私は悪役令嬢なのか、脇役なのか、モブなのかを知りたい

千代子レイ子

文字の大きさ
2 / 33

2 婚約者の誕生日パーティー

しおりを挟む

 少しずつこの世界の仕組みが分かっていく上で、私は保険として一人でも生きていけるように技術スキルを徹底的に勉強した。料理、裁縫、音楽、数学。

 料理に関しては両親や教師に反対されたが、そこは対策済みだ。絵本を持ってきて両親に「私もお菓子を作ってお父様に食べて貰いたいよ」とうるうる攻撃すれば直ぐに撃沈。

 やはり古今東西、幼児の可愛らしいおねだりは最強である。

 これでいつでも平民に落とされても何とか自力で生きていけるだろう。


 なので本日、婚約者様と会うので誕生日プレゼントに流行りのハンカチ刺繍をあげることにした。自分でも中々の出来映えだと思う。

「……あ、あのリコリス嬢。これは?」
「? 家庭教師から婚約者には刺繍の入ったハンカチをプレゼントするのが一般的だと言われましたので縫ってみました。お気に召されませんか?」
「いや、これはもはや絵画だよ……」
「えっ?」
「刺繍絵画。しかもここまで僕の屋敷風景をそっくりに刺せるなんて天才だね!」

 カイン様は私の渡した刺繍ハンカチを持って帰り、両親に見せると有名画家の逸品と変わらないと絶賛され、今は額にいれて飾ってると手紙で知らせてくれた。だがそれではハンカチの意味がない。

 (でもそうか……騎士に刺繍入りハンカチを渡してもあんまり吸収性よくないよな……)

 そこで今度はタオルを作成してみる。吸水性を重視し、汚れてもあまり目立たない色を数枚用意した。

 (よし! 今度は触りごこちもいいし、ちゃんと用途もある品を作れた! ハンカチタオルと普通タオルもあるし、今度こそ普通の令嬢みたいになれる!)

 こうして自信を持ってハンカチを渡すとカイン様はまた無言になる。

「………………」
「? ……あの、お気に召しませんでしたか?」
「……凄い……」
「えっ?」
「なんて触りごこちがいいんだ! ありがとうございます!!」

 (よし! 今度は成功だ!! これで相手に嫌われず普通の交流が出来そうだ!)

「気に入ってもらえて私も幸いです」



 こうして婚約者とは嫌われない程度の交流を続けて4年。私は10歳になっていた。

「リコリス、そろそろ貴女も社交の場に慣れましょうね」
「? デビュタントはまだ先ですよ?」
「そうね。正式な場所ではね」
「??」
「ふふ。貴女の婚約者さんのパーティーに行きましょうか」
「? はい」

 返事をした後、私の頭は物凄い勢いで回転する。

 (これは中々一大事だ! プレゼントの中身は勿論のことラッピングからリボンまで工夫しないと相手に恥を欠かせてしまうわ!!)

 早速気合いを入れてラッピングをし中身もリサーチしてから厳選した物を入れた。これで準備は万端だ。





 パーティー会場には色んな年齢の人達がいた。流石は近衛騎士団長の息子と言うところか。

「さぁ、挨拶に行きましょうね」

 母親に促され、本日の主役カイン様へ挨拶しに行く。勿論厳選したプレゼントも忘れない。

「!! リコリス!! 待ってたよ!!」

 こちらに気付いたカイン様が満面の笑みで走ってきてくれた。凄く有難い。

「ふふ。ありがとうございます」
「ねぇ、その手に持ってる物はもしかして俺へのプレゼント?」
「はい。気に入ってもらえると嬉しいです」

 私はカイン様に手作りした紙袋ごと渡したら、目をキラキラさせて手作り紙袋を見つめてくれた。

「……かっこいい……」
「ふふ。今回は黒袋にしました」
「この青い模様って家の家紋だよな!」
「えぇ。左上に書かれているのは古代文字でカルフィシファー公爵と読むのですよ」
「凄い!! 家の名前なのにかっこいい!!」

 カイン様は黒の紙袋だけで大変興奮している。とても気に入ったようで友人に自慢すると言ってくれた。こちらとしても頑張って作成したかいがある。

「なるほど。黒に青色の文字にしたのは近衛色に合わせてか……金色の縁取も気品があって素晴らしいな」
「あっ、父上、今回も凄いんですよ!!」
「あぁ。リコリス令嬢はセンスが良い」
「ありがとうございます」
「ねぇ、中も見ていい?」
「勿論です」

 だが早速開けようとした所でまた別の貴族に声をかけられカイン様はしぶしぶそれを諦めた。

 まぁ、本日の主役だから忙しいのは仕方ないだろう。私も8割役目を終えたからホッとしていた。だが急に腕を引っ張られ驚いて相手を見るとそれはカイン様だった。

「彼女が俺の婚約者なんだ! しかもこんなにかっこいいプレゼントまで用意してくれたんだよ!」
「わぁ、凄い! 黒なんて不気味だと思ってたけど青が入るとメチャクチャかっこいいな!!」
「だろ? しかも今回の紙袋、紐じゃなくて紙に取っ手があって更にかっこいいんだ!!」

 紙袋1つにかっこいいの往来が続き、何だか恥ずかしくなってきた。

「……どこがですの? 誕生日と言うおめでたい日に黒色を纏ったプレゼントを渡すなど常識がないのでは?」

 楽しい会話に水を差すのは、ピンク一色のドリルツインテールを揺らしながら此方を睨む知らない令嬢だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。 そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。 1~2万文字の短編予定→中編に変更します。 いつもながらの溺愛執着ものです。

【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました

Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに! かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、 男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。 痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。 そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。 「見つけた! 僕の花嫁!」 「僕の運命の人はあなただ!」 ──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。 こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。 すっかりアイリーンの生活は一変する。 しかし、運命は複雑。 ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。 ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。 そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手…… 本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を─── ※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

処理中です...