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6.座薬
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「疲労が溜まり、風邪を拗らせてしまったみたいですね。
幸い脈は安定していますし、呼吸にも問題はありません。
熱が少々高いので、解熱剤を処方しておきます」
「ありがとうございます」
楓は訪問医に頭を下げた。
車を持たない藤堂家では、昔から訪問診療サービスを利用していた。
値は張るが、電話一本ですぐに医師が来てくれるため、利便性は高い。
あとになって救急車を呼ぶという選択肢があったことに気がついたが、気が動転していた楓にはいつものように訪問診療サービスに電話することしかできなかった。
結果としてはそれでも問題なかったが、もしものことを考えるとゾッとする。
医師を玄関まで見送り、楓は布団に寝かせた智也の横に座った。
義父は仕事で滅多に家に帰ってこないため、実質二人暮らしのこのアパート。
智也は兄として気を張っていた部分もあったのかもしれない。
今回はただの風邪で済んだが、次もそれで済むとは限らない。
もし母の後を追うように智也までこの世を去ってしまったら、楓は二度と立ち直ることはできないだろう。
「そうだ、お薬!」
楓は医師から受け取った袋からそれを取り出した。
ゴクリと喉がなる。
「これを智也に……」
それは座薬だった。
眠っている智也に処方するのなら、飲み薬より座薬のほうが適しているのだろう。
医師は自分がやろうかと言ったが、楓は「私がやります」とその申し出を断った。
智也がただの風邪だとわかり、心に余裕ができたせいだろうか。
女としての自分が顔を覗かせた。
智也に座薬を入れてみたいと。
座薬など自分はもちろん、まして他人になど使ったことがない。
誤った使い方をして薬を無駄にするわけにもいかないので、スマホを片手に試みる。
「えーっと、なになに……。まずは手をきれいに洗う」
まあ、当然だろう。
楓はキッチンにいくと手を洗った。
それはもう、念入りに。
「排便を済ませるって、これは無理ね」
寝てる智也にトイレに行ってもらうことなどできない。
もしかしたら座薬を入れた弾みで出てきてしまう可能性もあるが、仕方ない。
「兄さんの……」
それを想像して顔が赤くなるのを感じた。
(いや、いや、いや! さすがにそれは駄目でしょう!)
そこに興奮してしまうのは、兄妹以前に人として踏み入ってはいけない領域な気がする。
いくらなんでもまだ早い。
「え、えっと次は、横向きにして、足を曲げる」
掛け布団をどかし、智也の身体を動かしていく。
横にするだけとはいえ、自分より大きい男の身体を動かすというのはそれなりに力が必要だった。
どうにか智也の足を折り畳み、指定の格好にする。
「次にズボンを下ろして……」
ゴクリと喉が鳴る。
これから智也のズボンを下ろす。
それはつまり、智也の臀部を、そして恐らく性器まで見ることになる。
いつも自分を慰めるときに想像していたもの。
それをついに拝めるのだ。
「これは必要なことだから……」
免罪符を盾にして、自分に言い聞かせる。
パジャマのズボンのゴムに手を掛ける。
下になっている部分が引っかかるが、少し力を入れると智也の臀部が露になった。
汗で蒸れた雄の匂いが鼻を突き、無意識に股を閉じる。
「これが兄さんのお尻……」
楓のものとはずいぶんと違う。
脂肪が少なく、硬そうな印象を受ける。
そしてその隣。
足と足の間には、袋がはみ出していた。
「ここで精子を作ってるんだよね……」
保健の授業で習ったことを思い出しながら、まるで街灯に誘われる虫のように、ゆっくりと手を伸ばし、そして触れた。
優しく傷つけないように指先で撫でる。
すると薄い皮の内側に、コロコロとした玉があるのがわかる。
「本当に玉が入ってるんだ……」
女にはない臓器。
なんだか不思議な感じだ。
幸い脈は安定していますし、呼吸にも問題はありません。
熱が少々高いので、解熱剤を処方しておきます」
「ありがとうございます」
楓は訪問医に頭を下げた。
車を持たない藤堂家では、昔から訪問診療サービスを利用していた。
値は張るが、電話一本ですぐに医師が来てくれるため、利便性は高い。
あとになって救急車を呼ぶという選択肢があったことに気がついたが、気が動転していた楓にはいつものように訪問診療サービスに電話することしかできなかった。
結果としてはそれでも問題なかったが、もしものことを考えるとゾッとする。
医師を玄関まで見送り、楓は布団に寝かせた智也の横に座った。
義父は仕事で滅多に家に帰ってこないため、実質二人暮らしのこのアパート。
智也は兄として気を張っていた部分もあったのかもしれない。
今回はただの風邪で済んだが、次もそれで済むとは限らない。
もし母の後を追うように智也までこの世を去ってしまったら、楓は二度と立ち直ることはできないだろう。
「そうだ、お薬!」
楓は医師から受け取った袋からそれを取り出した。
ゴクリと喉がなる。
「これを智也に……」
それは座薬だった。
眠っている智也に処方するのなら、飲み薬より座薬のほうが適しているのだろう。
医師は自分がやろうかと言ったが、楓は「私がやります」とその申し出を断った。
智也がただの風邪だとわかり、心に余裕ができたせいだろうか。
女としての自分が顔を覗かせた。
智也に座薬を入れてみたいと。
座薬など自分はもちろん、まして他人になど使ったことがない。
誤った使い方をして薬を無駄にするわけにもいかないので、スマホを片手に試みる。
「えーっと、なになに……。まずは手をきれいに洗う」
まあ、当然だろう。
楓はキッチンにいくと手を洗った。
それはもう、念入りに。
「排便を済ませるって、これは無理ね」
寝てる智也にトイレに行ってもらうことなどできない。
もしかしたら座薬を入れた弾みで出てきてしまう可能性もあるが、仕方ない。
「兄さんの……」
それを想像して顔が赤くなるのを感じた。
(いや、いや、いや! さすがにそれは駄目でしょう!)
そこに興奮してしまうのは、兄妹以前に人として踏み入ってはいけない領域な気がする。
いくらなんでもまだ早い。
「え、えっと次は、横向きにして、足を曲げる」
掛け布団をどかし、智也の身体を動かしていく。
横にするだけとはいえ、自分より大きい男の身体を動かすというのはそれなりに力が必要だった。
どうにか智也の足を折り畳み、指定の格好にする。
「次にズボンを下ろして……」
ゴクリと喉が鳴る。
これから智也のズボンを下ろす。
それはつまり、智也の臀部を、そして恐らく性器まで見ることになる。
いつも自分を慰めるときに想像していたもの。
それをついに拝めるのだ。
「これは必要なことだから……」
免罪符を盾にして、自分に言い聞かせる。
パジャマのズボンのゴムに手を掛ける。
下になっている部分が引っかかるが、少し力を入れると智也の臀部が露になった。
汗で蒸れた雄の匂いが鼻を突き、無意識に股を閉じる。
「これが兄さんのお尻……」
楓のものとはずいぶんと違う。
脂肪が少なく、硬そうな印象を受ける。
そしてその隣。
足と足の間には、袋がはみ出していた。
「ここで精子を作ってるんだよね……」
保健の授業で習ったことを思い出しながら、まるで街灯に誘われる虫のように、ゆっくりと手を伸ばし、そして触れた。
優しく傷つけないように指先で撫でる。
すると薄い皮の内側に、コロコロとした玉があるのがわかる。
「本当に玉が入ってるんだ……」
女にはない臓器。
なんだか不思議な感じだ。
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