噂話系短編集

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【奥様、大変です!】御曹司様、まさかの敗北!?

【奥様、大変です!】御曹司様、まさかの敗北!?

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1 アンナ (メイド) 
ねえ、聞いた?旦那様の御子息、あの傲慢なレオナルド様が、また何かやらかしたらしいわよ。
2 ベアトリス (メイド) 
あらやだ、またですか?一体今度は何を?お庭の噴水を勝手にチョコレート風呂にでもしようとしたのかしら?
3 セシル (メイド) 
それもレオナルド様ならやりかねませんけど、今回はもっと衝撃的なことらしいの。市場の果物屋相手に、ありえない言いがかりをつけたんですって。
4 ドロシー (メイド) 
市場の果物屋?あの、いつもニコニコしている果物屋のおじさん?
5 アンナ (メイド) 
そうよ。レオナルド様が、珍しい果物を見つけて「こんな質の悪いものを売りつけようとは、許せない!」って激怒したらしいの。実際は、それはそれは見事な、王都でもなかなか手に入らないような逸品だったらしいんだけど。
6 ベアトリス (メイド) 
まあ、レオナルド様の目は節穴ですからね。「美しいもの=自分のもの」「気に入らないもの=粗悪品」という方程式しか頭にないのでしょう。
7 セシル (メイド) 
それで、その果物屋のおじさんが、怯えながらも「これはリタ産の最高級品でして、特別なルートで仕入れたものです。もしご不満でしたら、どこがご不満か具体的にお聞かせいただけますでしょうか?」って、丁寧に反論したらしいの。
8 ドロシー (メイド) 
あら、意外と勇気があるのね、そのおじさん。レオナルド様に逆らうなんて、普通は考えられないわ。
9 アンナ (メイド) 
それでね、レオナルド様が「こんなものに価値があるはずがない!俺の目はごまかせないぞ!」って、さらに声を荒げたらしいのよ。
10 ベアトリス (メイド) 
いつものパターンね。自分の主観が絶対だと信じ込んでいるんだから。
11 セシル (メイド) 
そしたら、おじさんがね、落ち着いた声で「価値というのは、主観的なものでもありますが、客観的な基準も存在するのです。この果物の品種、栽培方法、そして市場での取引価格をご覧いただければ、その価値をご理解いただけるかと存じます」って、理路整然と説明したらしいの。
12 ドロシー (メイド) 
まあ!なんて冷静な…!レオナルド様、言葉に詰まったんじゃないかしら?
13 アンナ (メイド) 
ええ、見物人がたくさん集まってきたらしいんだけど、レオナルド様は顔を真っ赤にして、何も言い返せなかったみたい。「うるさい!二度と俺の前に現れるな!」って捨て台詞を吐いて、殴りかかろうとしたけど、あまりにアウェーな雰囲気でさすがに部が悪いと思ったのかすごすごと帰っていったらしいわ。
14 ベアトリス (メイド) 
ざまあみろ!あの御曹司が、庶民の正論に言い負かされるなんて、百年ぶりの大事件だわ!
15 セシル (メイド) 
市場の人たちは、みんなおじさんに拍手喝采だったらしいわよ。「よくぞ言ってくれた!」って。
16 ドロシー (メイド) 
素晴らしい!そのおじさん、まるで英雄ね!
17 アンナ (メイド) 
お屋敷に戻ってきたレオナルド様は、それはそれは不機嫌で、自分の部屋に閉じこもっているらしいわ。夕食にも顔を出さないんじゃないかしら。
18 ベアトリス (メイド) 
いい気味だわ。少しは自分の傲慢さを反省すればいいのよ。
19 セシル (メイド) 
でも、あのレオナルド様が素直に反省するとは到底思えないわ。きっと、裏で何か企んでるのよ。
20 ドロシー (メイド) 
そうね…。もしかしたら、あの果物屋のおじさんに何か仕返しをするかもしれないわ。奥様にお知らせした方がいいかしら?
21 アンナ (メイド) 
そうね。念のため、奥様にこの一件をご報告しておきましょう。まさか、おじさんの仕入れ先の果物全部買い占めて嫌がらせするとか、そういう幼稚なことを企んでいないでしょうね?
22 ベアトリス (メイド) 
ありえるわ!あの御曹司なら!
23 セシル (メイド) 
とにかく、事の顛末を見守りましょう。まさか、あの傲慢なレオナルド様が、たった一人の庶民にここまで打ちのめされるなんて、本当に驚きですわ。

