ビビりな兎はクールな狼の溺愛に気づかない

柊 うたさ

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第一章:いざ、王都!

16. ウサギ、初めて知る

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「………す………き……?」



 ネロは今、王都の図書館にいる。
 先日ティグレと話をしてからモヤモヤ、グルグルしていたこの気持ちの正体を知るために本を読み漁っているのである。手始めに医学書を読んでみたが、特に何かの病気ではないようで安心する。

 その時ふと『初心者向け!らぶらぶドキドキ恋愛指南書』という、いかにもな本を見つける。

 普段のネロであればきっと手に取ることはなかっただろうが、今のネロはこのモヤモヤを早くどうにかしたい気持ちでいっぱいであったため、藁にもすがる勢いでこのいかにもな本を手に取る。

 本をパラパラと捲ると、
「 ”あの人の顔を見るとドキドキ…”、”あの人が他の人と親しくしているとモヤモヤ…”、”あの人も同じ気持ちならいいのにと思い辛くなる…”は全部その相手のことが好きだから!!!!!」と、とても大々的に書いてある。

 つまり、ネロの今のモヤモヤと照らし合わせると…、
 あのキスを他の人としていたら嫌=好き?
 アルジェントもあのキスが気持ちいいと思っていて欲しい=好き? 

「………す………き……?」

 思いがけない答えにネロの頭は混乱…を通り越し真っ白になる。
 今まで恋愛のれの字もなかったネロである。
 自分が人を好き、しかもアルジェントを好きになることを想像もしていなかった。

 しかし、今のネロの気持ちを”好き”という言葉に当てはめるととてもしっくりくる。

 …しっくりくるが、アルジェントは雇用主である。それも使用人に色目を使われるのを嫌う雇用主だ。

 好きになっても気持ちは伝えられない、両想いになれない…つまり。

(し、しつれん…?)

 ネロは自分の気持ちに気づいた途端に失恋の危機が訪れるという、なんともジェットコースターな気分を味わってしまう。

 昔、村の友達が「初恋は実らないんだよ」と大人ぶったようなことを言っていたが、本当にそうなのかもしれない。それでもちょっとくらい恋というものを楽しみたかった…とネロは項垂れる。

 失恋のせいなのか、恋が初めてなためなんとも言えない気持ちに戸惑うネロは、pとりあえず気分を紛らわすために『初心者向け!らぶらぶドキドキ恋愛指南書』のページを更に捲ってみる。

 すると先ほどとは打って変わって、なんともアダルティーな男女の扉絵が出てくる。
 「はて…?」と、男女のあれこれに疎いネロは首を傾げながら次のページを捲る。

「な゛っっっっ!」

 そこには男女の営み、つまりは”子作り”についてとても丁寧に書かれている。
 男女のあれこれ、というか最早全てに疎いネロは子どもがどうやって出来るのかも知らなかった。

 親が早くに他界、世話を焼いてくれた飲食店の夫婦もとても忙しい人たちであったため、その手のことは誰も教えることなく…。加えてネロの読んだことのある恋愛小説は2人が両想いとなり「そして2人は幸せに暮らしましたとさ。」で終わる物ばかりであった。

(みんな、こ、こんな、破廉恥な、……)

 男女の絡み合い、雰囲気作り、テクニック、諸々初めて見るそれらにネロはボンッと音が出そうなほど全身を真っ赤に染める。ネロにはまだ早かったのかも…しれない。

 ネロは慌てて本を閉じ、急いで元の場所に戻す。
 そして熱くなった体を冷やすために王都の街を歩くことにした。


 ***

 王都は段々と暑さが落ち着き、もうすぐ木の葉が色づく季節となる。
 その頃になると「収穫祭」と言われる祭りが行われ王都は賑わうのだそう。
 アルジェントからその話を聞いたネロはずっと収穫祭を楽しみにしている。
 初めてのお祭り、野菜を使った料理がたくさん振る舞われるらしい。


 収穫祭に思いを馳せながら王都の様々な露店を横目に街道を歩いていると、
 ふと見覚えのあるクマが目の前からやって来ているのが見える。

「あれ……警備隊の…」
「ん?……おや!副隊長のところの嬢ちゃんじゃないか!」

 目の前のクマもネロのことを覚えていたらしい。
 相変わらずの大きさにネロは目を合わせるだけで首が取れそうだ。

「こんなところでどうしたんだい?散歩か?」
「……ちょっと悩み事があって、図書館で調べて、その帰りで……」





「ほう?悩み…?」

 
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