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第七話
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数日後,遙香は退院した。数日前の退院の時は陽人と2人きりだったが今回は
北海道から戻ってきた和弘と裕子も一緒だ。さらにあの時は,陽人が運転をして遙香が助手席に座り荷物を後部座席に置いていたが,今回は和弘が運転し裕子が助手席に座り、陽人と遙香が後部座席に座り、陽人は子供時代に戻ったような感じがした。まだ遙香が小学生で陽人が高校生だった頃、家族4人でいろんなところに行った。しかし,遙香が中学に上がって高校受験の時期になると遙香は勉強,陽人は大学の勉強で忙しくなり,家族全員で出かけることはすっかりなくなってしまった。そのため家族全員で車に乗るのはおよそ4年ぶりなのだ。
「なんか、この風景見るの久しぶりだなぁ。前には父さんと母さんがいて横には遙香がいる。」と感慨深そうに口を開いた。「そうね。私,この車に最後に乗ったの結構前だからねー。」と裕子が返した。すると思い出したように「明日から,休学してた大学生ライフを再開させるから。卒業時期は同級生より1年ずれちゃうけど。絶対に卒業して看護師になってみせるから。」と大学に通うことを報告した。「遙香なら大丈夫だ。だって陽人が医者になれたんだ。「あの陽人が」だぞ!お前になれないわけがない。」と和弘は陽人を貶して遙香を煽てた。それを聞いた陽人は「この人たちは僕を貶すことが好きなのか?」と怪訝そうな顔をした。
しかし,遙香は「お兄ちゃんは医者になれたのは必然だったと思う。だって,お兄ちゃんは昔から誰かのために何かをしたい。何か役に立てることはないのか。って考えてたから。でも,私も誰かの役に立ちたいって思ってるし,その気持ちはお兄ちゃんには負けないくらいある。だから、絶対に看護師になってみせる!」と宣言した。
翌日,陽人は数日ぶりに出勤した。
手には前日に喜美夜と武雄から送られてきた北海道の土産物が入った袋を持っていた。スタッフステーションに着くと同僚の医師が迎えてくれた。「春部先生。
あなたが休んでいた間,結構大変だったんですから,休んでた分しっかりと働いてもらいますよ。」と早瀬がからかった。「わかってるよ。そんなことより皆さん,お土産を持ってきたので今から配っていきます。」と袋からお土産を出して同僚の医者そしてナース1人1人に渡した。すると1つ残ったので「その1個はどうするんですか?」と羽田が聞くと「高嶋先生にあとで私にいきます。妹がお世話になったので。」と袋に入れようとした時,「今渡してくれていいんだけどな」と高嶋の声が後ろから聞こえた。
陽人が振り向くとすでにスタッフステーションに足を踏み入れていた。「た、高嶋先生!いつの間にいらしてたんですか?」と驚く陽人を余所見に「さっき,君がお土産配ってる時に来た。俺にはくれないのかな~。って思ってたんだけど
くれるって聞いて良かったよ。」と言いながら高嶋は手を出した。目は早くくれと訴えていたので陽人は袋から再びお土産を出して高嶋に手渡した。高嶋はもらったお土産を持って「サンキュー。遙香ちゃん無事に退院できて良かったな。
んじゃ!」と陽人の肩を叩いて去っていった。高嶋の去り際を見届けていた羽田は「カッコいい!」とボソッとつぶやいて誰にも聞かれていないと思っていたが,顔を上げると隣にいた早瀬に聞かれていた。「羽田さん。もしかして高嶋先生のこと好きなんですか?」と意外そうな顔をして聞いた。「え,あ,違う違う!そういう下心はないの!ただ医者としてカッコいいな~。ってだけ。」と懸命に弁解した。さらに,2人の会話が周りにも聞かれていたためスタッフステーションは一時騒然とした。今度は「違います!」と大声で羽田は弁明した。
その頃遙香は,久しぶりに大学に行った。講義室に入ると高校からの親友である渡辺歩実(わたなべ あゆみ)が待っていた。「遙香!久しぶり。もう大丈夫なの?」「うん。もう大丈夫。心配かけてごめんね。」「でも,今日から一緒に講義を受けられて嬉しい。一緒に頑張ろうね。」遙香は渡辺にどれだけ迷惑をかけただろうかと不安になったが,特に干渉されなかったので少しホッとした。
1日が終わって遙香が家に帰ってくるとすぐにリビングのソファに横になり「疲れた~。動けない~。」とジタバタしながら叫んだ。「まぁ,しばらく休んでたからしょうがないんじゃない?」
と裕子が優しく声をかけると「医療の現場はずっと忙しい。早くなれた方がいいぞ。」と陽人が釘を刺した。
「たぶんこんなに疲れるのは今週くらいだから。ご心配なく~!」と遙香は言い捨てると部屋に戻っていった。
それから1週間は毎日同じような行動をしていたが,それ以降になると全く弱音を吐かなくなった。それを見て「強くなったな。」と陽人は感心した。
それから時は流れて4年後。
「本日付でこちらの病院に配属となりました。春部遙香と申します。よろしくお願いします。一刻も早く皆さんの役に立てるよう精一杯頑張ります。よろしくお願いいたします。」と自己紹介をした。
遙香は陽人と同じ病院の救命救急科に配属されたのだ。
するとそこへ救急車が到着するという一報が入ったので全員初療室へ走ったので遙香も向かおうとしたら陽人に「お前は僕と一緒に来い。」と言われたのでついていくと外に出た。何をするのかと聞くと「すぐにわかる。」と返された。
するとそこへ救急車が到着し,ハッチが開いた。陽人は救急車に駆け寄り患者が乗ったストレッチャーに手をかけて病院内に運んだ。遙香もストレッチャーに手をかけて陽人と一緒に運んでいった。
無事に患者を救ったあと、遙香は陽人が患者と向き合う姿を見て「カッコいい」と思いつつ、このままじゃダメだと思いを新たにして仕事を全うしていくのである。
北海道から戻ってきた和弘と裕子も一緒だ。さらにあの時は,陽人が運転をして遙香が助手席に座り荷物を後部座席に置いていたが,今回は和弘が運転し裕子が助手席に座り、陽人と遙香が後部座席に座り、陽人は子供時代に戻ったような感じがした。まだ遙香が小学生で陽人が高校生だった頃、家族4人でいろんなところに行った。しかし,遙香が中学に上がって高校受験の時期になると遙香は勉強,陽人は大学の勉強で忙しくなり,家族全員で出かけることはすっかりなくなってしまった。そのため家族全員で車に乗るのはおよそ4年ぶりなのだ。
「なんか、この風景見るの久しぶりだなぁ。前には父さんと母さんがいて横には遙香がいる。」と感慨深そうに口を開いた。「そうね。私,この車に最後に乗ったの結構前だからねー。」と裕子が返した。すると思い出したように「明日から,休学してた大学生ライフを再開させるから。卒業時期は同級生より1年ずれちゃうけど。絶対に卒業して看護師になってみせるから。」と大学に通うことを報告した。「遙香なら大丈夫だ。だって陽人が医者になれたんだ。「あの陽人が」だぞ!お前になれないわけがない。」と和弘は陽人を貶して遙香を煽てた。それを聞いた陽人は「この人たちは僕を貶すことが好きなのか?」と怪訝そうな顔をした。
しかし,遙香は「お兄ちゃんは医者になれたのは必然だったと思う。だって,お兄ちゃんは昔から誰かのために何かをしたい。何か役に立てることはないのか。って考えてたから。でも,私も誰かの役に立ちたいって思ってるし,その気持ちはお兄ちゃんには負けないくらいある。だから、絶対に看護師になってみせる!」と宣言した。
翌日,陽人は数日ぶりに出勤した。
手には前日に喜美夜と武雄から送られてきた北海道の土産物が入った袋を持っていた。スタッフステーションに着くと同僚の医師が迎えてくれた。「春部先生。
