170 / 244
170話 ラスカリア 10
しおりを挟む3階層に入り少し進むと洞窟の様相は大きく変わる。
そこはかなりの広さのホールになっていて、そこには木材と石組みで出来た不恰好な建物が並び、壁面にも木製の階段が付けられ穴が穿たれた中にも木製の扉があり、あちこちにコボルドの住居があるようだ。
ちらほらとコボルドの姿も見え、ここも中央で戦闘でも行えば大乱戦になるだろう。
資料では壁沿いに進めばさほど戦闘にならず奥へ進めると書いてあったが…
「…うん、あそこの横穴の先が次の階層っぽいね」
オレは右手奥の壁沿いにある大きな穴を指差しそのまま歩き始める。
「リルトあれ」
「うん」
ポラリスが指差した先、次の階層へ続く穴の手前に何度も見かけたコボルド3体の群れがいた。
今までと違うのは1体、少しガタイが良く雑な革鎧のような物を身に付け、腰には湾曲した片刃の剣を差したコボルドが混じっている事。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コボルド・ソードマン
レベル:18
種族:獣魔
スキル:嗅覚強化・長剣術
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ソードマン、レベル18、長剣術持ちだね」
「戦ってみたい」
「いいよ、じゃあ雑魚を先に片付けるね」
オレ達は歩きながら話し3体まで5mほどの場所で止まる。
「ラテル、右のを頼むね」
「キュイ!」
「じゃあいくよ、…3、2、1、今!」
ラテルが魔力を発し姿を表したのに気づいたコボルド達が臨戦態勢に入ろうとした瞬間、左のコボルドの首がオレの"次元刃"で落ちる。
残り2体が驚きそちらに気を取られた瞬間にラテルの石の弾丸が右のコボルドの胸に突き刺さる。
「グウゥ…」
小さなうめき声を上げ倒れたコボルド。
ソードマンは今度はよそ見をせず、空中から円形盾を取り出し姿を現し進み出るポラリスに歯を剥き出して威嚇している。
「"パターン3"でいく?」
「一人でやってみたい」
「分かった」
ポラリスは盾を左胸辺りに構え、右腕はダラリと下げているが手が何かを握るように閉じ開きしている。
「グォウ!」
ソードマンが唸りを上げポラリスに剣を上段から振り下ろす。
ギャリ!
盾を斜めに払い、剣の軌道を逸らせたポラリスはひねった身体を引き戻しながら右手に現れた槍をコボルドに突き込む。
驚きながらも咄嗟に剣を引き戻し身体に沿わせたコボルドは何とか槍を逸らせたが、その時には盾を握っていた左手に逆手に持つ短剣がコボルドの顔を通る軌跡を描き、右目を含む大きな傷を付ける。
「ギャワゥ!」
コボルドが怯んだ瞬間、右手に槍の代わりに持っていた盾が今度は左顔を叩き、のけぞっているコボルドの前でポラリスは盾を引き戻す勢いのまま身体を一回転させる。
遠心力をつけ勢いのついた両手には大きな両手剣が握られており、水平に一線されたその刃はコボルドを上下に分断した。
まさにポラリスの超レア職業スキル"千手"の真骨頂のような戦い方だったな。
"千手"は武器スキルとアイテムボックスを融合させた特殊なスキルだ。
自分がスキル習得している武器のみアイテムボックスを圧迫せず収納でき、またその出し入れにはかなりの速度アップと細かい位置を直感的に操れる効果がある。
なのでポラリスと戦う相手はいつ、どんな武器が、どれだけ出てくるのか分からない相手と対峙しなければならないというかなり厄介なスキルだ。
しかし、当然その刃を敵に届かせるだけの力量がもっとも重要であり、習得後の修練が強さに直結している扱いの難しいスキルでもある。
「いい動きだったよ」
コボルドをしまいながらポラリスに声をかける。
「ううん、ちょっとのめり込み過ぎだった。
久しぶり過ぎて投擲とか抜けてた…」
ポラリスは少し落ち込んでいる。
一つ一つの武器鍛練もそうだが、それ以上に大変なのは"コンビネーション"の鍛練だ。
無限大の組み合わせの中からその時の敵の強さに、シチュエーションに合わせた連携をその場で組んでいかなければいけないのだ、その判断力は一朝一夕で育つものではないだろう。
…ポフッ
オレはポラリスの頭を撫でる。
「これからいくらでも練習出来るよ、さぁ進もうよ」
「…うん」
ちょっと赤くなったポラリスは笑顔に戻り調子を取り戻したようだ。
オレ達は横穴へ入り、漆黒の境界を前にする。
「さて、ここからが問題の4階層だ、気をつけて行こう」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
537
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる