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13話 町へ向けて 4
しおりを挟む森の木々のザワザワとした音、周囲から聞こえる草のサワサワと揺れる音。太陽は…まだ視界の隅に見える、たぶん12~14時くらい?
身体を起こし草の上で胡座をかく。
(…とにかく良かった。ぶっつけ本番だったけど【無動作魔法】は習得出来た)
【無動作魔法】を軸にする事に関しては、あまりの不確定さにティナと少し揉めたけど、なんとか頼み込んで、【魔力の原理・操作方法】なんかを学び、実演してもらいながら習得イメージを高める練習を繰り返しておいた。
さっきと同じように魔力を集め、今度は目を開けたまま魔力の塊を飛ばして見る。
魔力の動きから成功しているらしい事はわかるが、オレには何も見えない。
オレが飛ばしているのは【魔力玉】というもので、何も属性を纏わず、殺傷能力も0に等しい。
…一応ゴーストのような、実体を持たない魔物には、小石をぶつけた程度のダメージは入るらしいが、基本は魔法を覚える為の、練習の産物に過ぎない物だ。
さて、今日はここから移動はしない。周辺マップは頭に入っていて、どちらへ行けば一番近くの町に着くかも知っている。
だが、距離的に少しでも何かトラブれば、日が落ちてしまう可能性もある。
草地に座ったまま後ろを振り返る。
そこには、苔むし蔦の絡まった、1階建ての木造の家が建っている。今日はあそこで一泊して、明日早めに町へ向かうつもりだ。
とりあえず今は、転生した自分の現状把握が優先だ。オレは誰にも聞かれない場所だが、クセ付ける為にも言葉を発さず唱える。
(ステータス)
ーーーーーーーーーーーー
【名前】リルト
【種族】ハーフエルフ
【年齢】15
【レベル】15
【職業】ー
【スキル】
・(鑑定)
・短剣術・体術・直感
・マジックボックス
・無動作魔法
ーーーーーーーーーーーー
「よし。予定通りだな」
一見、色々足りていないように見えるが、これは所謂"仕様"というヤツだ。
ビルド研究時、表示されていた【職業】は、実際は町にある各"ギルド"で【授職の水晶】という魔法具を使い入手するものだ。もちろん才能は予定通り組み込まれているので、水晶を使えば【斥候】【錬金術師】【薬師】が発現し、職業スキルも入手できるはずだ。
魔法スキルを一切持っていないのは【無動作魔法】習得の為だ。ミスって何か魔法が発動してしまったら、その時点で【無動作魔法】が永久に習得不可能になってしまう。
もちろんこれも才能は組み込んである。全属性に適性を持たせてあるが、チートでは無い。
全てが戦闘に組み込めるようになるにはウン百年かかるだろう。
ちなみに【レベル】がいきなり15なのも仕様だ。
この世界の人間型種族は、生まれて【1歳/レベル1】からスタートし、1年ごとに20歳まで自動的にレベルが上がる。
といっても自動的に強くなる訳じゃなく、ストッパーが一段階外れる感じ。
つまり、
【レベル1】だと、どんなに筋トレしても【攻撃力10】までしか上がらないが、【レベル2】だと20まで上がる、という感じだ。
だから、【レベル=強さ】ではなく【レベル=強くなれる伸び代】って感じだ。
(…よし。)
オレは立ち上がり、軽く手を払い家の方へ身体の向きを変える。
「今度はこっちの確認だな」
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