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2.公爵令嬢は第二王子と語らう
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ロイスに厄介払いされたレイシアは今、王城に来ていた。
別にロイスたちについてきたわけではない。
目的は他にあった。
「ごきげんよう、リンド殿下」
レイシアは王城にある、庭園を訪れていた。
一流の庭師の手によって彩られた庭園は、鮮やかな花々が咲きほこっていた。
「レイシア、いらっしゃい」
柔らかな笑みで、第二王子であるリンドが迎えてくれる。
王城の庭園は、レイシアにとって数少ない心安らぐ場所だった。
見ているだけでも癒されるのだが、ここに来ればリンドに会えるからだ。
リンドは植物が好きなようで、庭園にいることが多い。
初めはロイスの弟として接していたレイシアだったが、いつの間にか、リンドに対して別の感情が芽生えていた。
そして、時間があれば、こうしてリンドに会うために庭園を訪れるほどに感情が膨れ上がってしまっていた。
「兄上は今日もまたメリー嬢と?」
「ええ、まあ。
こちらにいらっしゃるということは、リンド殿下の方も」
リンドは苦笑で返した。
既にレイシアはリンドに、ロイスとの関係について、自分の思いを話していた。
弟であるリンドに対して、そんなことを話すべきではないのだが、何度も話しているうちにリンドならわかってくれると思ってしまった。
そんなレイシアに、リンドも自身の婚約者との関係について話してくれた。
どうやら、リンドも婚約者と上手くいっていないらしい。
似た者同士。
だからこんなにもリンドのことが気になってしまうのだろうか。
メリーとの関係について、ロイスにあまり強くいえないのは、自身にも負い目があるからなのだろう。
こうして、リンドに会うための時間を作ってくれるというのもあるかもしれない。
「……リンド殿下が私の婚約者だったらよかったのに」
「えっ?」
「い、いえ、何でもありません。
そういえば、殿下が王位継承権を破棄しようとしているというお話を聞いたのですが、本当ですか?」
「……まあね。
私に王はむいていないよ」
「そんなことありません。
殿下は国民のことを思いやる、優しい心をお持ちです」
「それだけだよ。
兄上のように、人の上に立って、導くようなことはできない」
「ロイス殿下のあれは、人の上に立っているだけです。
今のロイス殿下に、国民を導けるような器はありません」
「あはは。
自分の婚約者に対して随分辛辣だね」
「いいんです。
男爵令嬢に現を抜かしているような方ですから」
その言葉はレイシアにも返ってくるのだが、リンドの前でくらい、自分を偽らなくてもいいだろう。
「……レイシアは私が王位を目指すといったら、応援してくれるかい?」
「それは……」
いくら心の中ではリンドのことを思っているからといって、ロイスの婚約者であるという立場を捨てることはできない。
レイシアは貴族だ。
その人生は国民のために捧げるべきであり、ロイスに王位継承権がある以上、ロイスを支持しなければならない。
そう教育されてきた。
「ごめん、意地悪な質問だったね」
「いえ……」
静寂が二人を包む。
レイシアはリンドの隣に立った。
ここがレイシアの居場所ではないということはわかっている。
でも今だけは。
このまま時間が止まればいいのに、と思ってしまう。
別にロイスたちについてきたわけではない。
目的は他にあった。
「ごきげんよう、リンド殿下」
レイシアは王城にある、庭園を訪れていた。
一流の庭師の手によって彩られた庭園は、鮮やかな花々が咲きほこっていた。
「レイシア、いらっしゃい」
柔らかな笑みで、第二王子であるリンドが迎えてくれる。
王城の庭園は、レイシアにとって数少ない心安らぐ場所だった。
見ているだけでも癒されるのだが、ここに来ればリンドに会えるからだ。
リンドは植物が好きなようで、庭園にいることが多い。
初めはロイスの弟として接していたレイシアだったが、いつの間にか、リンドに対して別の感情が芽生えていた。
そして、時間があれば、こうしてリンドに会うために庭園を訪れるほどに感情が膨れ上がってしまっていた。
「兄上は今日もまたメリー嬢と?」
「ええ、まあ。
こちらにいらっしゃるということは、リンド殿下の方も」
リンドは苦笑で返した。
既にレイシアはリンドに、ロイスとの関係について、自分の思いを話していた。
弟であるリンドに対して、そんなことを話すべきではないのだが、何度も話しているうちにリンドならわかってくれると思ってしまった。
そんなレイシアに、リンドも自身の婚約者との関係について話してくれた。
どうやら、リンドも婚約者と上手くいっていないらしい。
似た者同士。
だからこんなにもリンドのことが気になってしまうのだろうか。
メリーとの関係について、ロイスにあまり強くいえないのは、自身にも負い目があるからなのだろう。
こうして、リンドに会うための時間を作ってくれるというのもあるかもしれない。
「……リンド殿下が私の婚約者だったらよかったのに」
「えっ?」
「い、いえ、何でもありません。
そういえば、殿下が王位継承権を破棄しようとしているというお話を聞いたのですが、本当ですか?」
「……まあね。
私に王はむいていないよ」
「そんなことありません。
殿下は国民のことを思いやる、優しい心をお持ちです」
「それだけだよ。
兄上のように、人の上に立って、導くようなことはできない」
「ロイス殿下のあれは、人の上に立っているだけです。
今のロイス殿下に、国民を導けるような器はありません」
「あはは。
自分の婚約者に対して随分辛辣だね」
「いいんです。
男爵令嬢に現を抜かしているような方ですから」
その言葉はレイシアにも返ってくるのだが、リンドの前でくらい、自分を偽らなくてもいいだろう。
「……レイシアは私が王位を目指すといったら、応援してくれるかい?」
「それは……」
いくら心の中ではリンドのことを思っているからといって、ロイスの婚約者であるという立場を捨てることはできない。
レイシアは貴族だ。
その人生は国民のために捧げるべきであり、ロイスに王位継承権がある以上、ロイスを支持しなければならない。
そう教育されてきた。
「ごめん、意地悪な質問だったね」
「いえ……」
静寂が二人を包む。
レイシアはリンドの隣に立った。
ここがレイシアの居場所ではないということはわかっている。
でも今だけは。
このまま時間が止まればいいのに、と思ってしまう。
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