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112話 新たな道標 3

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「……」
「♪」

 オレは今ベッドの上で項垂うなだれている。
 ラテルはもらったリンゴを食べていてご機嫌だ。


 ベッドの横に椅子を置き、微笑んで座っているのは頭の薄くなった立派な髭のお爺さん。
 ただのお爺さんではなく、このオルガスティア王国、王都大神殿の最高責任者であり、オレの命の恩人でもあるロンドル大司教だ。


 シスターがこの爺さんを呼んで来て、助けられた感謝を告げたところまでは良かったんだけど、告げられるオレの意識が無い間の出来事はオレのテンションを下げるばかりだ。


 まずは怪我について。
 犬ジジイの手刀は心臓付近まで到達していて、大量の出血から一時は危なかったらしい。
 ムカつくが…顛末を知ったので水に流してやろう。


 しかしそのせいでオレはなんと半年も寝ていた、そりゃ髪も伸びるわ。
 もちろん護衛依頼後半には参加出来ず、エリザベットさん達はルティスタに帰った。
 理由が理由なのでギルドからは当然おとがめ無し、マーカス商会にはギルドから賠償があったとか。


 大司教がファル爺から聞いたらしいが、パリエルス商会はアクセサリーをまだ販売していないとの事。

 献上するため謁見を願い出たタイミングであの事件が起きて、王城側の謁見予定が全てキャンセルになったらしい。
 オレが倒れている状態で進めるのは不義理だとナザリオさんが取り止めを申請したままになっているらしいので、ナザリオさんにはなるべく早めに会わないとなぁ。


 そしてなんといっても"神界関連"だ。

 なんでもここにある礼拝殿という神像のある場所だけ地震が起きて、ティナとリンクしたせいなのか神像が血の涙を流したとかで、神罰が下ると王都民は震え上がっていたとか。
 

(血の涙を流す神像って、前世にもそんな話あったような…)


 そして天使が降りてくるという異例の事態。
 その場には王など国の重要人物しかいなかったらしいが、外からも光が降りてくるのが見えていて、これも大騒ぎになったらしい。


 項垂れた目線に入った左手小指の指輪。
 寝ている間にファル爺がくれたらしい。
 この国の宰相が"賢者"で鑑定持ちな事は以前から知っていたので大変ありがたいが、ダンジョン産の高価なものらしいので、どうお返しすればいいのやら…



 色々問題点はあるものの、今のところ"オルガスティア国内では"特別天然記念物"のような扱いなので、ある程度安全は担保されているようだが、問題は"外"だ。


 この中央大陸のオルガスティアと真反対、北東にある大国【アリルメリカ王国】
 何となくどこかで聞いたような名前だが作ったのはやっぱり地球から来た勇者。

 この世界で唯一"飛空艇"を所持している国で、コアパーツを作れるのが勇者だけだったという事から、その数を年々減らしており今では20数機しか無いらしいが、それでもその輸送力、機動性はかなりのアドバンテージで、商業、軍事ともに周辺国の追随を許さない。

 ちなみに商業船を大陸中で周回させているが、オルガスティアは特に特産品も無いのでコースに含まれていない…



 このアリルメリカが今、オルガスティア王都にかなりの諜報部隊を送り込んで来ているらしい。

 なんでも大神殿の異変と時を同じくして飛空艇に一斉に不具合が出たらしく、その関連性を調べているとか。
 空間魔法が使用されている飛空艇の異常、空間を司る女神像の異常、そしてその神に守られているらしい少年オレ…という構図からオレの事もかなり嗅ぎ回っているようだ。


 特に侵略国家という訳では無く、現在の王も温厚な人物らしいので、穏便に話をするくらいならいいが、国の最重要物に関わる事だ、どんな事をして来るのか今から不安だ…


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