興へ向けて着実に動き始めているのだ。
「さて、アーネは──」
ホールを見回すと、両腕の上にまで器用に皿を乗せたアーネが、どこかのテーブルへと向かうところだった。
「……忙しそうだな」
「お昼どきだもんね。お客さんも増えたし、すこし大変そう」
「皿を返すのは後にしようか」
カウンターに置いておけばいいのだが、やはり直接礼を言いたい。
俺は、アーネの手が空くのを待つことにした。
「では、わたくしは部屋に戻らせていただきますわね。後ほど自分でも言うつもりですが、ルクレツィアが感謝していたとお伝えいただければ」
「うん、わかったー」
「失礼いたします」
ルクレツィアが会釈し、二階へ通ずる階段を上がっていく。
俺たちは、その背中を見送ると、いつもの席へと腰掛けた。
「……アーネ、大丈夫かな。今はまだなんとかなってるけど、これから冒険者が増え続けたら、確実に手が回らなくなるだろ」
そもそも、アーネは神官で、あのダンジョンの管理者なのだ。
ウェイトレスを兼任している現状がおかしいとも言える。
「来週から、昔従業員だった人たちが、交代で入ってくれるみたいだよ。マスターが頼み込んだら、喜んでヘルプに来てくれることになったんだって」
「ああ、それはいいな」
このままではアーネが過労死してしまうところだ。
経験者は語る。
オーバーワークは、つらい。
「……でも、逆に言えば、来週までは手が空かないってことだよな。今日やる予定だったセッション、どうしようか」
セッションはリアル優先だ。
俺が言うのもなんだが、無理をしてまでやるものではない。
「でも、アーネ、絶対やるって言うよ。楽しみにしてたもん」
「うーん……」
無理のない進行をするためには、どうすればいいだろうか。
「一度に進める予定だったものを分割して、短時間で──」
そんなことを考えていたとき、切羽詰まったようなアーネの声がホールにこだました。
「──リュータ! こ、こちらへ!」
思わず立ち上がり、声の方向へと顔を向ける。
見覚えのある冒険者に、アーネが腕を掴まれていた。
「ッ!」
アーネの元へと駆け寄る。
そして、アーネの腕を掴んだ禿頭の大男を睨みつけた。
「離せよ」
「……あァん?」
見れば、真っ昼間から顔が赤い。
随分と酒が入っているようだった。
「離せ、と言ってる」
テーブルについたまま枝豆を貪っていた長髪の男性が、嘲るように口を開いた。
「……お前、クドウだったっけ。吟遊詩人の」
「ああ」
昨夜、俺を勧誘した六人パーティのうちの二人だ。
リーダーは礼儀正しく思えたのだが、パーティメンバーがこれでは、加入しなくて正解である。
「──ッたく、手間ァ掛けさせやがってよ。こちとら吟遊詩人がいなきゃダンジョンにも潜れやしねェんだ。おい、こいつがうちに入るって言うまで、神官の腕離すんじゃねェぞ」
「おーう」
大男が、アーネの腕を乱暴にひねる。
「いた……!」
──ぶち。
脳内で、何かが切れた音がした。
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