ビビりな兎はクールな狼の溺愛に気づかない

柊 うたさ

文字の大きさ
12 / 32
第一章:いざ、王都!

12. ウサギ、トマト、キュウリ、ピーマン

しおりを挟む

 照りつける太陽。茹だるような暑さ。額に滲む汗。
 いつしか気温が上がり、少し動いただけで汗をかく、そんな季節となった。


 「ふんふん~ふふん~」

 この日ネロはご機嫌に鼻歌を歌いながら畑で野菜を収穫していた。
 以前マローネにもらった苗が無事に成長し、立派なトマト、キュウリ、ピーマン…となった。

 ここまでの道のりはとても長く困難であった。
 隙間時間に図書館に通いコツコツと勉強し、その本で「トマトに水をあげすぎると甘さが薄くなる」と書いてあったため、すぐ真似をしてみた。

 トマトは甘い方が美味しいに決まっている、とネロは思ったのだ。
 
 それからはなるべく水やりを減らした。
 すると加減が分からず少し枯らしたりもした。

 やっと実がなったと思ったら鳥に食べられたこともあった。
 その日のネロはずっと落ち込んでいた。

 ということを経て、綺麗に赤く色づいたトマト、濃緑でハリツヤのあるキュウリ、ピーマンを収穫し、本日の夕食の献立を考える。

 早くアルジェントやティグレに食べて欲しいネロはとてもソワソワする。



 家にあるものと照らし合わせ、早速準備に取り掛かる。

 ジャガイモを茹でて、その間にニンジンとタマネギを切りさっと茹でる。
 キュウリはせっかくなので塩で揉まず食感を楽しんでもらうことにする。
 加工肉も切って…茹でて上がったジャガイモを潰して…


 あとは何がいいだろうか。アルジェントもティグレも肉が好きだから肉料理がいいな、とネロは頭の中にあるレシピをパラパラと捲る。

 ピーマン…肉…。そういえば村の飲食店でピーマンと肉の料理を出していたな、と思い出す。
 
 ピーマンを縦に切り中に入れる肉のたねを作る。
 そろそろ2人が帰宅する時間なことに気づき、丁度いい頃合いなため早速焼き始める。
 出来立てを食べてもらえそうでネロはワクワクする。

 焼いている間にパンの準備と昼食時に多めに作ったスープを温め、酒を好む2人のためにつまみも作る。

 トマトとチーズを切って、オリーブオイルとレモン汁をかけ、塩胡椒…バジル。

「よし!!」
 
 出来立ての料理を前に腰に手を当て、満面の笑みを浮かべる。
 自分で育てた野菜の大変身に感無量、親の気持ちになるネロである。



 ***


 その後、帰宅した2人と一緒に食べた本日の夕食も大好評でネロは大満足であった。


 ポテトサラダ、ピーマンの肉詰め。頑張って育てた野菜たちがとても美味しい。
 アルジェントもティグレも美味しそうに食べてくれた。
 

 しかしこうやって美味しそうに食べてもらえてもネロはいつも不安になる。
 どんなに頑張って作ってもオシャレなステーキではなくピーマンの肉詰めだ。
 所詮は庶民料理。

 ティグレは食べ慣れているだろうが、アルジェントは貴族である。
 庭の畑で育てた野菜ではなく、高級な野菜やフルコースの料理を食べ慣れている人だ。
 
 しかし毎回美味しそうに、初めて見る料理は興味深そうに食べるアルジェントにネロの心は温まる。

 絶対に「美味しい」という言葉も欠かさない。
 不安になる度に言われる「美味しい」に心が救われる。

 そういう部分でネロの働きを認めていることが伝わり、
 ネロは毎回ちょびっとだけ泣きそうになったりもする。


「このトマト甘いわね~!」
「これ、私が庭の畑で育てたんです…!」
「ほう、ネロは料理だけでなく畑づくりも得意なのだな」

 アルジェントもティグレも葡萄酒を飲みながらネロの作ったカプレーゼをつまんでいる。頑張って水やりを我慢した甲斐があった!!!と、とても嬉しくなるネロである。





 こうして畑づくりを成功させたネロはマローネにお礼しないと!
 と思い立ちせっせとクッキーを作るのであった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜

く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた 静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。 壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。 「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」 番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。 狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の 少年リノを弟として家に連れ帰る。 天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。 夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

翠月 瑠々奈
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。 衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得! だけど……? ※過去作の改稿・完全版です。 内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!

カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 ★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。

処理中です...