数時間後

24 ベアトリス (メイド) 
大変!さっき、庭師のトーマスさんが青い顔をして飛び込んできて…。
25 セシル (メイド) 
どうしたの、ベアトリス?何かあったの?
26 ベアトリス (メイド) 
レオナルド様が、お庭で育てている珍しい青いバラを、全て切り倒してしまったらしいのです!
27 ドロシー (メイド) 
まあ!奥様が大切にされていた、あの青いバラを!?なんてことを!
28 アンナ (メイド) 
一体なぜそんなことを…?まさか、市場での一件の腹いせに?
29 ベアトリス (メイド) 
トーマスさんの話では、レオナルド様は切り倒したバラを足で踏みつけながら、「こんなものに価値があるなどと!」と叫んでいたそう。
30 セシル (メイド) 
やっぱり!市場の果物の一件で、価値というものを否定されたのが、相当堪えたのでしょうね。幼稚すぎるわ!
31 ドロシー (メイド) 
奥様がどれだけあのバラを大切にされていたか…。きっと、お嘆きになるわ。
32 アンナ (メイド) 
これはもう、単なる癇癪では済みませんわ。奥様に対する明らかな侮辱です!
33 ベアトリス (メイド) 
しかも、レオナルド様はそれだけでは飽き足らず、今度は書斎に閉じこもって、何か書き物をしているらしいのです。
34 セシル (メイド) 
書き物?まさか、あの果物屋のおじさんに対する恨みつらみを書き連ねているとか?
35 ドロシー (メイド) 
あるいは、おじさんの悪評を広めるような、陰湿な手紙を書いているのかもしれないわ。
36 アンナ (メイド) 
どちらにしても、ろくなことを考えていないでしょうね。本当に困った御曹司ですわ。
37 ベアトリス (メイド) 
そういえば、市場の件の後、レオナルド様の側近たちが慌ただしく出入りしているのを見かけましたわ。何か動きがあるのかもしれません。
38 セシル (メイド) 
側近たちですか…。きっと、レオナルド様の指示で、何か良くないことを企んでいるのでしょう。あの果物屋のおじさんが心配ですわ。
39 ドロシー (メイド) 
私も…。あんなに誠実そうな方なのに…。
でも、奥様の青いバラを切ってしまったのなら、もはやおじさんに手を出す前に謹慎になる可能性もあるよね。
40 アンナ (メイド) 
そうね、奥様は今はまだ青いバラの件をご存じないそうよ。帰宅次第、トーマスさんがご報告する予定だそう。
41 ベアトリス (メイド) 
奥様がこれを知ったら、きっと心を痛められるでしょうね。
42 セシル (メイド) 
レオナルド様の傍若無人な振る舞いは、一体いつになったら収まるのでしょうか。
43 ドロシー (メイド) 
もしかしたら、今回の一件が、彼にとって初めての大きな挫折になるかも。これを機に、少しは改心してくれると良いのだけど…。
44 アンナ (メイド) 
甘い考えよ、ドロシー。あのレオナルド様が、そう簡単に変わるとは思えないわ。むしろ、今回のことでさらに意固地になっている可能性だってあるもの。
45 ベアトリス (メイド) 
とにかく、私たちは奥様を支え、レオナルド様の動向を注意深く見守るしかないわね。
46 セシル (メイド) 
ええ。これ以上、事態が悪化しないように…。

47 ドロシー (メイド) 
奥様がお戻りになられました。お顔が険しいわ…。
48 アンナ (メイド) 
トーマスさんから、青いバラの件を聞かれたのでしょうね。
49 ベアトリス (メイド) 
レオナルド様は、まだ自室に閉じこもっていらっしゃるのでしょうか?
50 セシル (メイド) 
ええ。夕食の時間になっても、お姿を見せませんでした。
51 アンナ (メイド) 
今夜は、奥様がレオナルド様の部屋へ直接行かれるとお聞きしました。
52 ベアトリス (メイド) 
ついに奥様の堪忍袋の緒が切れたのですね。当然だわ!
53 ドロシー (メイド) 
一体どうなるのでしょう…。少し怖い気もします。
54 セシル (メイド) 
私もです。レオナルド様が、奥様の言葉に耳を傾けてくれると良いのですが…。
(数時間後)
55 アンナ (メイド) 
ねえ、聞いた?奥様とレオナルド様の話し合いが終わったらしいわ。
56 ベアトリス (メイド) 
それで、どうなったの?レオナルド様は反省したの?
57 セシル (メイド) 
それが…全く逆らしいの。奥様に対して、信じられないような態度を取ったんですって。
58 ドロシー (メイド) 
まさか、奥様にまで反抗したというのですか?
59 アンナ (メイド) 
ええ。自分の行動を正当化しようと、わめき散らしたらしいわ。「あんなくだらないバラなど、どうでもいい!」「市場の商人は嘘つきだ!」って。
60 ベアトリス (メイド) 
なんて恩知らずな!奥様がどれだけ心を込めて育てていらしたか…。
61 セシル (メイド) 
奥様は、最初は諭すように話されていたそうですが、レオナルド様のあまりの態度に、最後は毅然とした口調で言い放ったそうです。「レオナルド。あなたの傲慢さと幼稚さは、もはや目に余る。明日から、あなたは当家の人間ではない」と。
62 ドロシー (メイド) 
まあ!勘当…ということですか!?
63 アンナ (メイド) 
ええ。奥様は、レオナルド様の全ての財産を取り上げ、この屋敷からも出て行くように命じたそうです。
64 ベアトリス (メイド) 
ついに…ついにその日が来たのですね!長年、屋敷の厄介者だったあの御曹司が!
65 セシル (メイド) 
でも、本当に勘当なんて…。旦那様は何も言わなかったのでしょうか?
66 アンナ (メイド) 
旦那様は、全て奥様に一任するとおっしゃったそうです。レオナルド様の度重なる問題行動に、とうとう見放されたのでしょう。
67 ドロシー (メイド) 
レオナルド様は、それを聞いてどうしたのですか?
68 ベアトリス (メイド) 
最初は信じられないという顔をしていたらしいのですが、奥様の強い決意を感じ取ると、顔面蒼白になって震え出したそうです。
69 セシル (メイド) 
当然でしょうね。今まで甘やかされてきた自分が、いきなり全てを失うことになるのですから。
70 アンナ (メイド) 
今夜中に、レオナルド様は屋敷を出て行くことになります。明日からは、あの傲慢な姿を見なくて済むのですね…。
71 ベアトリス (メイド) 
本当に、夢のようですわ!長年の苦労が報われた気がします。
72 ドロシー (メイド) 
でも、一人になったレオナルド様は、これからどうやって生きていくのでしょう?
73 セシル (メイド) 
それは彼の問題ですわ。自分の行いの報いを受けるべきです。
74 アンナ (メイド) 
ええ。奥様は最後に、こうおっしゃったそうです。「世の中には、金や地位だけではどうにもならないことがある。それを、これからの人生で学びなさい」と。
75 ベアトリス (メイド) 
なんと…!奥様の言葉は、正しいですわ!
76 セシル (メイド) 
明日から、この屋敷は少しは静かになるでしょうね。
77 ドロシー (メイド) 
そうですね…。でも、少しだけ、レオナルド様のことが心配でもあります。
78 アンナ (メイド) 
心配する必要はありませんわ、ドロシー。彼は、自分の犯した過ちの大きさを、身をもって知るべきなのです。

