ビビりな兎はクールな狼の溺愛に気づかない

柊 うたさ

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第一章:いざ、王都!

17. ウサギとクマ

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 王都の外れにある緑が生い茂る公園。
 そこにウサギとクマはいた。

「はいよ、これ飲みな」
「あ、ありがとうございます!」

 悩みがあると言ったネロを心配したクマは公園に連れて行き、プラスで果実水も買ってくれるという優男を存分に発揮していた。ぱっと見はとても残虐そうに見えないでも…ないが、内面はとても心優しい性格だった。

 ちなみに名をグランという。

「んで、嬢ちゃんは何悩んでんだ?」
 
 公園のベンチに座り果実水を飲みながら少し元気のないネロにグランは優しく声をかける。
 
「失恋、したみたいで…」
「し、失恋!?」

 グランは突然の失恋発言を聞き目をこれでもかというほど開け、勢い良くネロの顔を覗き込む。
 グランは知っている。あの鬼副隊長もといアルジェントのネロに対する並々ならぬ気持ちを。

 直接聞いたわけではないが、普段女性に対し冷淡な対応をしているアルジェントが愛おしげな目をネロに向けていたのだ。知りたくなくても気づいてしまう。気づくな、という方が無理である。

 しかし、ネロが失恋したということは相手はアルジェントではない、という可能性が出てくるわけで。

(え、副隊長振られるの…?)

 普段から無慈悲なアルジェントが失恋した場合、その日の機嫌は最悪だろう。
 キツく辛いアルジェントによる訓練がより辛いものになることが目に見える。

(それだけは困る!!)

「……誰、とは聞かないけどよぉ…、な、なんで失恋って思ったんだ?…みたい、ってことは告ってはないんだろ?」

 そう、ネロは「失恋した」とは言ってないのである。「失恋したみたい・・・」だ。
 まだ希望はある!!とグランは必死な顔をしている。だいぶ怖い。

「はい…、私の立場では気持ちを伝えても迷惑をかけてしまうってことに気づきまして…」
「ほう…立場ねぇ?身分が違うってことか?」
「そ、そうです」

 ネロは未だシュンとしているが対してグランは少し元気になったようである。

(これ、相手副隊長の可能性ある…よな?)

 グランは慎重にネロに質問を重ねる。
 失敗は許されない。グランの発言次第で未来の自分が苦しむことになる…。

「その人が言ったのか?身分差がある奴は無理とか…そういうこと…」
「前に「使用人に色目を使われるのは迷惑」って話をしてて…。だから…」

(副隊長!!!!!!!!!)

 グランは「何言っちゃってんの!?」とアルジェントの発言に対し苦言を呈したい気持ちは山々であるが、だがしかし!!
 ネロが”使用人”ということで悩んでいるということは相手がアルジェントであると決まったようなものである。つまりグラン含め警備隊の未来は明るいということと同義である。そう、未来は明るい!

 さてそうと決まればグランは、アルジェントが無意識に撒いた種をどう刈り取るかで頭を悩ませる。

「んーと、ほら色目っつーのはさ、下心ってか、相手を誘惑するみたいなもんだぞ?」
「はぁ…」
「嬢ちゃん、その好きな人を誘惑できんのか…?」

 グランはネロの気持ちが“色目”でなければいい、という結論に至ったようである。
 所詮両想いなのだ。ネロにその恋を諦めさせなければいいのである。

 対するネロはグランの“誘惑”という言葉に先ほど見たアダルティーな本のページを思い出し焦り出す。

「なっ!無理です!しませんそんなことっ!!そんな、できません…!」
「だろぉ…?じゃあそれは色目じゃなく、純粋な好意ってことだろ?だったら無理に諦めなくていいだろ~」
「じゅんすい…?諦めなくていいんですか?」
「そうそう!無理に気持ちを伝えなくてもいいけどよ大切に心ん中にもってれば、いつか綺麗な花になるかもだろ~?」

(無理諦めなくていい……)
 
 ネロはこのグランの言葉で先ほどまでの悩みがスッと軽くなるような気がしていた。
 諦めなくていい、心の中にしまって置いてもいい。
 なんだかネロの恋心が許されたようで、途端に世界が色づいたように見える。

 対するグランは、ホッとした顔のネロを見て心底ホッとしていた。

(こ、これでなんとかなったか…?まぁ、嬢ちゃんが告らなくとも副隊長がいつか告るだろ~…)

 

 こうして初めての恋が失恋にならなかったウサギと、
 頑張って恋のキューピッドをしたクマなのであった。
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