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8 上書き誕生日
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私はカイン様のやり直し誕生日会を小さな劇場ホールを貸し切って、脚本、監督私で『モーリシャル騎士団』を新人俳優を拝借して公演することにした。
モーリシャル騎士団は大人気な小説なので、よく色んな所でプロが公演している十八番の演目だ。
勿論、そんなプロと張り合おうとは思わない。予算も時間もないからね。
でも小規模で皆が知っている話だからこそ出来ることもある。新人役者でも一からセリフを覚えなくていいし、音楽と効果音がよく響くので舞台だけを劇場とせず、ホール全てを会場として観客も巻き込む、迫力あるモーリシャル騎士団を公演することにした。
「剣を交差する時は一番上のボタンを押してください! タイミングが重要ですからセリフよりもそっちを合わせて!」
「曲に合わせて出てきて下さい! 呪文の後は必ず『ハッ!』と声を出して下さいね! 効果音を合わせるので!!」
「火竜の幻影はこんな感じで出して下さい。その時に軽く会場に風を送って下さい」
こうしてカイン様を迎えるまで念入りにモーリシャル騎士団劇を前世の知識を使いまくって何とか新しい形で仕上げることが出来た。
そして当日、カイン様は相変わらずの美しさで挨拶に来てくれた。
「リコリス!! 今日はありがとう!! 楽しみにしてたよ!」
「はい。カイン様は勿論、皆様にも楽しんでもらえたら幸いですわ」
そして今回の主役カイン様を劇場に案内すると私は裏方のパイプオルガンに座った。そう私はこの劇のBGMに徹する影の役者だ。
「? あれ? リコリスは?」
私が居なくなったことに気付いたカイン様が立ち上がろうとした時、場内が暗くなった。
ざわめく観客たちに舞台から1人の新人俳優がスポットライトを浴びながら颯爽と現れる。
「我はモーリシャル騎士団長、イーグル!! 皆、不安に思うことはない!! この闇を多い尽くすは悪の暗黒騎士が魔王を復活させる為にしたことなのだ!!」
イケメン俳優がかっこいいイーグル騎士長の服を着て、これまたイケメンボイスで語るセリフに皆が注目した。
「……7巻2章のセリフだ……」
「……す、凄い……」
「イーグル騎士長だ!!」
子供たちはこのセリフで心を鷲掴みにされ、舞台の俳優に釘付けだ。
(よし! 掴みはOKだ! このまま頑張るぞ!!)
こうして劇はいきなり始まり、途中から役者が舞台を降りてカイン様や友人を巻き込んでは舞台と一体化して、盛りに盛り上がった。
そして劇が終わると大人も子供も全員スタンディングオベーションの大盛況となり、一先ず私はホッと人知れず息を吐く。
(やった! これで8割は完遂した! 後はプレゼントとケーキだ!!)
私はイーグル騎士長役の俳優にケーキをメイドと共に渡して頂き、カイン様の前でお祝いの言葉を告げてもらう。
「勇敢なカインよ! 君のお陰で暗黒騎士の野望を打ち砕くことが出来た! きっと君の誕生日が聖なる光となり私を導いてくれたのだろう! ありがとうカイン! そしておめでとう!!」
「!!!!! わっ、わぁ……あっ……」
あまりの嬉しさに言葉を失ってしまったカイン様に俳優はそっと騎士の誓いを立ててくれた。それはとても有名なシーンで子供たちが皆真似をする憧れのものだった。
(まぁ! なんて素敵なサプライズをしてくれるのかしら!! 後でお礼を言っておかなきゃ!!)
「勇敢なカイン! 君に幸あれ!!」
「!!!!!!!!」
こうして上書き誕生日会は大成功し幕を閉じた。
少しお父様に我儘を言ってお金を使ったけど、貴族の交流としては良かったのではないだろうか。
私は役目を終えたと安堵しているとカイン様に呼び止められ抱き付かれてしまった。
「…………ありがとう、ありがとう! リコリス!! こんなに最高で楽しい誕生日なんて今迄にないよ!!」
「喜んでいただけましたか?」
私が質問するとカイン様は抱きしめていた腕をほどき、今度は両肩に手をおく。
「勿論!! あっ、でも側にリコリスが居なくて寂しかったよ」
「まぁ、そうでしたか。私は裏方で伴奏していたものですから……」
「えっ?!! リコリスが曲を弾いてたの?!!」
「はい。だってカイン様の誕生日ですもの。私も参加したいですわ」
「…………リコリス……」
よっぽど嬉しかったのかカイン様の目が何だかうるうるしているような気がする。
(……凄いな……この年にして色気がムンムンだわ……前世の記憶がなければこのカイン様にメロメロになっていた処だ)
「おーい!! カイン!! あれ? リコリス令嬢?」
「あら、皆様、ごきげんよう。劇は楽しまれましたか?」
「勿論!! こんなに楽しい劇は初めてだよ!!」
「俺、暗黒騎士長に拐われたけど内心嬉しかったんだ!」
「え~? お前ビビってたじゃん!」
「なっ、違う!! 感動してただけだ!!」
それぞれがカイン様の誕生日を再び祝ってくれて、また主役として楽しまれたことに安堵した。
カイン様はイケメンで友人を大切にするから男女ともに人気だ。だからたまに女子から嫉妬されるがマーガレット様の事件を体験すると可愛いものである。
まぁ、とりあえずおめでとうございますカイン様。
モーリシャル騎士団は大人気な小説なので、よく色んな所でプロが公演している十八番の演目だ。
勿論、そんなプロと張り合おうとは思わない。予算も時間もないからね。
でも小規模で皆が知っている話だからこそ出来ることもある。新人役者でも一からセリフを覚えなくていいし、音楽と効果音がよく響くので舞台だけを劇場とせず、ホール全てを会場として観客も巻き込む、迫力あるモーリシャル騎士団を公演することにした。
「剣を交差する時は一番上のボタンを押してください! タイミングが重要ですからセリフよりもそっちを合わせて!」
「曲に合わせて出てきて下さい! 呪文の後は必ず『ハッ!』と声を出して下さいね! 効果音を合わせるので!!」
「火竜の幻影はこんな感じで出して下さい。その時に軽く会場に風を送って下さい」
こうしてカイン様を迎えるまで念入りにモーリシャル騎士団劇を前世の知識を使いまくって何とか新しい形で仕上げることが出来た。
そして当日、カイン様は相変わらずの美しさで挨拶に来てくれた。
「リコリス!! 今日はありがとう!! 楽しみにしてたよ!」
「はい。カイン様は勿論、皆様にも楽しんでもらえたら幸いですわ」
そして今回の主役カイン様を劇場に案内すると私は裏方のパイプオルガンに座った。そう私はこの劇のBGMに徹する影の役者だ。
「? あれ? リコリスは?」
私が居なくなったことに気付いたカイン様が立ち上がろうとした時、場内が暗くなった。
ざわめく観客たちに舞台から1人の新人俳優がスポットライトを浴びながら颯爽と現れる。
「我はモーリシャル騎士団長、イーグル!! 皆、不安に思うことはない!! この闇を多い尽くすは悪の暗黒騎士が魔王を復活させる為にしたことなのだ!!」
イケメン俳優がかっこいいイーグル騎士長の服を着て、これまたイケメンボイスで語るセリフに皆が注目した。
「……7巻2章のセリフだ……」
「……す、凄い……」
「イーグル騎士長だ!!」
子供たちはこのセリフで心を鷲掴みにされ、舞台の俳優に釘付けだ。
(よし! 掴みはOKだ! このまま頑張るぞ!!)
こうして劇はいきなり始まり、途中から役者が舞台を降りてカイン様や友人を巻き込んでは舞台と一体化して、盛りに盛り上がった。
そして劇が終わると大人も子供も全員スタンディングオベーションの大盛況となり、一先ず私はホッと人知れず息を吐く。
(やった! これで8割は完遂した! 後はプレゼントとケーキだ!!)
私はイーグル騎士長役の俳優にケーキをメイドと共に渡して頂き、カイン様の前でお祝いの言葉を告げてもらう。
「勇敢なカインよ! 君のお陰で暗黒騎士の野望を打ち砕くことが出来た! きっと君の誕生日が聖なる光となり私を導いてくれたのだろう! ありがとうカイン! そしておめでとう!!」
「!!!!! わっ、わぁ……あっ……」
あまりの嬉しさに言葉を失ってしまったカイン様に俳優はそっと騎士の誓いを立ててくれた。それはとても有名なシーンで子供たちが皆真似をする憧れのものだった。
(まぁ! なんて素敵なサプライズをしてくれるのかしら!! 後でお礼を言っておかなきゃ!!)
「勇敢なカイン! 君に幸あれ!!」
「!!!!!!!!」
こうして上書き誕生日会は大成功し幕を閉じた。
少しお父様に我儘を言ってお金を使ったけど、貴族の交流としては良かったのではないだろうか。
私は役目を終えたと安堵しているとカイン様に呼び止められ抱き付かれてしまった。
「…………ありがとう、ありがとう! リコリス!! こんなに最高で楽しい誕生日なんて今迄にないよ!!」
「喜んでいただけましたか?」
私が質問するとカイン様は抱きしめていた腕をほどき、今度は両肩に手をおく。
「勿論!! あっ、でも側にリコリスが居なくて寂しかったよ」
「まぁ、そうでしたか。私は裏方で伴奏していたものですから……」
「えっ?!! リコリスが曲を弾いてたの?!!」
「はい。だってカイン様の誕生日ですもの。私も参加したいですわ」
「…………リコリス……」
よっぽど嬉しかったのかカイン様の目が何だかうるうるしているような気がする。
(……凄いな……この年にして色気がムンムンだわ……前世の記憶がなければこのカイン様にメロメロになっていた処だ)
「おーい!! カイン!! あれ? リコリス令嬢?」
「あら、皆様、ごきげんよう。劇は楽しまれましたか?」
「勿論!! こんなに楽しい劇は初めてだよ!!」
「俺、暗黒騎士長に拐われたけど内心嬉しかったんだ!」
「え~? お前ビビってたじゃん!」
「なっ、違う!! 感動してただけだ!!」
それぞれがカイン様の誕生日を再び祝ってくれて、また主役として楽しまれたことに安堵した。
カイン様はイケメンで友人を大切にするから男女ともに人気だ。だからたまに女子から嫉妬されるがマーガレット様の事件を体験すると可愛いものである。
まぁ、とりあえずおめでとうございますカイン様。
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