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第9章 物語は綻びる
16 ロジェロ達、ブルガリアに加勢する
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ほんの一時間前は、膠着状態だった東ローマ軍とブルガリア軍の戦い。
しかしその均衡はレオ皇太子の奇襲と、彼の率いる獰猛な親衛隊ヴァリャーギによって打ち破られた。
総大将たるブルガリア王も討ち取られ、ブルガリア軍は総崩れとなり――
「バラバラに逃げるな! 踏み止まれッ!
我らが王は未だ健在なり! 王自ら殿を務める故、規律正しく退却せよ!」
不意に朗々たる声がブルガリア軍の一角から上がり……何とそこには、威風堂々と馬に跨ったブルガリア王の姿が!
(馬鹿な……ブルガリア王ヴァトランは、たった今我が軍が討ち取ったはず)
さしものレオ――綺織浩介も、予想外の事態に気色ばんだ。
『どういう事だ……? Furioso! 今何が起こっている? 答えろッ』
綺織は苛立って、本の悪魔に念話で語りかけた。
すると彼の背後から、見えざる影の声がする。
『原典だと、ロジェロが一角獣の騎士として、ブルガリア軍を助ける場面だけど。
事情が随分変わっちゃったねェ? キミが皇帝親衛隊なんて揃えて、ブルガリア軍を必要以上に追い詰めたのが仇になったんじゃないかなァ』
本の悪魔Furiosoはお道化た調子で答えた。
よく見ればブルガリア王の健在を謳った一団の中心に、見知った顔があった。
(アレは……麗奈姉さん!?)
綺織の実の姉である錦野麗奈。契丹の王女アンジェリカに宿る魂の名である。
そう考えると合点がいく。アンジェリカの魔術によって、死んだ王の姿を真似て身代わりとなったのだ。
**********
「先ほど討たれたのは影武者だ! ブルガリア王ヴァトランここにあり!
精強なるブルガール兵よ! 王と共に今一度奮闘せよ! 一人でも多くの同胞の命を救うのだッ!」
新たなブルガリア王の正体は、ロジェロ――黒崎八式である。
彼らがベオグラードに到着した時、すでに町は戦の真っ只中にあり、レオの奇襲によってブルガリア軍は壊滅の憂き目にあった。
(ただオレが救援に行くだけじゃ、到底覆せない劣勢になってやがった……
仕方なく、アンジェリカの機転で大芝居を打つ羽目になっちまったが。
戦えないアストルフォやアンジェリカ、メドロまで巻き込んじまうとは……!)
「今一度、奮起せよ。誇り高きブルガールの民よ!」
朗々たる声を上げたのは、王の副官に扮するアストルフォである。
「見よ。我が王の窮地を救うべく、麗しき妻君も危険を顧みず戦場に駆けつけ、王に鬼神の力を与えるべく祝福する!」
ロジェロ扮するブルガリア王の隣に立つ王妃――アンジェリカの扮装である。
彼女は華美な衣装を纏い、王の乗る馬に飛び移ると……そのまま唇を重ねた。
「…………ッ!?」この事態に面食らったのは、他ならぬ黒崎自身であった。
《お、おいアンジェリカ……なんだこの演出! 聞いてねえぞッ!?》
《つべこべ言わない! 敗走しかかってる軍を鼓舞するのよ? これぐらいの寸劇は必要よ。
この間アストルフォやメリッサと一緒に、一生懸命考えたんだから!》
赤面しつつ抗議しかけた黒崎を、アンジェリカは『仕草』で黙らせた。
見れば傍らにいるメドロが、この世の終わりのような絶望の表情を浮かべつつも、必死に堪えている。
実力も心許なく、容姿も凡庸な彼では王の役は務まらないと判断され、泣く泣く従者役をあてがわれているのだった。
**********
一方、ロジェロ達の現在地からやや離れた東ローマ軍の陣中では。
「……………………何、今の」
クレルモン家の一族とともに、戦場の推移を見ていたブラダマンテ(司藤アイ)から、幽鬼めいた声が漏れていた。
綺織浩介が錦野麗奈の存在を見抜いたように――アイもまた、ブルガリア王を名乗った黒崎の顔を見抜いていた。
そして今しがた起こった、接吻の演出も。
アイの心中で、何故だか説明のつかないモヤモヤした苛立ちが湧き起こりつつあった。
**********
「何をしている? 精強にして栄光あるローマの軍よ!
橋頭堡は完成した! あの王を名乗る愚か者どもを切り刻めィ!」
東ローマ軍の中央軍を率いる将軍の一人が、渡河した兵員を再編し、ロジェロ達に向けて突撃させた。
馬は渡せなかったものの、即座に重装歩兵として陣形を整えた軍勢は、重装騎兵に劣らぬ威圧感を以て殺到する!
