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66話 路線修正 6
しおりを挟む突然ディスってきたヤツら。
パッと見はオレと同年代の15~6歳なのかな?
「冒険者になって一旗上げるぜ」とか言って村を飛び出してきた、とかそういパターンだろ。
ダリムと呼ばれてたヤツは、顔は若いがガタイはいい、180cmはなさそうだがゴツい身体付きだ。
まぁ、"筋肉"じゃなくて"肉"って感じのゴツさだけど。
取り巻きっぽいのは、ヘラヘラしたチビ(身長は人の事言えないけど…)とデブと、目付き悪いキツそうな女の子の3人。
(典型的なザコって感じだなぁ…)
ついボケっと見てると、ダリムとか言うヤツが近づいて来た。
ちなみに模擬戦を見に来てた冒険者達は、今後仲間になりそうもないヤツらに興味は無い、とばかりにさっさと食堂に行ってしまっている。
「おい、なんか言いたい事無ぇのかよ?」
「いや、特に無いです」
「けっ!弱虫野郎が」
(知らんがな…)
「あの…他の冒険者の方への、誹謗中傷はお止め下さい」
「あ? ヒボーチューショーって何だよ? アイツが弱そうなのが悪ぃんだろ」
(誹謗中傷も分からないんかい…)
「…もうけっこうです。
それで、本日のご用件をお伺いいたします」
「あぁ、このカードを正式なのに変えてくれ」
ダリムと取り巻きが出してきたのは、オレの持っているのとは違う、グレーのカード。
これは、ギルド支店ではなく【出張所】で発行されるカードだ。
"出張所"は「小さな村」「依頼の少ない場所」に出される店舗で、2~3人の少数職員で、小さな家を借りて運営されているらしい。
ここでの冒険者登録は仮のものなので、近くの町にある支店に行き、正式登録をしないとランク付けもされない。
「はい、お預かりします。
…ホルム村出張所での仮登録カードですね、情報を確認いたしますので、少々お待ち下さい」
グレーのカードも"見習いカード"と一緒で、ランク付けはされないが、評価は情報として蓄積される。
なので、正式カードに切り替えた瞬間ランクアップする事も多々あるらしい。
見習いも、この町のように教育の行き届いているギルドの場合は、成人して正式カードに切り替わると、たいていF中か上位からスタートするものなんだとか。
「確認いたしました。
こちらが正式なカードとなります」
「は?なんでF下位なんだよ!」
「俺もです!」
「ワタシもよ!」
(おいおい、仮カードで活動してたんじゃないのかよ、何で下位なんだ?)
「…皆様、ギルドの講習を受けた履歴がありませんが、職員から受けるように言われませんでしたか?」
「あ?なんで冒険者になったのに、お勉強しなきゃいけねぇんだよ、面倒くせぇから受けてねぇよ」
(あぁ、典型的な"憧れ先行タイプ"か…)
冒険者が様々な魔物を倒し、やがて英雄と呼ばれ皆から称賛される。
そんな話でも聞いて育ったんだろう、こういうヤツらは、冒険者になって魔物を倒してさえいれば、自動的に儲かって成り上がれると思い込んでる。
「受けていないからこそFランク下位のままになっているんです。
【冒険者の行動規範・初級】【依頼者との折衝・初級】を合格しなければ、Fランク下位からは上がれません、職員から説明を受けているはずですが?」
難しい講習名が出てきたが、内容は小学生が理解出来るレベル。
要は、冒険者はこのように行動しましょう。こういう事をしてはいけません、という"道徳レベル"の講習が【冒険者の行動規範・初級】。
依頼者(お客様)とはこのように接して、このように依頼を進めましょう、というのが【依頼者との折衝・初級】。
だから、この2つの講習を合格していないと、通常"見習い"が受ける"町のお手伝い"すら受注出来ない。
まぁ、これに合格出来ないレベルって、
依頼の日に酒飲んで遅刻して現れて、「こんな面倒くせぇ依頼すんじゃねぇよ、ペッ」とか悪態ついた挙げ句、半端に依頼をこなして適当に報告して帰る。
こんな感じになる(講習に出てくるダメな例)。
そりゃギルド側もランク上げる訳が無い。
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