あなたが休んでいた間,結構大変だったんですから,休んでた分しっかりと働いてもらいますよ。」と早瀬がからかった。「わかってるよ。そんなことより皆さん,お土産を持ってきたので今から配っていきます。」と袋からお土産を出して同僚の医者そしてナース1人1人に渡した。すると1つ残ったので「その1個はどうするんですか?」と羽田が聞くと「高嶋先生にあとで私にいきます。妹がお世話になったので。」と袋に入れようとした時,「今渡してくれていいんだけどな」と高嶋の声が後ろから聞こえた。
陽人が振り向くとすでにスタッフステーションに足を踏み入れていた。「た、高嶋先生!いつの間にいらしてたんですか?」と驚く陽人を余所見に「さっき,君がお土産配ってる時に来た。俺にはくれないのかな~。って思ってたんだけど
くれるって聞いて良かったよ。」と言いながら高嶋は手を出した。目は早くくれと訴えていたので陽人は袋から再びお土産を出して高嶋に手渡した。高嶋はもらったお土産を持って「サンキュー。遙香ちゃん無事に退院できて良かったな。
んじゃ!」と陽人の肩を叩いて去っていった。高嶋の去り際を見届けていた羽田は「カッコいい!」とボソッとつぶやいて誰にも聞かれていないと思っていたが,顔を上げると隣にいた早瀬に聞かれていた。「羽田さん。もしかして高嶋先生のこと好きなんですか?」と意外そうな顔をして聞いた。「え,あ,違う違う!そういう下心はないの!ただ医者としてカッコいいな~。ってだけ。」と懸命に弁解した。さらに,2人の会話が周りにも聞かれていたためスタッフステーションは一時騒然とした。今度は「違います!」と大声で羽田は弁明した。
その頃遙香は,久しぶりに大学に行った。講義室に入ると高校からの親友である渡辺歩実(わたなべ あゆみ)が待っていた。「遙香!久しぶり。もう大丈夫なの?」「うん。もう大丈夫。心配かけてごめんね。」「でも,今日から一緒に講義を受けられて嬉しい。一緒に頑張ろうね。」遙香は渡辺にどれだけ迷惑をかけただろうかと不安になったが,特に干渉されなかったので少しホッとした。
1日が終わって遙香が家に帰ってくるとすぐにリビングのソファに横になり「疲れた~。動けない~。」とジタバタしながら叫んだ。「まぁ,しばらく休んでたからしょうがないんじゃない?」
と裕子が優しく声をかけると「医療の現場はずっと忙しい。早くなれた方がいいぞ。」と陽人が釘を刺した。
「たぶんこんなに疲れるのは今週くらいだから。ご心配なく~!」と遙香は言い捨てると部屋に戻っていった。
それから1週間は毎日同じような行動をしていたが,それ以降になると全く弱音を吐かなくなった。それを見て「強くなったな。」と陽人は感心した。
それから時は流れて4年後。
「本日付でこちらの病院に配属となりました。春部遙香と申します。よろしくお願いします。一刻も早く皆さんの役に立てるよう精一杯頑張ります。よろしくお願いいたします。」と自己紹介をした。
遙香は陽人と同じ病院の救命救急科に配属されたのだ。
するとそこへ救急車が到着するという一報が入ったので全員初療室へ走ったので遙香も向かおうとしたら陽人に「お前は僕と一緒に来い。」と言われたのでついていくと外に出た。何をするのかと聞くと「すぐにわかる。」と返された。
するとそこへ救急車が到着し,ハッチが開いた。陽人は救急車に駆け寄り患者が乗ったストレッチャーに手をかけて病院内に運んだ。遙香もストレッチャーに手をかけて陽人と一緒に運んでいった。
無事に患者を救ったあと、遙香は陽人が患者と向き合う姿を見て「カッコいい」と思いつつ、このままじゃダメだと思いを新たにして仕事を全うしていくのである。
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