79 ベアトリス (メイド) 
レオナルド様が、昨晩のうちに本当に屋敷を出て行かれたようですね。朝になっても、お姿が見えませんでした。
80 セシル (メイド) 
ええ。荷物もほとんど持たずに、一人で寂しそうに出て行かれたと、門番のオリバーさんが言っていました。
81 ドロシー (メイド) 
一人で…これからどうされるのでしょう?今まで、ご自分で何かされたことなど、一度もなかったのに。
82 アンナ (メイド) 
それはご本人が一番よく分かっているでしょうね。今までどれだけ恵まれた環境にいたのかを。
83 ベアトリス (メイド) 
市場の果物屋のおじさんのところへ、謝りに行くでしょうか?
84 セシル (メイド) 
さあ、どうでしょうね。あのプライドの高いレオナルド様が、素直に頭を下げる姿は、想像もできませんわ。
85 ドロシー (メイド) 
でも、もし謝りに行ったとしたら、少しは見直すかもしれません。
86 アンナ (メイド) 
甘い期待はしない方が良いでしょう。むしろ、どこかで恨みを募らせている可能性の方が高いと思いますわ。
87 ベアトリス (メイド) 
そういえば、レオナルド様の側近たちは、どうなったのでしょう?まだ屋敷に出入りしているのでしょうか?
88 セシル (メイド) 
いいえ。レオナルド様が勘当されたと聞いて、皆蜘蛛の子を散らすようにいなくなったそうです。
89 ドロシー (メイド) 
手のひらを返したように…薄情な人たちですね。
90 アンナ (メイド) 
当然でしょう。彼らはレオナルド様の地位と財産に群がっていただけですから。後ろ盾を失った彼に、用などないのでしょう。
91 ベアトリス (メイド) 
市場の果物屋のおじさんは、その後どうしているかしら?レオナルド様から何か嫌がらせを受けていないと良いのですが。
92 セシル (メイド) 
今日、買い物に行った同僚のメイドから聞いたのですが、おじさんの店は以前にも増して賑わっているそうです。「正義の商人」として、街の人たちの間で評判になっているとか。
93 ドロシー (メイド) 
それは素晴らしい!正論は勝つものなのですね。
94 アンナ (メイド) 
ええ。そして、真の価値というものは、地位や財産ではなく、誠実さや人柄にあるということを、今回の出来事は教えてくれましたわ。
95 ベアトリス (メイド) 
奥様は、レオナルド様が屋敷を出て行った後、何かおっしゃっていましたか?
96 セシル (メイド) 
少し寂しそうなご様子でしたが、「彼が自分の過ちを認め、 立ち直ることを願っている」とおっしゃっていました。
97 ドロシー (メイド) 
奥様の慈悲深さには、頭が下がります。
98 アンナ (メイド) 
さて、レオナルド様がいなくなったことで、この屋敷も少しは寂しくなるでしょう。私たちも、気を引き締めて、奥様のために働きましょう。
99 ベアトリス (メイド) 
ええ、もちろんですわ。
100 セシル (メイド) 
そうですね。平穏な日々が戻ってくることを願っています。
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