敗残兵を叱咤激励して奮い立たせたものの、ロジェロ達は寡兵で、戦える人員も乏しい。
しかしそんな中――歴戦の東ローマ兵を相手に大立ち回りを敢行する勇猛な騎士が現れた。
「王の愛するブルガリアの民には、指一本触れさせんぞッ!」
不死鳥の意匠を凝らした兜をかぶった騎士――インド王女マルフィサは嬉しそうに雄叫びを上げ、奮戦する。
彼女は黒き魔物の巨馬アルファナに跨り、美しい紋様の長槍を駆使して、迫り来る歩兵を薙ぎ払っていた。
(アフリカ大王アグラマンより譲り受けた、シリア製の槍……素晴らしい切れ味だ。
しかもこれだけ激しく突きまくっているのに、刃こぼれすらしない。末恐ろしい業物だな……!)
ランペドゥーサ島の決闘に勝利した戦利品として得たアグラマンの槍。かの有名なダマスカス鋼を用い鍛え上げられた逸品である。
そして殿軍として、最前線で奮戦するロジェロにも重装歩兵は迫り来る。
ロジェロは魔剣ベリサルダを振るい勇戦するも、精強なローマ兵は数を頼みに両刃剣を突き出してくる。
だがそのことごとくは、ロジェロの着ている鎧によって弾かれていた。
「なッ…………!?」
「生憎だが、その程度の武器じゃオレの鎧を貫く事はできねェぜッ!」
黒崎の鎧は、鎖帷子の上に胸装甲を重ねたものだ。
これまたアグラマン大王からの戦利品。かつてタタール王マンドリカルドが入手した、トロイの英雄ヘクトルの鎧であり――尋常ならぬ頑強さを誇っていた。
(大王の装備、よもやこんな場面で役に立つとはな……!
この調子で行けば、ブルガリア軍を全滅させる事なく逃がす事ができるッ)
ロジェロやマルフィサだけではない。
兵をまとめ上げ、的確に撤退の布陣を指揮するアストルフォ。
王妃扮するアンジェリカを守る為、危なっかしくも大胆に奮闘するメドロ。
「おおお……我らが王に、本当に鬼神の加護が宿っておられるッ」
「呆けている場合ではない。ワシらも戦うぞ! 王をお守りせよッ!」
5人の死に物狂いの戦いぶりに勇気づけられたのか、一時は潰走しかかっていたブルガリア兵たちも再び戦意を取り戻し、果敢に反撃・迎撃するのだった。
しかしその均衡はレオ皇太子の奇襲と、彼の率いる獰猛な親衛隊ヴァリャーギによって打ち破られた。
総大将たるブルガリア王も討ち取られ、ブルガリア軍は総崩れとなり――
「バラバラに逃げるな! 踏み止まれッ!
我らが王は未だ健在なり! 王自ら殿を務める故、規律正しく退却せよ!」
不意に朗々たる声がブルガリア軍の一角から上がり……何とそこには、威風堂々と馬に跨ったブルガリア王の姿が!
(馬鹿な……ブルガリア王ヴァトランは、たった今我が軍が討ち取ったはず)
さしものレオ――綺織浩介も、予想外の事態に気色ばんだ。
『どういう事だ……? Furioso! 今何が起こっている? 答えろッ』
綺織は苛立って、本の悪魔に念話で語りかけた。
すると彼の背後から、見えざる影の声がする。
『原典だと、ロジェロが一角獣の騎士として、ブルガリア軍を助ける場面だけど。
事情が随分変わっちゃったねェ? キミが皇帝親衛隊なんて揃えて、ブルガリア軍を必要以上に追い詰めたのが仇になったんじゃないかなァ』
本の悪魔Furiosoはお道化た調子で答えた。
よく見ればブルガリア王の健在を謳った一団の中心に、見知った顔があった。
(アレは……麗奈姉さん!?)
綺織の実の姉である錦野麗奈。契丹の王女アンジェリカに宿る魂の名である。
そう考えると合点がいく。アンジェリカの魔術によって、死んだ王の姿を真似て身代わりとなったのだ。
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「先ほど討たれたのは影武者だ! ブルガリア王ヴァトランここにあり!
精強なるブルガール兵よ! 王と共に今一度奮闘せよ! 一人でも多くの同胞の命を救うのだッ!」
新たなブルガリア王の正体は、ロジェロ――黒崎八式である。
彼らがベオグラードに到着した時、すでに町は戦の真っ只中にあり、レオの奇襲によってブルガリア軍は壊滅の憂き目にあった。
(ただオレが救援に行くだけじゃ、到底覆せない劣勢になってやがった……
仕方なく、アンジェリカの機転で大芝居を打つ羽目になっちまったが。
戦えないアストルフォやアンジェリカ、メドロまで巻き込んじまうとは……!)
