18 / 32
第一章:いざ、王都!
18. ウサギ、ライバル登場?
しおりを挟むアルジェントへの恋を自覚し心にそっとしまうことにしたネロは最近とても乙女になっていた。
恋を自覚してからというもの、何かとアルジェントを目で追ってしまう。
朝の挨拶で後ろからハグされると、今まで以上に顔を紅潮させて照れてしまう。
ご飯を美味しそうに食べているとネロはとっても胸が満たされる。
……という感じでとても恋する乙女になっているのだった。
ティグレは優しいお姉さんなので、温かい目で見守っている。
アルジェントは「普段と違うな?」と感じてはいるが…この男、かなりの鈍感だった。
ということで、ネロとアルジェントはこれといって進展はしていないが、
ここ最近はとても穏やかな毎日を送っていた。
……はずであった。
「ちょっとそこのウサギ!」
「へっ!?」
「貴方、アルジェントさまの使用人よね?」
ーーーそう、この女が出てくるまでは!!!
遡ること数分前。
ネロがいつものように王都で買い出しをしている時だった。
目の前を横切る豪華な馬車がネロのすぐそばで停まり、馬車から明るい茶髪の美しいキツネ獣人が降りてくる。
淡い黄色の上品なワンピースドレスを見に纏い、綺麗に結われた艶のある髪、
庶民の目でも分かる高価で煌びやかなアクセサリー。明らかに貴族令嬢である。
その美人なキツネはネロを視界に入れると真っ直ぐネロに近づき、
そして先ほどの言葉を投げかけたのであった。
「え、っと…そうですけど…」
「へぇ~?あなたが噂の…。ふ~ん?」
ジロジロと、ネロを頭から爪先まで舐め回すように観察し、最後は「ふっ」と鼻で笑う。明らかにネロを愚弄したような、見下した態度である。
このような態度を取られれば内心「なんだコイツ!」と思いそうなものだが、ネロはキツネの装いがとても貴族のそれ、であったためただビビり散らかすことしか出来ない。
「私、アルジェントさまの婚約者なんですけれど…」
「こ、こんやくしゃ…」
「…何だか最近アルジェントさまの周りを使用人がうろちょろしてるって、小耳にはさみましてねぇ?」
「…うろちょろ…?」
「私優しいからこうして忠告して差し上げようと思って来たんですの」
そう言うキツネの鋭い目がネロをギロリと睨む。
その見下すような目からはネロに対する厭悪が見て取れる。
その視線にネロはたちまち身動きがとれなくなってしまう。
「好意を抱くのは勝手ですけれど…貴方みたいな平民風情が、アルジェントさまと釣り合うとお思いで…?」
「…っ」
「…はっきり言って目障りなんですの。そのバレッタもアルジェントさまから貰ったんですってねぇ?」
「は、はい…」
「ふふっ。勘違いしない方がいいわよ?アルジェントさまは皆んなに優しいから」
”あんただけが特別だと思うなよ”と、キツネの目がそう言っているようで。
いや、おそらくこのキツネはネロにそう言いに来ているのだと悟る。
そして愕然とする。ネロのアルジェントに対する好意がキツネに知られている。
恋心を知られており、そして”釣り合わない”と言われている。
アルジェントと釣り合わないことはネロが一番分かっている。痛いほど自覚している。しかし改めて誰かにその現実を突きつけられると苦しい。悲しい。
それもアルジェントの婚約者、アルジェントと釣り合いの取れる貴族令嬢に言われるとよりダメージが大きくなる。
「貴方にこれは似合わなくってよ」
「あっ…!」
そういうとキツネはネロの髪に付いていた琥珀色のバレッタを力任せに引っ張る。
突然引っ張られた痛みでネロは顔を顰める。ぶちぶちと髪が抜ける音がする。
「ほんっと、目障りっ」
琥珀色のバレッタを手にしたキツネは憎悪の籠った目をして、
そしてそのバレッタを薄汚れた脇道の方に投げ捨てる。
脇道のどこかからカランっと音がする。
ネロは何が起こったのか一瞬分からず呆然としてしまう。
(バレッタ…、)
思考がついていかず、ただバレッタが捨てられた脇道を見つめる。
「では、忠告はしましたからね」
冷たいキツネの声は、もはやネロには届いていない。
颯爽と帰って行くキツネを横目に、ネロは急いで脇道に向かう。
脇目も振らず、ただバレッタを取り戻したい一心で。
0
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する
紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!!
完結済み。
毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?
翠月 瑠々奈
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。
衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得!
だけど……?
※過去作の改稿・完全版です。
内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる