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152話 伏魔殿へ 6
しおりを挟む不妊の原因だったランドルフ王の身体の異常も治り、念のためにと他にも薬を作って渡した。
「こっちの薬はリナさんが管理して下さい。
妊娠出来そうな周期に合わせてお二人で飲むように」
「分かったわ」
「まぁ、"創造錬金"ならもっと強引な薬も作れると思いますが、後は自然に任せるのがいいと思いますから」
「そうね、私もそう思うわ」
「そもそもこれで上手くいくかも3~4ヶ月経過して、リナさんの体調に変化が現れないと分からないでしょうし」
「いえ、それは違いますよ」
マリウス宰相が否定する。
「え?」
「妊娠すれば"鑑定"に現れますから」
(あっその手があったか)
ランドルフ王が目を見開く。
「おっ!そうか。
じゃあ1ヶ月以内には結果が分かるな!」
「一応ボクはこれからダンジョン攻略に行こうと思ってるので、3~4ヶ月しても上手くいかなかったら連絡して下さい」
「お?ダンジョンか。
""コボルドの古代地下街""か?」
「ええ、まだ初ダンジョンですから難易度は低めにしないと」
この王都から東隣にある"ラスカー侯爵領"。
この国で最も栄えている領であるその原動力がこの"コボルドの古代地下街"だ。
かなり昔にコボルド達が鉱山跡地に町を築いて生活していたが、学者が調べた限り2つの部族が争って結果双方とも滅んだ町がダンジョン化したらしい。
今ではダンジョン化して複雑に分断された滅んだ町の残骸や、坑道内に少数の群れでコボルドが住み着いており、またダンジョン化した事でアンデッドコボルドも出現するようになっているらしい。
鉱山に住むコボルドは鉱石を探す才能があり、巣穴の中に坑道を作る習性から鉄、銅、銀、金など各種鉱石が、またコボルドの住処付近でしか採掘されない"コボル鉱石"も産出される。
ダンジョン化したことにより枯渇していたはずのそれら鉱石が再生成され、そこまでの産出量ではないながらも鉱石が無限に取れるようになり、オルガスティアの金属流通の要になっている。
「懐かしいな"コボルド街"。
俺達も最初の攻略はあそこなんだぜ?」
ランドルフ王が楽しそうに話す。
「まぁ、ボク達はまだレベルも低いし、精霊獣を合わせても2人と2体だけのパーティーですから、攻略までいけるかどうか」
と、リナ王妃が小さくパンッと手を打ち合わせる。
「あ、そういえばリルトさんも精霊獣を使役しているのよね?
"うちの子"と会わせておけば連絡が取りやすいからそうしない?」
「わかりました、"ラテル"おいで」
オレは自分の中にあるラテルとの繋がりを意識して魔力を込めて呼びかける。
するとすぐさまオレの前の空中に光が集まり、ラテルが胸に飛び込んで来る。
「キューン…キュルルン」
ラテルは甘えた声を出しながら胸にすがり付き、鼻先を首筋に擦り付けている。
「はいはい、寂しかったね、よしよし」
オレはラテルをあやしながら背中を撫でる。
「あら可愛い、ずいぶん甘えん坊さんなのね」
リナ王妃は微笑ましげにラテルを見つめている。
「けっこう幼いんだと思いますよ?
出かける時に置いていこうとすると駄々こねたりしますし」
「キュギュ!」
「もう1体は呼ばないのか?」
ランドルフ王が不思議そうに尋ねる。
「もう一体はちょっと人見知りなので、初見の人間が多いこの場ではたぶん出て来ないですね」
「あら残念。
じゃあとりあえず私も、おいで"クィーラ"」
リナ王妃が呼びかけると、空中に羽を広げた状態で鴬色をした鷲が現れ、フワッと静かにリナ王妃の傍らのソファーの上に降りてくる。
「クィーラ、今日は新しいお友達が出来るわよ」
「クルルル…」
いかつい顔をしているが、リナ王妃が喉元を指で撫でると首を伸ばし目を細めて気持ち良さそうにしている。
「クルルル?」
「キュキューン!」
ラテルをソファーから降ろすと、2匹は部屋の隅の方へ移動して、匂いを嗅ぎあったり小さく鳴いて何か話しているようだ。
と、おもむろにアレクトス伯爵が口を開く。
「そういや、"コボルド街"っていえばあの"謎の行方不明"があったよな」
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