「今一度、奮起せよ。誇り高きブルガールの民よ!」
朗々たる声を上げたのは、王の副官に扮するアストルフォである。
「見よ。我が王の窮地を救うべく、麗しき妻君も危険を顧みず戦場に駆けつけ、王に鬼神の力を与えるべく祝福する!」
ロジェロ扮するブルガリア王の隣に立つ王妃――アンジェリカの扮装である。
彼女は華美な衣装を纏い、王の乗る馬に飛び移ると……そのまま唇を重ねた。
「…………ッ!?」この事態に面食らったのは、他ならぬ黒崎自身であった。
《お、おいアンジェリカ……なんだこの演出! 聞いてねえぞッ!?》
《つべこべ言わない! 敗走しかかってる軍を鼓舞するのよ? これぐらいの寸劇は必要よ。
この間アストルフォやメリッサと一緒に、一生懸命考えたんだから!》
赤面しつつ抗議しかけた黒崎を、アンジェリカは『仕草』で黙らせた。
見れば傍らにいるメドロが、この世の終わりのような絶望の表情を浮かべつつも、必死に堪えている。
実力も心許なく、容姿も凡庸な彼では王の役は務まらないと判断され、泣く泣く従者役をあてがわれているのだった。
**********
一方、ロジェロ達の現在地からやや離れた東ローマ軍の陣中では。
「……………………何、今の」
クレルモン家の一族とともに、戦場の推移を見ていたブラダマンテ(司藤アイ)から、幽鬼めいた声が漏れていた。
綺織浩介が錦野麗奈の存在を見抜いたように――アイもまた、ブルガリア王を名乗った黒崎の顔を見抜いていた。
そして今しがた起こった、接吻の演出も。
アイの心中で、何故だか説明のつかないモヤモヤした苛立ちが湧き起こりつつあった。
**********
「何をしている? 精強にして栄光あるローマの軍よ!
橋頭堡は完成した! あの王を名乗る愚か者どもを切り刻めィ!」
東ローマ軍の中央軍を率いる将軍の一人が、渡河した兵員を再編し、ロジェロ達に向けて突撃させた。
馬は渡せなかったものの、即座に重装歩兵として陣形を整えた軍勢は、重装騎兵に劣らぬ威圧感を以て殺到する!
敗残兵を叱咤激励して奮い立たせたものの、ロジェロ達は寡兵で、戦える人員も乏しい。
しかしそんな中――歴戦の東ローマ兵を相手に大立ち回りを敢行する勇猛な騎士が現れた。
「王の愛するブルガリアの民には、指一本触れさせんぞッ!」
不死鳥の意匠を凝らした兜をかぶった騎士――インド王女マルフィサは嬉しそうに雄叫びを上げ、奮戦する。
彼女は黒き魔物の巨馬アルファナに跨り、美しい紋様の長槍を駆使して、迫り来る歩兵を薙ぎ払っていた。
(アフリカ大王アグラマンより譲り受けた、シリア製の槍……素晴らしい切れ味だ。
しかもこれだけ激しく突きまくっているのに、刃こぼれすらしない。末恐ろしい業物だな……!)
ランペドゥーサ島の決闘に勝利した戦利品として得たアグラマンの槍。かの有名なダマスカス鋼を用い鍛え上げられた逸品である。
そして殿軍として、最前線で奮戦するロジェロにも重装歩兵は迫り来る。
ロジェロは魔剣ベリサルダを振るい勇戦するも、精強なローマ兵は数を頼みに両刃剣を突き出してくる。
だがそのことごとくは、ロジェロの着ている鎧によって弾かれていた。
「なッ…………!?」
「生憎だが、その程度の武器じゃオレの鎧を貫く事はできねェぜッ!」
黒崎の鎧は、鎖帷子の上に胸装甲を重ねたものだ。
これまたアグラマン大王からの戦利品。かつてタタール王マンドリカルドが入手した、トロイの英雄ヘクトルの鎧であり――尋常ならぬ頑強さを誇っていた。
(大王の装備、よもやこんな場面で役に立つとはな……!
この調子で行けば、ブルガリア軍を全滅させる事なく逃がす事ができるッ)
ロジェロやマルフィサだけではない。
兵をまとめ上げ、的確に撤退の布陣を指揮するアストルフォ。
王妃扮するアンジェリカを守る為、危なっかしくも大胆に奮闘するメドロ。
「おおお……我らが王に、本当に鬼神の加護が宿っておられるッ」
「呆けている場合ではない。ワシらも戦うぞ! 王をお守りせよッ!」
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表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
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