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65話 路線修正 5
しおりを挟む模擬戦が終わると、周囲で見ていた冒険者達が中央に集まってくる。
「いやぁ、リルトだっけ?やるじゃねぇか!
今度一緒に依頼行こうぜ」
「動きはけっこう良かったけど、武器の扱いはまだ素人だな、誰か短剣教えてやれよ」
「リルトくんが斥候してくれれば、ダンジョンもっと進めるかも?」
「ダンジョンは素人だろ?斥候だけ出来てもダメだろ」
ジャコスがギルド常駐のヒーラーに、治療を受けている傍らで、ワイワイと話し始める。
太ももの治療が念入りだし、ヒビくらいいったか?
「おい、あの最後の魔法なんだよ? 身体メチャクチャ重かったぞ?」
ジャコスが治療を終えてこちらに来る。
「【時間魔法】で、レジスト出来ないと、身体の反応速度が落ちるんですよ」
「かーっ! また珍しい魔法だな、おい、ちょっとあの魔法障壁出してみてくれよ」
「いいですよ、じゃあ全面だけ」
オレは小声で詠唱する。
「***** *****【空間壁】」
周りの冒険者達も興味津々だ。
コン、ガンガン!
みんなで叩いて強度を確認する。
「おい、けっこう硬ぇなコレ」
「急に出されたら抜けねぇな」
冒険者の中のゴツいヤツが、周りを下がらせて大剣で凪払う。
パキィン!
"空間壁"が砕け散る。
「おー、けっこう力いるぞこれ、確かに、分かってりゃ対処出来るが、急に出されたら厳しいな」
「はいはい、そろそろみんな解散よ、リルトくんはカード更新あるからカウンターに来て」
みんなでゾロゾロと訓練場を後にする。
最初は「モテ野郎に制裁を」みたいな雰囲気だったが、実力が認められたのか、男性陣のオレに対する表情も穏やかだ。
こういう場合、物語なんかだと、大して強くもないのに自尊心だけ肥大したヤツが、
「こんなヤツ、俺は認めねぇ」
とか言って、闇討ちしてきたり、挙げ句の果てに命を狙ってきたりするのが鉄板だ。
だが、ギルドにはちゃんと素行調査する部署があり、"人物評価"を担当する職員がいて、そこからの報告がランクにも反映される。
だから、そんな社会不適合者はしっかりギルドに把握されているので、上にも上がれないし、結果弾かれて存在していない。
「はい、ではこちらが新しいカードになります。」
「ありがとうございます」
「おめでとうございます。
本日からリルトさんはEランク下位となりましたので、依頼の受けられる上限が上がりました、タブレットでご確認下さい。
またDランク昇格に必要な講習もございますので、そちらは資料室でご確認のうえ、受付に受講申請をお願いいたします」
「分かりました」
「おいおい、こんなガキがEランクに上がれんのかよ、ここのギルド、レベル低いんじゃねえか?」
「きっとアイツ、一年くらい薬草かき集めてたんですよ」
「わははは、それゃすげぇな。
そんなチマチマした事、俺には真似出来ねぇよ」
「ダリムだったら、魔物倒しまくってすぐEランクに上がって追い抜いちゃうわよ」
「当たりめぇだろ、ダリムさんがあんなガキに負ける訳無ぇ」
(…まぁ、素行不良なヤツは"生き残れない"ってだけで、ギルドから"弾かれる前"のこういうヤツらは存在するんだよな)
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